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ウェルビーイング採用とは?企業と従業員の幸福度を高める戦略

更新日:2025/01/07

経営の新たなスタンダードになってきている「ウェルビーイング」。採用の場面でも意識されてきています。従業員の幸福度を高め、企業の成長につなげる「ウェルビーイング採用」をしようと考えたことはありますか。

本記事では採用の新たなトレンドであるウェルビーイング採用を解説します。ウェルビーイング採用がなぜ今注目されているのか、企業と従業員双方にとってどのようなメリットがあるのかをお伝えします。

採用力を強化し、従業員エンゲージメントの向上・生産性向上・離職率低下を目指したいと考えている方はぜひ最後までご覧ください。

ウェルビーイング採用の定義

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ウェルビーイング採用とは、従業員の心身の健康や幸福を重視した採用活動のことです。単に優秀な人材を採用するだけでなく、企業理念や文化に共感し、組織の中でいきいきと活躍できる人材を採用することを目指します。従業員のウェルビーイングを高めることで、生産性向上や離職率低下といった企業業績への好影響も期待できます。

従来の採用活動では、スキルや経験といった能力面に重点が置かれていましたが、ウェルビーイング採用では、価値観や個性、働きがいといった面も重視されます。企業と従業員が共に成長し、持続可能な社会の実現に貢献していくために、ウェルビーイング採用は重要な役割を担っています。

ウェルビーイングとは何か

ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを指します。

世界保健機関(WHO) 、ウェルビーイングを「肉体的にも、精神的にも、そして社会的に完全に良好な状態であり、単に病気でないとか虚弱でないということではない」と定義しています。これは単に健康であるだけでなく、人生に満足感や幸福感を感じ、充実した生活を送っている状態と言えるでしょう。

ウェルビーイングは、仕事・家庭・地域社会など、人生におけるあらゆる側面に関わる概念です。仕事におけるウェルビーイングは、従業員が仕事にやりがいを感じ、自身の成長を実感し、良好な人間関係を築けている状態を指します。職場は、従業員のウェルビーイングを高めることで、生産性向上や離職率低下などの効果を期待できます。また、従業員にとっても、ウェルビーイングは仕事へのモチベーション向上や、より充実した人生を送るうえで重要です。

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なぜ今、ウェルビーイング採用が注目されているのか

ウェルビーイング採用が注目されている背景には、少子高齢化による労働力不足の深刻化や、コロナ禍による働き方の変化、メンタルヘルス問題の増加など、さまざまな要因があります。

優秀な人材の確保が難しくなる中で、企業は従業員の定着率向上が重要な課題となっています。また、リモートワークの普及などにより、仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、従業員のワークライフバランスへの関心が高まっています。さらに、長時間労働や職場の人間関係などによるメンタルヘルス問題の増加も、企業にとって大きなリスクとなっています。

これらの社会的な変化を背景に、従業員の心身の健康を重視し、働きやすい環境を提供することで、優秀な人材を惹きつけ、定着率を高めるウェルビーイング採用が注目されているのです。

背景 詳細
労働力不足の深刻化 少子高齢化により、優秀な人材の確保が困難に。
働き方の変化 コロナ禍でリモートワークが普及し、ワークライフバランスへの関心が高まる。
メンタルヘルス問題の増加 長時間労働や職場の人間関係などによるメンタルヘルス問題が増加。

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ウェルビーイング採用のメリット

ウェルビーイング採用は、企業と従業員双方に多くのメリットをもたらします。採用活動における競争優位性を高めるだけでなく、従業員の定着率向上や生産性向上にも寄与し、持続可能な企業成長を支える重要な要素となります。

企業側のメリット

企業にとって、ウェルビーイング採用は、優秀な人材の確保、従業員のモチベーション向上、ひいては企業全体の成長に大きく貢献します。

【採用力の向上】
ウェルビーイングを重視する企業文化を打ち出すことで、企業イメージが向上し、優秀な人材を惹きつけることができます。

求職者は、仕事内容だけでなく、働きがいのある環境や企業の価値観にも注目しています。ウェルビーイングへの取り組みを積極的に発信することで、企業の魅力を高め、採用競争で優位に立つことができます。人材不足が社会問題となっている今、優秀な人材の確保は企業の喫緊の課題です。ウェルビーイング採用は、この課題解決に有効な手段となるでしょう。

