公開日:2025/01/10
よく耳にする「エンゲージメント」という言葉について、正しい意味をご存知でしょうか。
本記事では、エンゲージメントの持つ本当の意味や種類、そしてその向上によって得られるメリットをわかりやすく解説します。エンゲージメントの本質を理解し、組織の活性化や生産性向上につなげるためのヒントがほしいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
「エンゲージメント」という言葉について、近年ビジネスシーンで頻繁に耳にするようになりました。しかし、その意味するところは多岐にわたり、正確に理解している人は少ないかもしれません。
本項では、辞書的な意味からビジネスにおける意味まで、エンゲージメントの多様な側面をくわしく解説します。
英語の "engagement" を辞書で引くと、「約束」「契約」「婚約」「雇用」「交戦」「かみ合い」など、多様な意味を持つことがわかります。これらの意味は、いずれも「人と人」「人と組織」「モノとモノ」が深く関わり合う状況を表しています。しかし、ビジネスシーンで使われるエンゲージメントは、これらの辞書的な意味とは少し異なるニュアンスを持つ場合が多いでしょう。
ビジネスにおけるエンゲージメントは、大きく分けて「ワーク・エンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」の2種類に分類されます。これらはそれぞれ異なる概念であり、混同しないように注意が必要です。
ワーク・エンゲージメントは、仕事に対する個人の心理状態を表す概念です。一方、従業員エンゲージメントは、従業員と企業の関係性を表す概念です。どちらもビジネスの成功に不可欠な要素ですが、その焦点は異なります。
種類 | 定義 | 焦点 |
---|---|---|
ワーク・エンゲージメント | 仕事に関連するポジティブな心理状態 | 個人 |
従業員エンゲージメント | 従業員と企業の間の信頼関係 | 組織 |
近年、日本企業では従業員エンゲージメントの向上が重要な経営課題となっています。少子高齢化による労働力不足やグローバル化による競争激化などを背景に、従業員のモチベーション向上や定着率向上は、企業の持続的な成長に不可欠です。従業員エンゲージメントを高めることで、従業員の仕事への意欲を高め、生産性向上や企業業績向上につなげることが期待されます。
ワーク・エンゲージメントも従業員エンゲージメントも、単なる一時的な状態ではなく、持続的な関係性を築くことが重要です。職場は、従業員が仕事にやりがいを感じ、企業への愛着を持つような環境づくりに取り組む必要があります。働きやすい環境は従業員エンゲージメントとワーク・エンゲージメントの好循環を生み出し、企業の成長につなげられるでしょう。
エンゲージメントは、ワーク・エンゲージメントと従業員エンゲージメントの2種類に大別されます。それぞれ異なる概念であり、混同されがちですが、正しく理解することで組織の活性化につながる重要な要素となります。
ワーク・エンゲージメントとは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を指します。仕事に対して、活力・熱意・没頭という3つの要素が特徴です。
3つの要素は単なる一時的な感情ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情や認知のことを指します。ワーク・エンゲージメントが高い状態とは、仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て生き生きと働いている状態と言えるでしょう。
【ワーク・エンゲージメントの3要素】
ワーク・エンゲージメントを構成する3つの要素について、くわしく見ていきましょう。
要素 | 内容 |
---|---|
活力 | 高いレベルのエネルギーと持久力を持って仕事に取り組むことができる状態。困難な課題にも臆することなく、積極的に挑戦していくことができます。 |
熱意 | 仕事に情熱を感じ、誇りを持って取り組むことができる状態。仕事に意義を見出し、高いモチベーションを維持することができます。 |
没頭 | 仕事に集中し、時間を忘れて取り組むことができる状態。高い集中力を発揮し、生産性を向上させることができます。 |
