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働き方改革のもう一つの方法! 取引先との納期調整

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ここ23年、働き方改革と言う言葉を聞かない日は無いぐらい、良く目にしたり聞いたりします。

働き方改革と聞いて連想することは、有給休暇の取得、残業時間を減らす、仕事の効率化、副業、と言った、自社または自身に関することではないでしょうか。

しかし、ここで忘れてはいけないのは、取引先との関係です。

「え? 働き方改革と取引先?」と疑問に思われた方も多いと思いますので、今回は「働き方改革につながる取引先との納期調整」というテーマで解説させていただきます。

働き方改革の大きな二つの方法

まず初めに、働き方改革には大きく二つの方法があります。

一つ目は、自社のみで出来る取組みです。

これは皆さんが良く、連想したり、ニュースで取り上げられたりする働き方改革です。

二つ目は、取引先と相談・調整しながら行う取組みです。

こちらについては、目にしたり、聞いたりする機会が余り多くは無いと思います。

自社で出来ること

こちらは、良く目にする内容だと思いますので、簡単なご説明に留めます。

まずは何と言ってもご自身に一番関連する、長時間労働の削減・抑制や有給休暇取得率の向上を目指した、業務効率化が挙げられます。

業務効率化の方法には、大きく以下の3つの方法があります。

  • 無くす :その仕事は本当に必要か?を考えて、業務の棚卸を行う
  • 早める :ご自身の能率アップ、機械の性能アップ、作業の順番を変える
  • 置換える:設備やRPAの導入を行い、機械化・自動化を行う


次に、柔軟な働き方の導入も挙げられます。

これは主に採用強化となりますが、以下の様な施策が挙げられます

  • 定年の廃止(高齢者の受入れ)
  • 外国人労働者の受入れ
  • 副業・兼業者の受入れ
  • 時短勤務の導入
  • 在宅勤務の導入
  • 育児・介護休暇の拡充(取得しやすい雰囲気の醸成)
  • 半日・時間単位での有給休暇取得制度の導入


最後は、法令対応となります。

  • 有給休暇5日以上の取得義務:
    10日以上有給休暇が付与された人は、5日以上の取得が必要となりました。
    企業への罰則付きで、中小企業も含めて2019年4月から導入が必要です。
  • 36協定の上限値設定:
    特別条項の上限値が年720時間、月100時間未満(ただし、複数月平均80時間以内)、月45時間を超えた残業は、年6回までとなりました。
    こちらも企業への罰則付きで、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から導入が必要となります。
  • 勤務間インターバル制度の導入:
    勤務終了から次の勤務までの間に一定時間以上の休息時間を、設けることが努力義務となりました。
    一定時間として、9~11時間を設定している企業が多く見受けられます。
    罰則はありませんが、中小企業も含めて2019年4月から導入が必要です。

取引先と納期を調整

ここからは、もう一つの働き方改革のご説明をします。

上記でご説明した「自社で出来ること」も働き方改革としては重要なのですが、納期や受注量に影響を受け実施出来ないものがあるというのが実態です。

つまり、自社単独での働き方改革のみでは、限界があります。

そこで、二つ目の働き方改革である、取引先との納期などの調整が必要となってきます。

こういうことをご説明すると、『お客さんに納期を延ばして欲しいなんて言えるわけ無いだろう!』とお叱りを受けるかもしれません。

しかし、お客さんと納期の調整をしましょうとご説明しているちゃんとした理由があります。

様々な企業が働き方改革を推進した結果、受注者になる事が多い中小企業等に無理な発注が行われる可能性があることを国は既に想定しています。

そこで、厚生労働省及び中小企業庁が、公正取引委員会などの関係機関と連携を図りながら、指導強化を行っていく方針を出していたり、法令改正を行っていたりします。

具体的には、以下の様な内容となります。

  • 下請代金支払遅延等防止法:
    納期と料金について十分な協議が行われていない短納期発注は、「買いたたき」などに該当するケースがあります。
    このような場合、公正取引委員会や中小企業庁からの立ち入り検査の対象になる可能性があります。
    そのため、無理な納期の場合は、何日納期を延ばして欲しいと交渉しましょう。
    納期を延ばせない場合、休日出勤や外部委託コストの増加などにより、通常よりも高い単価になる旨を説明しましょう。
    納期と金額を考慮した上で、両社の働き方改革が実現出来る落としどころがどこなのか、キッチリ両社で話し合いを行いましょう。
    なお、交渉の余地なく受け入れざるを得ないという場合は、中小企業庁、公正取引委員会、都道府県労働局雇用環境・均等部にご相談頂ければと思います。
    通報すると報復が怖いと思われるかもしれませんが、下請代金支払遅延等防止法では、「報復措置の禁止」も親事業者の禁止行為として定められていますのでご安心下さい。
  • 下請中小企業振興法:
    2018年12月に振興基準が改正され、以下の内容が明記されています。
    ①親事業者の取引に起因して、下請事業者が労働基準関連法令に違反することのないように配慮すること
    ②やむを得ず、短納期又は追加の発注、急な仕様変更などを行う場合には下請事業者が支払うこととなる増大コストを親事業者が負担すること
  • 労働時間等設定改善法:
      2019年4月より、以下の努力義務が必要です。
    ① 著しく短い期限の設定及び発注の内容の頻繁な変更を行わないこと
    ② 取引先の講ずる労働時間等の設定の改善に関する措置の円滑な実施を阻害することとなる取引条件を付けないこと
  • 労働時間等設定改善指針:
    こちらは2019年4月より、以下の内容が明記されています。
    「特に中小企業等において時間外・休日労働の削減に取り組むに当たっては、個々の事業主の努力だけでは限界があることから、長時間労働につながる取引慣行の見直しが必要である」
    なお、以下の内容は以前より、ガイドラインにて配慮する様に記載があります。
    ①週末発注・週初納入、就業後発注・翌朝納入等の短納期発注を抑制し、納期の適正化を図ること
    ②発注内容の頻繁な変更を抑制すること
    ③発注の平準化、発注内容の明確化その他の発注方法の改善を図ること

上記の4つの法令・指針の改善により、自社の働き方改革のみだけでは無く、取引先の働き方改革にも考慮・配慮する必要があります。

取引先への考慮や配慮を行わない会社には、公正取引委員会などが立ち入り調査を行いやすい環境が整いつつあります。

また、上場している大企業では、株価に大きな変動を及ぼすコンプライアンスにまつわる問題には非常に敏感なため、柔軟に対応してくれる会社が増えつつあります。

そのため、お客さんに相談することにより、意外と簡単に働き方改革を実現出来ることもあります。

まとめ

自社のみでの取組みや、一つの施策だけでは、働き方改革には限界があります。

そのため、「適正化」「平準化」「効率化」「分割化」といった複数の施策を組み合わせながら、働き方改革を推進なさることをお勧めします。

筆者プロフィール

森本 晃弘

  • M&Sアドバイザリー代表
  • 中小企業診断士
  • 新規事業企画、連結会計コンサルティングの知識・経験を活かした、事業シナジーを生み出す全社・グループ視点での経営戦略立案を得意としている。