【従業員エンゲージメントの向上】
従業員のウェルビーイングが向上すると、仕事へのモチベーションや愛着が高まり、従業員エンゲージメントも向上します。

高いエンゲージメントを持つ従業員は、企業目標達成に貢献しようと積極的に行動し、生産性向上や離職率低下につながります。企業は、従業員の心身の健康をサポートすることで、より高いパフォーマンスを引き出し、持続的な成長を実現できます。

【生産性向上と離職率低下】
心身ともに健康な従業員は、高いパフォーマンスを発揮し、生産性向上に貢献します。

また、働きやすい環境が整備されていることで、離職率が低下し、優秀な人材の流出を防ぐことができます。採用や教育にかかるコストを削減できるだけでなく、組織全体のノウハウ蓄積にもつながり、企業の競争力強化に寄与します。

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従業員側のメリット

従業員にとって、ウェルビーイング採用は、仕事とプライベートのバランスを保ちながら、充実したキャリアを築き、心身の健康を維持するうえで大きなメリットとなります。

【仕事とプライベートの調和】
ウェルビーイング採用に取り組む企業では、柔軟な働き方が推進され、仕事とプライベートのバランスを取りやすい環境が整っているケースが多く見られます。

たとえば、在宅勤務やフレックスタイム制度の導入により、個々のライフスタイルに合わせた働き方が可能になります。これにより、ワークライフバランスが実現し、より充実した生活を送ることができます。

【キャリア開発の充実】
ウェルビーイング採用を導入している企業は、従業員のキャリア開発にも力を入れています。

研修制度やメンター制度などがあれば、スキルアップやキャリアアップの機会を得られます。自身の成長を実感できることで、仕事へのモチベーションも高まり、より充実したキャリアを築くことができます。

【心身の健康増進】
ウェルビーイング採用では、従業員の心身の健康を重視しています。

ストレスチェックやメンタルヘルス相談窓口の設置など、健康管理体制が充実しているため、安心して働くことができます。また、健康増進のためのプログラムや福利厚生制度が用意されている場合もあり、健康的な生活を送るためのサポートを受けることができます。

ウェルビーイング採用を成功させるための具体的な施策

戦略を立てるビジネスパーソン

ウェルビーイング採用を成功させるためには、計画的な施策の実施が不可欠です。現状把握から募集、選考、研修、評価、既存従業員への配慮まで、多角的なアプローチが必要です。

自社の現状把握

まずは自社の現状を把握することが重要です。従業員の健康状態や働きがい、職場環境の問題点などを明確にすることで、効果的な施策を打つことができます。

【ストレスチェックの利用】
ストレスチェックは、従業員のストレス状態を客観的に把握する有効なツールです。定期的な実施と適切なフォローアップが重要です。ストレスチェックの結果を分析し、高ストレス者へのケアだけでなく、職場環境改善にも役立てましょう。

【パルスサーベイの利用】
パルスサーベイは、短い周期で従業員のエンゲージメントや満足度を測定する調査です。リアルタイムで従業員の状況を把握し、迅速な対応が可能になります。ストレスチェックとあわせてぜひ活用したいしくみです。

【関連記事:プレゼンティーズムで損をするのは誰?企業と従業員双方を守るための対策

募集要項への工夫

求職者にとって、企業のウェルビーイングへの取り組みは重要な判断材料となります。

募集要項に企業の価値観や働きやすい環境づくりへの取り組みを具体的に記載することで、共感する求職者の応募を促すことができます。たとえば、ワークライフバランスの取り組みや、健康増進のための制度などを明記することで、企業の魅力を効果的に伝えられます。

選考プロセスにおける配慮

選考プロセスにおいても、ウェルビーイングの視点を盛り込むことが重要です。

面接時に、応募者の価値観や働き方への希望を丁寧にヒアリングすることで、企業とのミスマッチを防ぐことができます。また、選考結果のフィードバックを丁寧に行うことも、応募者の今後のキャリア形成を支援するうえで重要です。選考の段階から「あなたのことを大切に思っている」というメッセージを応募者に伝えましょう。