従業員エンゲージメントとは、従業員と職場の間における情緒的な結びつきの強さを表す概念です。従業員が会社に愛着を持ち、会社のために貢献したいという意欲を高く持っている状態を指します。
従業員エンゲージメントが高い状態とは、従業員が会社を「自分事」として捉え、積極的に業務に取り組むだけでなく、組織の目標達成にも貢献しようとする状態です。
従業員エンゲージメントもまた、以下の3つの要素で構成されます。
これらはワーク・エンゲージメントの3要素と共通しており、従業員エンゲージメントを高めるためには、ワーク・エンゲージメントを高めるための施策と合わせて、企業への愛着や帰属意識を高めるための取り組みも重要になります。
ワーク・エンゲージメントと従業員エンゲージメントは相互に影響し合う関係にあります。ワーク・エンゲージメントが高い状態は、従業員エンゲージメントを高めるための土台となります。仕事にやりがいを感じ、熱意を持って取り組むことで、組織への愛着や貢献意欲も高まるからです。逆に、従業員エンゲージメントが高い状態は、ワーク・エンゲージメントをさらに高める効果があります。組織への愛着や貢献意欲が高い従業員は、仕事にもより積極的に取り組み、高いパフォーマンスを発揮するようになるからです。
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上記2つの主要なエンゲージメント以外にも、さまざまな文脈でエンゲージメントという言葉が使われます。
たとえば、顧客エンゲージメントは、顧客と企業との良好な関係性を築き、維持することを指します。顧客ロイヤルティを高め、継続的な取引につなげるための重要な指標となります。
また、コミュニティエンゲージメントは、地域社会との関わりを深め、良好な関係を築くことを指します。企業の社会的責任を果たすうえで重要な役割を担っています。
ソーシャルメディアエンゲージメントは、ソーシャルメディア上でのユーザーの反応や行動を指します。いいね!やコメント、シェアなどの指標を通して、ユーザーの関心の度合いを測ることができます。
エンゲージメント向上は、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。ワーク・エンゲージメントと従業員エンゲージメント、それぞれの向上によるメリットを理解し、組織全体の活性化を目指しましょう。
ワーク・エンゲージメントが高い状態とは、従業員が仕事にやりがいを感じ、熱意を持って仕事に取り組んでいる状態です。この状態は、以下のようなさまざまなメリットにつながります。
メリット | 詳細 |
---|---|
生産性向上 | 熱意を持って仕事に取り組むことで、質の高いアウトプットが期待できます。また、自発的に業務改善に取り組む姿勢も生まれ、効率的な業務遂行につながります。 |
離職率低下 | 仕事にやりがいを感じている従業員は、組織への愛着も強くなります。結果として、離職率の低下につながり、優秀な人材の流出を防ぐことができます。 |
創造性・革新性の向上 | 仕事への没頭は、新たなアイデアの創出や、既存の業務プロセス改善への意欲を高めます。企業の成長には欠かせない創造性・革新性の向上に貢献します。 |
企業イメージ向上 | 従業員の活気あふれる姿は、企業イメージの向上につながります。顧客満足度向上や優秀な人材獲得にもプラスの影響を与えます。 |
従業員エンゲージメントが高い状態とは、従業員が企業への愛着を持ち、貢献意欲を高めている状態です。ワーク・エンゲージメント同様、職場にとってプラスの効果をもたらします。
メリット | 詳細 |
---|---|
組織パフォーマンス向上 | 従業員が組織目標に共感し、積極的に貢献することで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。 |
離職率の低下 | 組織への愛着が強い従業員は、離職する可能性が低くなります。採用コストの削減にもつながります。 |
欠勤率の低下 | 高いエンゲージメントは、従業員の健康状態にも良い影響を与えます。結果として、欠勤率の低下が見込めます。 |
顧客満足度向上 | 従業員が組織に誇りを持って仕事に取り組むことで、顧客へのサービス向上につながり、顧客満足度向上に貢献します。 |
企業の成長 | 従業員エンゲージメントの向上は、企業の持続的な成長に不可欠な要素です。従業員の貢献意欲を高め、企業価値向上につなげましょう。 |
