公開日:2023/05/09
更新日:2026/06/05
「従業員が50人未満の事業場でもストレスチェックは義務なの?」と疑問に思っていませんか。ついに、50人未満の事業場におけるストレスチェックが義務化されることが決まりました。
この記事では、50人未満の事業場におけるストレスチェックの法的義務の最新動向や罰則の有無をはじめ、実施するメリット・デメリット、産業医がいない場合の対策、具体的な実施手順まで網羅的に解説します。今後の義務化に備え、スムーズに制度を導入するためのポイントがわかります。

労働安全衛生法の改正により、50人未満の事業場におけるストレスチェックの法的な位置づけが大きく変わろうとしています。ここでは、最新の法改正の動向や罰則の有無、集団分析におけるプライバシー保護の注意点、そして制度運用上で混同しやすい「事業場」と「企業」の違いについて解説します。
これまでは常時使用する労働者が50人以上の事業場にのみストレスチェックの実施が義務付けられており、50人未満の事業場では努力義務とされていました。しかし、2025年5月に労働安全衛生法が改正されたことにより、50人未満の事業場においてもストレスチェックの実施が義務化されることが決定しました。2028年4月から全事業所で義務化する方針が明らかになっています。
罰則や報告義務については、事業場の規模によって以下のような違いがあります。
| 事業場規模 | ストレスチェック実施義務 | 労働基準監督署への報告義務 | 罰則・未実施のリスク |
|---|---|---|---|
| 50人以上 | 義務 | あり | 報告を怠った場合、最大50万円の罰金 |
| 50人未満 | 2028年までに義務化 | なし(見込み) | 未実施の場合、安全配慮義務違反や行政指導のリスク |
50人以上の事業場では、労働基準監督署への結果報告を怠ると罰則が科されます。一方で、50人未満の事業場においては報告義務は課されない見通しですが、未実施の場合は安全配慮義務違反に問われるリスクがあります。厚生労働省の検討会などでも、小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の重要性が指摘されており、義務化に向けた早めの準備が求められます。
ストレスチェックの結果を活用して職場環境の改善につなげる「集団分析」は、事業場の規模を問わず努力義務とされています。しかし、従業員数が少ない50人未満の事業場で集団分析を行う際には、個人のプライバシー保護に最大限の配慮が必要です。
原則として、集計対象となる集団の人数が10人未満の場合、個人が特定されるおそれがあるため、対象者全員の同意がない限り集団分析の結果を事業者に提供してはならないとされています。小規模な部署やチームしか存在しない事業場では、個人を特定できない方法で実施するための工夫や、外部機関への委託が推奨されます。
ストレスチェック制度において、「事業場」と「企業(法人)」は異なる概念である点に注意が必要です。法律上の「事業場」とは、一定の場所で継続して事業が行われている単位(本社、支店、工場、店舗など)を指します。一方、「企業」は法人格を持つ組織全体のことです。
ストレスチェックの実施義務は、企業全体ではなく「事業場ごと」の労働者数で判定されます。たとえば、企業全体の従業員数が100人であっても、A支店が40人、B支店が30人、C支店が30人というように各事業場が50人未満であれば、これまではすべての事業場で実施が努力義務でした。
しかし、今後は法改正によりこれらの小規模な事業場でも義務化の対象となります。企業規模が大きくても事業場規模が小さいケースでは、全社で統一されたストレスチェックの実施体制やルールをあらかじめ整備しておくことが、スムーズな制度運用の鍵となります。
【関連記事:ストレスチェックの実施状況を徹底解説|最新データから見る課題と企業の対策】

現在は努力義務であるといっても、50人未満の事業場でもストレスチェックを実施することには多くのメリットがあります。一方で、小規模な事業場ならではのデメリットも存在します。ここでは、実施によるメリットとデメリットの両面についてくわしく解説します。
従業員数が少ない事業場では、一人ひとりの従業員が担う役割や責任が大きくなる傾向があります。そのため、一人が休職や退職に至った場合の影響は、大規模事業場に比べて深刻です。また、少人数であるがゆえに、人間関係のトラブルや仕事の負担の偏りなどが発生しやすく、従業員のストレスを増大させる可能性があります。
ストレスチェックを実施することで、従業員のストレス状態を早期に把握し、適切な対策を講じることが可能になります。これにより、メンタルヘルス不調による休職や退職の予防、ひいては事業の安定的な運営につながります。