選考プロセス全体を通して、応募者に寄り添う姿勢を示すことで、企業の好感度向上にもつながります。

【関連記事:ウェルビーイング経営がビジネスにおいて重要な理由とは?メリットやデメリットを解説

研修制度の充実

従業員のスキルアップを支援するだけでなく、ウェルビーイングに関する研修を実施することで、従業員の意識向上と行動変容を促すことができます。

【ウェルビーイングに関する研修】
ストレスマネジメントやメンタルヘルスに関する研修を実施することで、従業員が自ら心身の健康を管理するスキルを身につけることができます。また、コミュニケーションスキルやチームビルディングに関する研修も、良好な職場環境づくりに役立ちます。

評価制度の見直し

従来の成果主義に基づいた評価制度だけでなく、従業員の貢献度や成長度合いを多角的に評価する制度を導入することで、従業員のモチベーション向上とエンゲージメント向上につながります。プロセスや行動を評価することで、従業員の努力を可視化し、公正な評価を実現できます。

既存従業員のウェルビーイング促進(働きやすい環境づくり)

既存従業員のウェルビーイング向上は、企業の持続的な成長に不可欠です。働きやすい環境づくりに向けて、さまざまな施策を積極的に導入しましょう。

【柔軟な働き方の導入】
テレワークやフレックスタイム制など、従業員のニーズに合わせた柔軟な働き方を導入することで、ワークライフバランスの実現を支援します。従業員が自身のライフスタイルに合わせて働ける環境を提供することで、生産性向上と離職率低下に期待できます。

【コミュニケーション活性化】
社内イベントや部活動などを開催することで、従業員同士のコミュニケーションを活性化し、良好な人間関係を構築することができます。部署や役職を超えた交流を促進することで、組織全体の活性化にもつながります。

【関連記事:ウェルビーイングを充実させるためのコミュニティの重要性

【EAPの活用】
EAP(従業員支援プログラム)は、従業員のメンタルヘルスや仕事上の悩みを専門家がサポートするサービスです。EAPを導入することで、従業員の心の健康を守り、生産性の維持・向上に貢献します。

【関連記事:EAP(従業員支援プログラム)を徹底解説!導入のメリット・デメリット、具体的な内容とは?

【産業医との連携】
産業医と連携し、定期的な健康診断や健康相談を実施することで、従業員の健康状態を適切に管理することができます。また、職場環境の改善についても、産業医の専門的なアドバイスを受けることが重要です。

ウェルビーイング採用事例紹介

ここでは、ウェルビーイング採用を行う場合の具体的な事例を2つ紹介します。

従業員向けのプログラムを体験してもらう事例

従業員の健康増進を目的とした「ウェルネスプログラム」を導入している企業では、採用に関するイベントの一環としてウェルネスプログラムを応募者に体験してもらうことができます。

たとえばヨガ教室やウォーキングイベントなどを開催し、従業員の健康意識向上に努めていることをアピールします。

プログラムを体験できるだけでなく、実際に従業員と関わり合うチャンスにもなるため、応募者にも社風がよく伝わり、ミスマッチ回避の効果もあります。

企業の業績向上をアピールした事例

従業員のワークライフバランスを重視した働き方改革を実施し、その結果を応募者に説明することもウェルビーイング採用の一例です。

フレックスタイム制やテレワークを導入し、従業員が柔軟に働ける環境を整備し、結果として、従業員の生産性向上と離職率低下を実現し、企業の業績向上に大きく貢献したことを説明会や採用サイト・パンフレット等で伝えます。

採用広報の場面で自社のウェルビーイング施策を伝えることで、自社の考え方や方針を的確に知らせる効果があります。

ウェルビーイング採用に関するよくある質問

ウェルビーイング採用に関してよくある質問をまとめました。

ウェルビーイング採用とウェルビーイング経営の違い・関連は?

ウェルビーイング採用とウェルビーイング経営はどちらも従業員の健康に焦点を当てていますが、その範囲と目的が異なります。

ウェルビーイング経営は、従業員の健康管理やウェルビーイングを経営的な視点から捉え、戦略的に取り組むことで、生産性向上や企業価値向上を目指すものです。一方、ウェルビーイング採用は、採用活動において従業員のウェルビーイング(心身の健康、幸福)を重視し、従業員がいきいきと働ける環境を提供することで、優秀な人材の確保や定着を図るものです。ウェルビーイング採用は、ウェルビーイング経営を推進するうえで重要な要素と言えるでしょう。

ウェルビーイング採用では、選考プロセスにおける配慮や研修制度の充実など、採用活動全体を通して従業員のウェルビーイングを考慮します。

両者は密接に関連しており、相乗効果を生み出すことができます。ウェルビーイング経営の取り組みが充実していれば、ウェルビーイング採用においても、企業の魅力としてアピールすることができます。また、ウェルビーイング採用によって優秀な人材が確保できれば、ウェルビーイング経営の取り組みもより効果的に進められるでしょう。

ウェルビーイング採用を導入する際の注意点は?