ワーク・エンゲージメントと従業員エンゲージメント、どちらの向上にも共通する最大のメリットは、生産性の向上です。
生産性向上は企業の収益増加に直結し、さらなる事業拡大や従業員への投資につながる好循環を生み出します。従業員がいきいきと働く環境を作ることで、生産性向上を目指しましょう。
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エンゲージメントを高めるためには、まず現状を把握し、適切な施策を実施することが重要です。ここでは、エンゲージメントの状態把握の方法と、ワーク・エンゲージメント、従業員エンゲージメントそれぞれの具体的な向上施策を解説します。
エンゲージメントを高めるための施策を検討する前に、現状のエンゲージメントレベルを把握することが不可欠です。客観的なデータに基づいて現状を分析することで、適切な対策を講じることができます。
【ストレスチェックを活用する】
ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握するための有効なツールです。厚生労働省が定めたストレスチェック制度を活用することで、従業員の心理的負担を客観的に評価できます。
ストレスチェック(80問版)の結果は、エンゲージメント低下の要因を特定する手がかりとなります。高ストレス者へのケアはエンゲージメント向上につながるだけでなく、メンタルヘルス不調の予防にも効果的です。
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【エンゲージメントサーベイを活用する】
エンゲージメントサーベイは、従業員のエンゲージメントレベルを直接的に測定するための調査です。質問項目をカスタマイズすることで、組織特有の課題を明らかにすることができます。定期的に実施する「パルスサーベイ」の形を用いることで、施策の効果測定にも役立ちます。
実施にあたっては、従業員への丁寧な説明とプライバシーへの配慮が重要です。従業員エンゲージメントサーベイは、従業員の会社への愛着度や貢献意欲を測るためのツールです。組織の現状を把握し、改善点を明確にするために役立つことを従業員に伝えましょう。
ワーク・エンゲージメントを高めるためには、従業員が仕事にやりがいを感じ、熱意を持って取り組める環境づくりが重要です。以下の施策は、ワーク・エンゲージメント向上に効果的です。
施策 | 内容 | 効果 |
---|---|---|
目標設定とフィードバック | 従業員と上司が一緒に目標を設定し、定期的にフィードバックを行うことで、従業員の成長を促進し、モチベーションを高めます。 | 目標達成への意識向上、自己成長の実感 |
スキルアップ支援 | 研修制度や資格取得支援など、従業員のスキルアップを支援することで、成長意欲を高め、仕事へのモチベーション向上につなげます。 | スキル向上による自信、キャリアアップへの期待 |
業務の自律性向上 | 従業員に裁量権を与え、自主的に仕事を進められるようにすることで、責任感とやりがいを高めます。 | 主体性の発揮、創造性の向上 |
適切な仕事量の調整 | 過剰な仕事量は、エンゲージメントの低下につながります。適切な仕事量を維持することで、従業員の負担を軽減し、生産性を高めます。 | ワークライフバランスの改善、ストレス軽減 |
働きやすい職場環境づくり | 良好な人間関係や風通しの良い職場環境は、従業員のモチベーション向上に大きく貢献します。 | 心理的安全性の確保、コミュニケーション活性化 |
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従業員エンゲージメントを高めるには、従業員が会社への愛着と信頼感を抱けるような施策が重要です。以下の施策は、従業員エンゲージメント向上に効果が期待できます。
施策 | 内容 | 効果 |
---|---|---|
企業理念の浸透 | 企業理念を共有し、従業員が共感することで、会社への帰属意識を高めます。 | 企業理念への共感、組織への一体感醸成 |
社内コミュニケーションの活性化 | 社内イベントや部活動などを通じて、従業員同士のコミュニケーションを促進することで、良好な人間関係を築きます。 | チームワークの向上、組織内でのつながり強化 |
福利厚生の充実 | 従業員のニーズに合わせた福利厚生制度を提供することで、会社への満足度を高めます。 | ワークライフバランスの充実、生活の質向上 |
