更新日:2025/08/05
従業員マネジメントに欠かせない1 on 1、あなたの職場ではうまくいっているでしょうか。
本記事では、1 on 1が単なる業務報告の場ではなく、部下の自律的成長を促し、信頼関係を深めることで組織全体のパフォーマンスを最大化する真の目的を解き明かします。部下の本音を引き出し、潜在能力を開花させる方法を確認しましょう。

ビジネス環境の変化が加速し、多様な働き方が広がるなかで、組織と個人の成長を両立させることがこれまで以上に重要になっています。このような背景から、上司と部下が定期的に対話を行う「1 on 1ミーティング」が、部下の自律的な成長を促し、組織全体の生産性を高めるための効果的な手段として注目を集めています。
1 on 1とは、上司と部下が一対一で定期的に行う対話の機会です。その最大の目的は、単なる業務の進捗確認や指示出しではなく、部下の話に耳を傾け、内面的な課題やキャリアの悩み、強みや興味関心などを深く理解し、信頼関係を構築することにあります。この信頼関係こそが、部下が安心して本音を語り、自身の成長に主体的に取り組むための土台となります。
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1 on 1は、企業と個人の双方に多岐にわたるメリットをもたらします。部下のエンゲージメント向上やパフォーマンス改善を通じて、組織全体の活性化に貢献します。
| 対象 | メリット |
|---|---|
| 企業 |
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| 個人(部下) |
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1 on 1は、従来の人事評価面談や業務進捗確認のための面談とは根本的に異なる目的と特性を持っています。その独自性を理解することが、効果的な実施の鍵となります。
| 項目 | 1 on 1ミーティング | 一般的な面談(人事評価、進捗確認など) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 部下の成長支援と信頼関係構築 | 評価、目標達成度確認、業務指示 |
| 対話の方向性 | 部下中心(部下の内省と気づきを促す) | 上司中心(上司から部下への伝達や指示) |
| 頻度 | 高頻度(週1回~月1回程度) | 低頻度(半期に1回、四半期に1回など) |
| 内容 | キャリア、スキル、人間関係、コンディションなど多岐にわたる部下の内面的なテーマ | 業務目標、成果、人事評価基準 |
| アジェンダ | 部下が主体的に設定、または上司と部下で共同設定 | 上司や会社側で設定済み |
1 on 1を成功させるうえで最も重要な認識の一つが、これが単なる業務報告の場ではないということです。業務の進捗確認や課題共有は、日常的なコミュニケーションや別の会議体で行うべきです。
1 on 1は、部下が日々の業務で感じていること、将来のキャリアに対する考え、あるいは個人的な成長課題など、普段の業務の中ではなかなか話せないようなテーマに焦点を当てることで、その真価を発揮します。

1 on 1は、部下の自律的な成長を促し、強固な信頼関係を築き、最終的に組織全体のパフォーマンスを最大化するための戦略的な対話です。ここでは、その真の目的を構成する3つの柱を詳しく解説します。
| 1 on 1の3つの柱 | 具体的な目的 | 上司の役割 |
|---|---|---|
| 部下の自律的成長を促す | 目標設定と進捗確認を通じた能力開発支援 | コーチング、フィードバック、キャリア支援 |
| 信頼関係を構築し心理的安全性を高める | オープンな対話による本音の引き出し | 傾聴、共感、安心できる場の提供 |
| 課題解決とパフォーマンス向上 | 隠れた課題の発見と解決、モチベーション向上 | 問題特定、解決策の共同検討、承認と激励 |
1 on 1の最も重要な目的の一つは、部下が自ら考え、行動し、成長していく力を育むことです。上司が一方的に指示を与えるのではなく、部下自身が課題を見つけ、解決策を導き出すプロセスを支援します。
1 on 1は、部下の目標設定と達成に向けた進捗を定期的に確認し、適切なサポートを提供する場です。OKR(Objectives and Key Results)やMBO(Management by Objectives)といった目標管理手法と連携させることで、部下は自身の業務が組織目標にどう貢献しているかを理解し、主体的に取り組むことができます。進捗が芳しくない場合は、その原因をともに探り、軌道修正や新たなアプローチを検討することで、部下の問題解決能力を高めます。
部下一人ひとりの強みや潜在能力を深く理解し、それを最大限に活かすための能力開発を支援することも1 on 1の重要な役割です。具体的な業務における成功体験や課題を通じて、部下自身が気づいていない強みを発見させ、それをさらに伸ばすための機会を設けます。また、弱みや改善点についても、一方的に指摘するのではなく、部下が自覚し、克服するための具体的なアクションプランをともに考え、継続的な成長を促します。
部下が安心して本音を語れる環境、すなわち「心理的安全性」が確保された状態は、成長とパフォーマンス向上の土台となります。1 on 1はこの心理的安全性を育むための最適な場です。
1 on 1は、上司と部下が立場や役割を超えて、率直に意見を交換できるオープンなコミュニケーションを促進します。業務上の悩み、キャリアに関する不安、チームや組織への提言など、普段の業務では話しにくい内容も、1 on 1の場でなら安心して打ち明けられる関係性を築くことが重要です。適切な関係性の構築ができれば、部下は孤立感を感じることなく、前向きに業務に取り組めるようになります。
部下の本音を引き出すためには、上司が傾聴の姿勢を徹底し、共感を示し、判断や批判をしないことが不可欠です。部下の言葉の裏にある感情や意図を理解しようと努め、安心して話せる雰囲気をつくり出すことで、部下は自身の課題や考えをより深く共有するようになります。潜在的な問題の早期発見や、よりパーソナルな成長支援にもつながるでしょう。
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部下の成長と信頼関係の構築は、最終的に個人のパフォーマンス向上、ひいては組織全体の成果に直結します。1 on 1は、そのための具体的な課題解決とモチベーション向上を促します。
日々の業務の中では見過ごされがちな、部下が抱える個人的な悩みや業務上の障壁、チーム内の潜在的な課題などを1 on 1で発見し、早期に解決へと導きます。たとえば、人間関係の悩み、スキル不足、業務負荷の偏りなどがパフォーマンスに影響を与えている場合、1 on 1の場でそれらを明らかにし、ともに解決策を検討することで、部下は安心して業務に集中できるようになります。
部下の貢献を認め、感謝を伝え、適切なフィードバックを与えることで、部下のモチベーションを向上させ、会社へのエンゲージメント(組織への貢献意欲)を強化します。部下が自身の仕事の意義を理解し、成長を実感できる場を提供することで、内発的な動機付けが促されます。部下はより高いパフォーマンスを発揮し、長期的に組織に貢献する意欲も高まるでしょう。

