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ストレスチェック実施で押さえておきたい運用のポイント
ストレスチェック制度について
ストレスチェック制度の目的とその課題について見ていきたいと思います。
ストレスチェックの目的
- 従業員の心身の不調の早期発見と未然予防
- ストレスチェックデータを活用した職場環境改善
1ですが、法律で義務となっている範囲の対応です。
従業員個人がチェックを受け、高ストレスになっているかどうか、高ストレスであれば産業医を含めた医師の面接を実施するという業務です。
1についてはメンタルヘルス対策の観点から申し上げると「従業員個人のケア=セルフケア」に焦点を当てた対策になります。
病気の早期発見、早期対処、早期治療により予防を強化する対策です。
2については現在、努力義務ですが、ストレスチェックデータを匿名化、グルーピングし集団の分析データに加工。その集団分析データを使った職場環境改善対策です。1と違い、職場(組織)にスポットを当て職場を改善することでメンタル不調者を減らす取り組みです。
1は東京医科大学のグループが研究していたテーマ、2は東京大学のグループが研究していたテーマです。
ストレスチェックは別の大学が研究していた内容をまとめて取り組むことで心身の予防と組織の改善の両方を進めるということを目的にしています。
しかし、実際の現場では、高ストレス者が出た後、医師との面接を希望する従業員が出なかったケース、医師との面接設定まで時間がかかりすぎたケース、集団分析のデータの公開範囲が曖昧など、様々な課題が浮上しています。
ストレスチェック実施にあたっての有効な運用方法
新たな取り組みとして始まったストレスチェックですが、現在のストレスチェック制度の課題を解決するにはどのような運用方法や対策が必要なのでしょうか?
まずはスムーズな運用を行うにあたり外部業者の適切な選定が重要です。
ここからは発注業者を選定する上で見落としがちなポイントをまとめました。
自社の運用にあったサービス
同じ業界の企業でも業務フロー、従業員構成などが違っていることがほとんどだと思います。実施にあたって自社にとって最も効果的な運用を考えることが重要です。昨今は外国人従業員が増加している企業も多く弊社でも外国語対応が重要ポイントになることが増えてきております。また、派遣会社や運輸系企業、病院など従業員の自宅へ調査票を送ることで実施できる会社もあると思いますので自社にあったフローを構築することが要です。
相談対応の体制
従業員からの健康相談や事務連絡、人事・総務担当者からの運用相談を迅速に対応できる体制を構築しているかも重要です。特にWebで実施をする場合は従業員の方からログインできない、アカウント情報の再発行など事務連絡が増えます。こういう細かいものから体調不良などの専門相談まで対応できる業者に依頼すると担当者の負担軽減につながります。
医師面接の実施方法と場所
高ストレス者の面接は法律上、医師に限定されています。そのため、全国に事業所をお持ちの企業は具体的に課題をイメージできると思います。事業拠点が多数ある企業は医師面接が迅速に対応できる業者に依頼することをお勧めします。1点、注意点として、医師紹介会社を利用する場合は紹介が100%可能かどうかチェックする必要があります。高ストレス者から医師面接の希望が出た際に面接が実施できないと大きなトラブルに発展する可能性があります。
追加設問への対応
最近、企業から独自の追加設問をストレスチェックと同時に実施する事例が増えています。特に多いのがハラスメント検査や睡眠検査です。ハラスメント防止体制の構築は企業においても緊急度の高い事案でありますし、メンタル不調を起こす方はまず睡眠に支障が出ることも医学的に分かっています。したがって、これらを重点的に分析して産業医、保健師等の専門職による早期発見、対処へつなげたいという企業が増えております。
サービスの品質
ストレスチェック自体、個人情報に該当するため、企業の体制や専門家の人数なども注目をされております。昨年起きた年金の情報漏えい事故等により個人情報の扱いと体制が厳しくなっています。最近は実施体制を重視する企業も増えてきました。尚、厚生労働省の外郭団体である独立行政法人 労働者健康安全機構がメンタルヘルスにおける専門的な体制を構築している業者を独自に認定しています。
https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/mental/sodankikan/tabid/117/Default.aspx
(独立行政法人 労働者健康安全機構:登録相談機関リスト)
一部の自治体や企業ではこちらへの登録を取引条件にしているケースもあります。
セキュリティ対策
サービス品質とも関連しますが、個人情報を扱うことからプライバシーマークなどの認証取得が必須であると感じています。個人情報の漏えい事故を起こさないためにも体制を構築しているか、認証以上の体制を構築していることは確認する必要があります。発注の際には最低でもプライバシーマークの取得をしている業者を選定すると良いでしょう。最近ではISO270001/ISMSも取得をしセキュリティ体制を強化している業者も増えてきました。
費用対効果の判断
業者から出される見積もり費用(外注コスト)だけではなく、担当部門や担当者の稼働コスト(内部コスト)も含めて判断されることを強くお勧めします。サービス範囲を詳細に確認せず担当者の業務が増えて大変だった、義務化対応後の研修や職場改善コンサルティング、役員への報告実施などより突っ込んだ内容が出来なかった等のお声を聞くこともあります。毎年実施する業務ですので、経年比較で分析ができるように費用対効果の高い業者へ発注することが重要です。
実績
ストレスチェックも4年目に入っておりますので、力を入れている業者かそうではないかは実績やサービスラインナップを確認すれば判断できると思います。ストレスチェックやそれに付随する職場改善の支援実績の多い業者は自社HPに取引先を公開していたり、打ち合わせの時に的確な回答ができるものです。その辺りも含めチェックをされることをお勧めします。
まとめ
ストレスチェックに関する運用体制が固まってきた企業が増えている中、特に近年はエンゲージメント向上、ハラスメント予防、健康経営など、従業員の生産性やリスクマネジメントにフォーカスした施策が増えてきました。このような潮流の中、ストレスチェックはその中心に位置する対策だと言えるのではないでしょうか。
ストレスチェックのデータを活用することで、職場環境改善だけではなく、離職予防や不調者の予測など、さまざまな広がりの可能性を秘めています。
毎年1回以上必ず行うストレスチェックだからこそ、義務化の範囲だけではなくデータを有効に活用していくことで職場改善や健康経営につなげていく対応が今後より求められると考えます。
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