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ストレスチェックデータを活用した職場環境改善術

前回のコラムではストレスチェック制度の概要および効果的な運用方法全般について解説をいたしました。
今回は、ストレスチェックを活用した職場環境の改善にフォーカスをして具体的に解説をいたします。

メンタルヘルス対策の意識の高まり

労基法の改正や健康経営などの普及によりメンタルヘルス対策への意識の高まりを感じています。ストレスチェックに関しては従業員のケアだけではなく、集団分析データを活用した職場環境改善に取り組む企業も増えています。

また、ヘルスケアテクノロジーの進化もめざましく、ストレスチェックデータや健診結果、勤怠データなどを活用した職場改善を進める企業も増えております。

職場改善というとこれまでは課題をアナログ的に判断しがちだった状況を様々なデータを用いることで客観的に把握し、それぞれの原因を可視化することで適切な対策を進めていく流れができつつあると感じています。

職場分析で活用できるデータ

ストレスチェックを活用した職場環境改善は、従業員が心身ともに健康的に、高い生産性を持って働けるよう、集団分析データを元に職場で課題になっている従業員のストレス把握、可視化、改善活動のことです。

集団分析から把握できる職場環境は幅広く、以下のようなものが含まれます。

・労働時間や仕事量
・仕事の裁量、働きがい
・職場の作業環境(温度、照明、騒音など)
・上司、同僚との人間関係
・体調の状態など

57項目で検査するストレスチェックでは、計測できる尺度が19もあり、現実問題として全ての因子について即座に解決に持っていくことは難しいと思います。毎年実施する中で把握、可視化を進めることが職場環境改善の第一歩となります。

また、ストレスチェックには57項目の上位版として80項目のストレスチェックもあります。80項目を実施するとより多くの分析尺度が増え、職場改善につなげることが可能です。
80項目の特徴は「従業員のイキイキ度」「職場の一体感」「経営層との信頼関係」「ハラスメント」など職場の良いところも可視化できる検査になっております。
4年目に入り、検査項目を変えたいという企業にはオススメです。

集団分析データを活用した改善方法

改善を行うにあたっての原則は「早期発見」「早期介入」です。
データを分析し可視化した後は問題点を早期に発見し、産業医や保健師などの専門職に相談をし、早期に対処を行うことが非常に重要です。

集団分析データの中で特に重要な指標は以下となります。
・仕事の量的負担
・仕事のコントロール度
・上司の支援
・同僚の支援

これらは「仕事のストレス判定図」という指標で計測することができます。おなじみのグラフですのでご存知の方も多いと思います。

まず、仕事の量的負担は2019年4月に労働基準法が改正されたこともあり、労働時間管理への厳格化が注目されています。そのため、量的負担の数値が悪いと、超過勤務状態にないか?業務量は適正か?といった点を確認する必要があります。

次に仕事のコントロールですが、アメリカの心理学者エドワード・デシが研究の中で仕事の裁量(コントロール度)とモチベーションとの関係性において、裁量が低い仕事はモチベーションも低くなり、結果的に従業員の離職につながることを証明しています。従業員自身がある程度の責任と範囲を持ち自律的に決定できる職場であると感じているかが重要です。デシは自身の理論の中で従業員のモチベーションを高めるには「内発的動機」の重要性を説いています。内発的動機とは、第三者などの外部から受ける要因によりモチベーションを上げるのではなく、自分自身の内面的な要因によりモチベーションを上げることです。内発的動機をあげるには、仕事の意味や価値を見出すことや上司との1on1ミーティングなどで気付きを増やすことで内発的動機を引き出し、活気のある職場にしていくことが求められます。

最後に上司の支援、同僚の支援ですが職場で従業員が孤立していないか、上司が忙しすぎてマネジメントできていないかなどをチェックする必要があります。大手人材会社のデータでも発表されているように離職理由は上司、同僚との人間関係によるものが目立ちます。実際に職場の人間関係が悪化している原因は忙しさなどによる希薄化なのか、ハラスメントが起こっているのかなど原因の仮説を立て、適切な打ち手を実行していくことが求められます。

まとめ

職場環境改善は、様々な専門家の知恵を借りる必要があります。実際、昨今の働き方改革による業務量の増加により人事・総務担当者が割ける時間も限られています。

また、職場環境改善の業務だけでなく、採用、教育・育成、定着率の向上など、人事・総務担当者が対応しなければならない問題は多岐に渡っています。

このような状況下では、いろいろな検査やシステムに手を出すより、法令で決められている検査を上手に活用し、職場改善を進めていくことが効果的です。

また、データの把握、分析結果の可視化だけにとどまらず具体的な実行策まで推進できる体制を構築することが企業に求められています。

筆者プロフィール

株式会社ドリームホップ 取締役

椋野 俊之

  • 大手メンタルヘルス対策企業にて商品企画、市場調査、競合分析などの業務を担当。
  • 株式会社ドリームホップに入社後、ストレスチェック事業の立ち上げ、1000社を超える官公庁や企業の支援に関与。
  • 東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野が企画・運営する「職場のメンタルヘルス専門家養成プログラム(TOMHコース)」を修了(第4期)