部下の成長を促し、組織全体のパフォーマンスを向上させるためには、戦略的かつ計画的なアプローチが不可欠です。
効果的な1 on 1を実現するためには、以下のような事前の準備が非常に重要です。上司と部下の双方が目的意識を持って臨むことで、限られた時間を有意義に活用し、より深い対話が可能になります。
| 準備フェーズ | 上司側の行動 | 部下への依頼・期待 |
|---|---|---|
| 目的・アジェンダ共有 |
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| 事前質問・情報収集 |
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1 on 1の本番では、上司の対話スキルが大きく問われます。部下が安心して本音を語れる環境を作り、その成長を促すための具体的なポイントを押さえましょう。
| 対話の質を高めるポイント | 具体的な行動 |
|---|---|
| 傾聴 |
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| 質問力 |
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| フィードバック |
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| ネクストステップ |
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1 on 1は一度きりのイベントではなく、継続的なプロセスです。実施後のフォローアップを通じて、対話の内容を定着させ、部下の成長を継続的に支援しましょう。
1 on 1で話し合った内容や決定事項は、簡潔な議事録にまとめ、部下と共有しましょう。双方の認識のズレを防ぎ、次回の1 on 1の際に前回の内容を振り返る際の資料となります。部下自身にも議事録作成を促すことで、振り返りの習慣を身につけさせることができます。
1 on 1は定期的に実施することが最も重要です。推奨される頻度は週に1回から月に1回程度ですが、部下の状況や業務内容に合わせて調整しましょう。定期的な対話を通じて、部下との信頼関係を継続的に構築し、変化する状況に対応しながら部下の成長を長期的に支援していくことが、1 on 1の真の目的達成につながります。

1 on 1が本来の目的からズレてしまったり、有意義なものにならなかったりする課題と解決策を紹介します。
1 on 1は、その本来の目的である部下の成長支援や信頼関係構築を果たせず、単なる形式的な面談に陥ってしまうことがあります。
| 原因 | 具体的な状況 | 影響 |
|---|---|---|
| 目的の不明確さ | 上司も部下も何のために話しているのか理解していない | 時間の無駄と感じ、モチベーションが低下する |
| 準備不足 | アジェンダがなく、場当たり的な会話になる | 深い対話ができず、表面的な報告で終わる |
| 上司の一方的な話 | 上司が話すばかりで、部下の意見を聞かない | 部下が発言をためらい、心理的安全性が損なわれる |
| 業務報告の場化 | 進捗確認やタスク指示が中心になる | 部下の内省や成長につながらず、面談と区別がつかなくなる |
形骸化を防ぐためには、以下の点に継続的に意識を向けることが重要です。
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1 on 1の場で部下が口を開かず、沈黙が続くことは上司にとって悩ましい課題です。部下が話したがらない背景には、さまざまな要因が考えられます。
部下の本音を引き出し、有意義な対話にするためには、上司側からの積極的な働きかけが不可欠です。
1 on 1の成否は、上司の準備にかかっていると言っても過言ではありません。しかし、多忙な業務の中で十分な準備時間を確保できない上司も少なくありません。
上司が効果的な1 on 1を実施するためには、以下のような計画的な準備とスキルアップが鍵となります。

1 on 1の真の目的は、単なる業務報告の場ではなく、部下の自律的な成長を促し、強固な信頼関係を築き、隠れた課題を解決することにあります。これらの目的を達成することで、部下のモチベーションとパフォーマンスが向上し、結果として組織全体のエンゲージメント強化と生産性向上につながります。
効果的な1 on 1は、事前の準備から傾聴、適切なフィードバック、そして継続的な実践が不可欠です。形骸化させずに真の価値を引き出すことで、部下と組織の持続的な成長を加速させる強力なツールとなるでしょう。