公正な評価制度の導入 | 明確な基準に基づいた評価制度を導入することで、従業員のモチベーションを高め、公平感を醸成します。 | 仕事への意欲向上、成果への公正な評価 |
キャリアパス支援 | 従業員のキャリアプランをサポートし、成長機会を提供することで、会社への愛着を深めます。 | キャリアアップへの期待、長期的なキャリア形成支援 |
これらの施策は単独で実施するだけでなく、組み合わせて相乗効果を狙うことが重要です。どの部分から行うべきかは組織の状況によって異なるため、現状把握を正しく行って優先順位をつける必要があります。
【関連記事:職場環境改善の鍵!ストレスチェックで高ストレス者に対応するための3ステップ】
また、施策の効果を検証し、継続的に改善していくことで、エンゲージメントの向上につなげられます。年1回のストレスチェックと集団分析を適切に行って職場改善の優先順位を把握し、定期的なサーベイや次回のストレスチェックによって施策の効果測定が可能です。
エンゲージメントを高めるためには、経営層のコミットメントと、人事部門による戦略的な取り組みが不可欠です。従業員のエンゲージメントを高めることは、生産性向上、離職率低下、企業イメージ向上など、企業にとって大きなメリットをもたらします。効果的な施策を実施し、持続的な成長を目指しましょう。
エンゲージメントは抽象的な概念であるため、さまざまな疑問を持つ方もいることでしょう。ここではよくある質問とその回答をまとめました。
エンゲージメントとモチベーションはどちらも仕事への意欲に関わる言葉ですが、明確な違いがあります。
モチベーションは、内的要因に基づく仕事への意欲を指します。一方、エンゲージメントは仕事と組織に対する愛着や思い入れを含みます。モチベーションが高い状態でも、組織への愛着がなければエンゲージメントは高くありません。
項目 | モチベーション | エンゲージメント |
---|---|---|
定義 | 仕事に対する意欲、やる気 | 仕事と組織への愛着や思い入れ |
方向性 | 内的要因 | 組織との関係性 |
持続性 | 変動しやすい | 比較的安定 |
エンゲージメントを測る指標はさまざまですが、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。
これらの指標を単独で用いるのではなく、組み合わせて分析することで、より正確にエンゲージメントの状態を把握できます。
エンゲージメント向上は、さまざまな経営指標に良い影響を与えるとされています。以下の4つがその例です。
などが挙げられます。エンゲージメントの高い従業員は、組織への貢献意欲が高く、自発的に業務に取り組むため、生産性や顧客満足度向上につながると考えられます。また、離職率低下にもつながり、採用コストの削減にもつながります。
エンゲージメントは企業にとって重要な要素であり、その向上は企業の成長に大きく貢献すると言えるでしょう。
「エンゲージメント」の意味や種類、向上させるメリット・方法について解説しました。エンゲージメントとは、ビジネスの文脈では、従業員が組織や仕事に対してどれだけ熱意や愛着を持っているかを示す概念です。辞書的な意味での「約束」や「契約」とは異なり、従業員の自発的な貢献意欲を指します。
エンゲージメントには、ワーク・エンゲージメントと従業員エンゲージメントといった種類があります。ワーク・エンゲージメントは仕事に対する熱意を、従業員エンゲージメントは組織に対する愛着を表します。どちらも、活力・熱意・没頭という3つの要素から成り立っています。エンゲージメントを高めることで、生産性向上、離職率低下、企業イメージ向上といったメリットが期待できます。とくに生産性向上は、企業の業績に直結する重要なメリットと言えるでしょう。
エンゲージメントを高めるためには、ストレスチェックやパルスサーベイなどを活用して現状を把握し、適切な施策を実施することが重要です。具体的な施策としては、仕事への裁量権を与える、職場環境を改善する、適切な評価制度を導入するなどが挙げられます。エンゲージメント向上は、企業の持続的な成長にとって不可欠な要素です。
自社におけるエンゲージメント向上への取り組みの第一歩として、まずは現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。