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IT導入補助金を活用して生産性を向上しよう
IT導入補助金とは、業務プロセスの改善や効率化により生産性を向上させるために必要なソフトウェアやクラウドサービスの導入費用および、導入に必要なコンサルティングや保守サポート費用の一部を国が補助してくれるものです。
生産性向上のためにはITの導入が欠かせない一方で、ITを導入するためにはある程度の初期投資が必要となります。
最近では、企業向けのITもクラウドサービスが充実してきたため、以前に比べれば初期投資の額を抑えることが可能となっています。しかしながら、比較的資金繰りが厳しい中小企業や小規模事業者の方にとっては、初期投資はそれなりの負担感があるかと思います。
そこで、IT導入補助金を活用することで、その負担感を軽減する事が出来ます。
このIT導入補助金が、活用出来る内容をご説明していきます。
申請可能な事業者
IT導入補助金を申請出来るのは、中小企業、小規模事業者、個人事業主の方(以下「中小企業等」とします。)となります。
中小企業等の定義は、業種により異なっており、以下に該当する方となります。
業種分類 | 以下いずれかに該当する方 | |
---|---|---|
資本金(出資総額) | 従業員数 | |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100⼈以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
ゴム製品製造業(一部ゴム製品除く) | 3億円以下 | 900人以下 |
旅館業 | 5千万円以下 | 200人以下 |
その他の業種(ITサービス含) | 3億円以下 | 300人以下 |
医療法人、社会福祉法人、学校法人 | - | 300人以下 |
2019年版 中小企業白書によると、約99.7%の企業が中小企業等に該当します。
つまり、多くの企業がこの補助金に申請することが可能です。
ただし、中小企業等に該当していても、大企業の子会社となる場合または、補助金の目的から適切ではないと経済産業省が判断した場合などは、申請対象外となりますので注意が必要です。
補助を受けられる投資の範囲
補助が受けられる初期投資は、IT導入支援事業者(PCAさんなどの様に、ITツールの開発・販売をしている会社)が事務局に申請を行ったITツールの導入費用となります。
また、導入時に追加で必要となったオプション(追加ライセンスや、他のITツールとデータ連携する仕組みなど)および、導入に必要なサービス(導入コンサルティング、ITツールの使い方の研修費用、問い合わせサポートの費用など)費用も対象となります。
もう少し具体的に説明しますと、以下の①~⑧の内容の業務改善・効率化につながるもので、かつ①~⑩の2つ以上の組み合わせから成り立っているITツールが該当します。
- ①顧客対応・販売支援(顧客管理、見積書、請求書作成ツールなど)
- ②決済・債権債務・資金回収管理(POS(レジ本体の機器は対象外)、入金消込ツールなど)
- ③調達・供給・在庫・物流(部品表、棚卸資産、倉庫管理ツールなど)
- ④人材配置(シフト表、要員山積み表作成ツールなど)
- ⑤実行系の業務固有プロセス(工程計画(WBS)、棚割計画、営業報告作成ツールなど)
- ⑥支援系の業務固有プロセス(トレーサビリティ、人材スキル管理ツールなど)
- ⑦会計・財務・資産・経営(財務会計ソフト、予算作成ツールなど)
- ⑧総務・人事・給与・労務(備品管理、給与計算、勤怠管理ツールなど)
- ⑨自動化・分析(帳票作成(BI)、RPAツールなど)
- ⑩汎用(文書管理、営業資料のタブレット配信(ライブラリー)ツールなど)
また、オプションやサービスは以下の7つが対象となります。
A 機能拡張(見積書や帳票のテンプレート利用料、監視(死活、リソース)ソフトなど)
B データ連携ツール(会計ソフトのデータをBIツールと共用するためのツールなど)
C セキュリティ製品(不正アクセス検知・防止ソフトなど)
D ホームページ関連費(商品の特設ページ制作費、見込顧客へのメール配信機能など)
E 導入コンサルティング(導入計画策定、教育計画策定)
F 導入設定・マニュアル作成・導入研修(⑤のコンサル結果に基づくマスタ設定など)
G 保守サポート(トラブル対応、システム保守など※ただし、導入後1年分の費用のみ)
例えば、以下の様なケースでIT導入補助金を申請する事が可能となります。
- 例1:営業の効率化を目的とした、①顧客対応(顧客管理ツール)と⑩汎用(ライブラリーツール)の導入およびDのメール配信機能のオプションを追加
- 例2:電子帳簿保存法への対応(経理業務の改善)を目的とした、⑦会計(財務会計のクラウドサービス)と⑨自動化(帳票作成・出力機能)と⑩汎用(文書管理機能)の導入
補助を受けられる金額の範囲
2019年度のIT導入補助金は、A類型とB類型に分かれており、それぞれで補助額が異なります。
一方で共通している部分は、補助率が1/2以内という点になります。
分かりやすくするために、表にまとめましたので以下の表をご覧ください。
項目 | A類型 | B類型 |
---|---|---|
補助額 | 40万~150万円未満 | 150万~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
申請要件 | 上記の①~⑧を1つ以上含み、 上記の①~⑩を2つ以上含む ITツール |
上記の①~⑧を3つ以上含み、 上記の①~⑩を5つ以上含む ITツール |
効果報告 | 2020~2022年までの3回 | 2020~2024年までの5回 |
B類型の方が補助額は多いのですが、申請要件のハードルは高くなります。
そのため、B類型を活用される場合は、社内体制はもちろんのこと社外の支援者も含めた体制などの準備をそれなりに整える必要があります。
一方でA類型の方は申請要件のハードルは低いのですが、補助額は少なくなります。
そのため、業務の主担当者1~2名程度の小回りの利く体制に留めるのがお勧めです。
しかしながら、補助対象となる投資総額が80万円未満の場合、補助額の下限値を下回るため、補助金の申請が出来なくなる点には注意が必要となります。
スケジュール
IT導入補助金の申請~IT導入までのスケジュールは、以下の通りです。
申請までのスケジュールが短いため、段取り良く取り組みましょう。
まとめ
ITを導入して業務効率化を図りたいと考えてはいたが、初期投資が大きいため、一歩目が踏み出せない方も多かったと思います。
今回ご紹介したIT導入補助金は、その一歩目を踏み出す後押しをしてくれるものです。
補助金の申請期間が短く申請業務が複雑ではありますが、IT導入支援事業者や、中小企業診断士など専門家の支援を受けつつ検討・申請することをおすすめします。
筆者プロフィール
森本 晃弘(もりもと あきひろ)
M&Sアドバイザリー代表
中小企業診断士
新規事業企画、連結会計コンサルティングの知識・経験を活かした、事業シナジーを生み出す全社・グループ視点での経営戦略立案を得意としている。
中小企業診断士 森本 晃弘 氏 連載記事
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