厚生労働省の調査でも、メンタルヘルス不調により退職した労働者数の割合は、事業場の規模を問わず一定数存在することが示されています。小規模事業場の場合、退職者が発生することのインパクトはきわめて大きいため、早期発見と離職防止の重要性がうかがえます。
ストレスチェックによって従業員のストレス要因を特定し、職場環境の改善や個別のケアを行うことで、従業員のモチベーション向上、ひいては生産性向上につながることが期待できます。
また、従業員の健康管理に積極的に取り組む企業姿勢を示す「ウェルビーイング経営」の推進は、企業イメージの向上にも直結します。従業員が安心して働ける環境をつくることは、優秀な人材の確保や定着において不可欠な要素です。ストレスチェックは、従業員満足度を高め、ウェルビーイング経営を実現するための有効なツールと言えるでしょう。
メリットが多い一方で、50人未満の事業場にとって無視できないのが実施に伴うコストと業務負担です。ストレスチェックを実施するには、質問票の準備、配布、回収、集計、そして結果の通知といった一連の作業が必要となります。
とくに専任の人事・労務担当者がいない小規模事業場では、既存の従業員が通常業務と並行してこれらの実務を兼任することが多く、業務負担の増加が懸念されます。また、外部の専門機関に委託する場合や、専用のITツールを導入する場合には、金銭的なコストも発生します。
これらのメリットとデメリットを整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | メンタルヘルス不調の早期発見、休職・離職の防止、生産性の向上、ウェルビーイング経営の推進、企業イメージの向上 |
| デメリット | 実施・運用にかかる金銭的コスト、担当者の業務負担の増加、プライバシー保護のための体制構築の手間 |
【関連記事:ストレスチェック料金はいくらかかる?補助金活用で費用を抑える方法も紹介】

50人未満の事業場では、産業医を選任していないケースが多く見られます。しかし、ストレスチェックを実施し、高ストレス者が医師による面接指導を希望した場合、対応できる医師が必要となります。ここでは、産業医がいない小規模事業場がどのように対応すべきかを解説します。
労働安全衛生法において、常時使用する労働者が50人以上の事業場では産業医の選任が義務付けられていますが、50人未満の事業場においては産業医の選任は努力義務とされています。そのため、多くの小規模事業場では専属や嘱託の産業医が不在です。
しかし、ストレスチェックを実施した結果、高ストレスと判定された従業員から申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。産業医がいない場合、誰に面接指導を依頼するかが大きな課題となります。
産業医を選任していない50人未満の事業場が活用できる公的な支援機関として、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する地域産業保健センターがあります。
地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の小規模事業場を対象に、労働安全衛生法で定められた産業保健サービスを無料で提供しています。ストレスチェック後の高ストレス者に対する医師の面接指導や、健康診断結果に基づく医師からの意見聴取などを依頼することが可能です。無料で専門的なサポートを受けられるため、コストを抑えたい小規模事業場にとって非常に心強い存在です。
| 地域産業保健センターの主な無料サービス | 内容 |
|---|---|
| 高ストレス者への面接指導 | ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された従業員に対する医師の面接指導 |
| 健康診断結果に基づく意見聴取 | 健康診断で異常の所見があった従業員に対する、就業上の措置に関する医師からの意見聴取 |
| 長時間労働者への面接指導 | 時間外労働が長時間に及ぶ従業員に対する医師の面接指導 |
| 健康相談・保健指導 | メンタルヘルス不調を含む、労働者の健康に関する相談や保健指導 |
小規模の事業場では、経営者や人事担当者と従業員との距離が近く、ストレスチェックの結果を社内で取り扱うと、従業員がプライバシーの漏洩を懸念して正直に回答できないという問題が生じがちです。
そのため、ストレスチェックの実施や集計、面接指導の調整などを、外部の専門機関やクラウド型のストレスチェックツールに委託することが推奨されます。外部委託により、従業員の個人情報が社内の担当者の目に触れることなく処理されるため、安心して受検できる環境が整います。