ウェルビーイング採用を導入する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 形骸化させない:
    ウェルビーイング採用は、単に制度を導入するだけでは意味がありません。従業員のニーズを的確に捉え、具体的な施策に落とし込む必要があります。また、導入後も効果検証を行い、継続的に改善していくことが重要です。
  • 経営層の理解と協力:
    ウェルビーイング採用を成功させるためには、経営層の理解と協力が不可欠です。経営層が率先してウェルビーイングの重要性を発信し、必要な資源を投入することで、全社的な取り組みへと発展させることができます。トップダウンでの推進が重要です。
  • 従業員とのコミュニケーション:
    ウェルビーイング採用は、従業員とのコミュニケーションを重視する必要があります。従業員の意見を積極的に聞き取り、施策に反映させることで、より効果的な取り組みを実現できます。パルスサーベイなどを活用し、継続的に従業員の声を聴くことが重要です。
  • 適切な指標の設定と効果測定:
    ウェルビーイング採用の効果を測定するためには、適切な指標を設定する必要があります。従業員エンゲージメントや離職率、生産性など、定量的な指標を設定し、定期的に測定することで、効果検証を行いましょう。

求職者と従業員のニーズを的確に捉え、適切な施策を実施することが重要です。施策の効果測定を行いながら、継続的に改善していく必要があります。なによりも、自社の現状を把握し、優先順位にしたがって職場改善を行っていくことが前提になるでしょう。

ウェルビーイング採用の効果測定方法は?

ウェルビーイング採用の効果測定には、さまざまな方法があります。代表的な指標と測定方法は以下のとおりです。

指標 測定方法
採用力 応募者数、採用率、採用単価などを採用管理システム等で計測します。
従業員エンゲージメント 従業員エンゲージメントサーベイを行います。eNPS(従業員推奨度)なども有効な指標となります。
離職率 一定期間における離職者数を集計し、離職率を算出します。退職理由の分析も重要です。
生産性 売上高、利益率、一人当たりの生産量などを計測します。
従業員満足度 パルスサーベイや従業員満足度調査を実施します。自由記述式の回答から、より詳細な情報を収集することも可能です。
ストレス状況 ストレスチェックの実施状況や結果を集計・分析。高ストレス者の割合の変化などを追跡することで、施策の効果を検証できます。

これらの指標を組み合わせて分析することで、ウェルビーイング採用の効果をより多角的に評価することができます。また、効果測定の結果を基に、施策の改善につなげることが重要です。

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ウェルビーイング採用で組織を活性化

笑顔で作業に向かうビジネスパーソン

本記事では、ウェルビーイング採用について、その定義からメリット、具体的な施策などを網羅的に解説しました。ウェルビーイング採用とは、従業員の心身の健康を重視し、働きがいのある環境を提供することで、企業と従業員の双方にとって幸福度を高める採用戦略です。少子高齢化による人材不足や、コロナ禍を経て働き方に対する価値観の変化など、企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、優秀な人材の確保と定着のために、ウェルビーイング採用はますます重要性を増しています。

ウェルビーイング採用を成功させるためには、自社の現状把握に基づいた施策の実施が不可欠です。ストレスチェックやパルスサーベイなどを活用し、従業員のニーズを的確に捉え、募集要項や選考プロセス、研修制度、評価制度など、採用活動全体を通してウェルビーイングの視点を組み込む必要があります。また、柔軟な働き方の導入やコミュニケーションの活性化、EAPの活用など、既存従業員のウェルビーイング向上にも取り組むことで、企業全体の活性化につながります。効果測定を定期的に行い、PDCAサイクルを回すことで、より効果的な施策を展開していくことが重要です。

従業員のウェルビーイング向上は、企業の成長にも大きく貢献します。生産性向上や離職率低下、企業イメージ向上など、さまざまなメリットが期待できます。自社に合ったウェルビーイング採用戦略を構築し、持続可能な企業成長を実現しましょう。