また、実施事務の負担軽減や、専門家による客観的な集団分析レポートの作成など、効率化と質の向上の両面で大きなメリットがあります。産業医がいない事業場向けに、医師の面接指導をセットで提供している代行サービスやツールを選ぶことで、ワンストップでスムーズに制度を運用することが可能になります。

従業員のメンタルヘルス対策としてストレスチェックを行うメリットは大きく、小規模な事業場でも導入が推奨されています。ここでは、50人未満の事業場がストレスチェックを実施するための具体的な手順をステップごとに解説します。
ストレスチェックの実施にあたり、まずは実施時期、対象者、実施方法、予算、担当者などの実施計画を策定することが重要です。実施時期は業務の繁忙期を避け、対象者は正社員、契約社員、パート、アルバイトなど、雇用形態に関わらず就業しているすべての労働者が含まれることを確認しましょう。
次に、実施事務の負担を軽減するため、事業場の状況に合ったストレスチェックツールを選定します。すべて手作業で行った場合の労力や残業代等を考慮し、Webツールなどの導入を検討しましょう。ツール選定のポイントは以下のとおりです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 厚生労働省の基準適合 | 厚生労働省が定めるストレスチェック制度の基準を満たしているか確認する。 |
| 質問項目数 | どのような設問で構成されているか、選択したツールの妥当性を検討する。自社独自の質問を作成できる機能があれば、自社特有の事情をあぶり出すことも可能。 |
| 実施方法 | Webツール、紙媒体など、事業場の状況に合った実施方法を選択。Webツールの場合は、社外でも実施できるものやスマホ対応しているものを選べば、小規模事業場だからこそ守りたいプライバシーに配慮できる。 |
| 費用とサポート体制 | ツール費用、実施費用、分析費用など全体的なコストと、操作方法の問い合わせや結果分析のサポートなど、充実したサポート体制があるかを確認。 |
計画とツールが決定したら、ストレスチェックの実施目的、実施方法、個人情報の保護等について、従業員に事前に周知・説明を行います。実施への協力を得られるよう、ストレスチェックの意義を丁寧に説明することが受検率を高める重要なポイントです。
周知が完了した後、選択したツールを用いてストレスチェックを実施します。実施にあたっては、従業員が安心して回答できるよう、プライバシーに配慮した環境で行うことが重要です。また、未実施の従業員に対しては、受検を促す勧奨を行いましょう。
回答結果から、高ストレス者であり医師による面接指導が必要と判断された労働者には、速やかに結果を通知します。ストレスチェックの結果は本人にのみ通知され、事業場には本人の同意がない限り個人の結果が提供されることはありません。高ストレス者のプライバシーに配慮し、結果の取り扱いには十分注意しましょう。
高ストレス者には、医師による面接指導を勧奨します。面接指導は、労働者の健康状態を把握し、必要な措置を検討するために重要な機会です。医師の意見を踏まえ、就業上の措置が必要な場合は、労働者と相談の上、適切な措置を講じます。休職、配置転換、作業内容の変更など、労働者の健康状態に配慮した対応が必要です。
個人の結果通知とは別に、事業場全体や部署ごとの回答結果を集計・分析します。集団分析を行うことで、職場環境に潜む問題点やストレス要因を客観的に把握することができます。集計・分析には通常多くの時間がかかるため、集計や集団分析に対応したツールを選ぶのがおすすめです。
集団分析の結果を参考に、職場環境の改善に取り組みます。長時間労働の是正、ハラスメント対策、コミュニケーションの活性化など、具体的な対策を検討・実施しましょう。ストレスチェックは実施して終わりではなく、結果を活かして働きやすい職場環境をつくることが最大の目的です。
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50人未満の事業場におけるストレスチェックは、法改正により義務化が決定したため、今後
は確実な対応が求められます。
実施にはコストや手間がかかりますが、メンタルヘルス不調の早期発見や離職防止、生産性向上といったメリットがそれを上回ります。産業医が未選任の事業場でも、地域産業保健センターの活用や外部サービスの利用によって、プライバシーを守りつつ効率的な実施が可能です。
従業員の健康を守り、働きやすい職場をつくるためにも、早めに計画を策定し、ストレスチェックの準備を進めましょう。