更新日:2019/07/30
事業計画書とは、主に資金調達のために作る計画書です。
まれに、事業概要を可視化してメンバーと共有したり、新たなメンバーを集めたりするために作られたりすることもあります。
では、「事業計画書を作ってください」と言われたら、皆さんなら何を書きますか?
何をどんな順番で書けば良いか、意外に迷うと思います。
そこで、事業計画書に書くべき内容をご説明していきます。
結論から言えば、事業計画書に書くべき内容というのは、資金調達先ごとに変わります。
そのため、どんなことを書くべきか?は、資金調達先や事業計画書の提出先に事前に確認した方が、作成時間を短縮することが出来ます。
しかし、どの提出先でも求められる5つの内容があります。
それは、「動機」「事業内容」「事業環境」「事業戦略」「財務計画」の5つです。
それぞれの内容について、少し具体的にご説明します。
動機は、現在考えている事業に取り組みたい背景や目的を書きます。
例えば、以下の質問への答えが動機になっていることもあります。
また、自然環境を守りたい、性別や年齢による格差を解消したい(不公平を無くしたい)など、信念や情熱なども動機となります。
動機を磨き上げていくことで、経営理念やビジョンへと変化していくこともあります。
事業内容は、どんな製品またはサービスなのかを出来るだけ具体的に書きます。
また、それによって何が解決出来るのかも具体的に書きます。
さらに、事業計画書に記載する必要は無いですが、事業内容(製品、サービスと解決出来ること)が動機を紐づいているかも確認しましょう。
例えば、以下の様なイメージとなります。
提供する製品 | もっちりサクサクした食感が味わえるトースター |
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解決出来ること | 焼いたパンがパサパサせず、もっちり感を味わえるようになる 子供がパンくずをこぼすことが無くなる |
動機との関連 | 両方の食感を楽しみたい(不満の解消)および 片付けの手間を減らす(不便の解消) |
提供するサービス | 本記事(事業計画書とは? 書くべき5つの内容) |
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解決出来ること | 事業計画書に書くべき内容が分かる、早くモレ無く書けるようになる |
動機との関連 | 分からないことを減らしたい(不安の解消)および 事業推進に集中出来る状態にしたい(不満・不足の解消) |
事業環境は、その事業のドメイン(製品やサービスを展開する主戦場)を明確にした上で、自社やご自身の強み・弱みを競合と比較しながら書きます。
競合がいないブルーオーシャンやファーストペンギンの製品やサービスの場合は、何故今までその製品やサービスが存在していなかったのか、書きます。
また、今後、競合として参入してきそうな会社を想定して、強み・弱みを書いていきます。
例えば、以下の様なイメージとなります。
提供する製品 | もっちりサクサクした食感が味わえるトースター |
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ドメイン | トースター市場または白物家電市場 |
競合 | トースターを販売している大手家電メーカー |
自社 | 創業から30年間、大手メーカーのモノづくりを担ってきた下請企業 |
自社の強み | 下請け企業として長年培ってきた、熱と蒸気に関する技術力 |
自社の弱み | 市場からの認知度、開発資金 |
提供するサービス | ライドシェア(自家用車への有償相乗り) |
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ドメイン | タクシー市場または輸送サービス市場 |
無かった理由 | いわゆる白タク(無許可タクシー業)であり、違法だから |
検討している理由 | 白タクの解禁が検討されているから |
想定される競合 | タクシー会社、バス会社、日常的に良く運転する人 |
自社 | 特定地域で10数店舗を展開している不動産仲介会社 |
自社の強み | 営業社員が移動用に利用している乗用車が十数台ある(準備が不要) 営業社員の移動の合間にサービスを提供することが出来る |
自社の弱み | 自社が管理している不動産がある地域以外には移動しない 隙間時間を利用したサービスのため、定期的なサービスが難しい |
事業戦略は、誰が主な顧客なのかを明確にした上で、どの様な価値が提供出来るのか、誰からいくら貰うのか、どの様に販売・展開していくのかを書きます。
例えば、以下の様なイメージとなります。
提供する製品 | もっちりサクサクした食感が味わえるトースター |
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主な顧客 | パンくずをこぼす子供 |
提供出来る価値 | パンを食べた後の片付けの手間を無くす パン(主に食パン)市場の拡大(パンの消費枚数を増やす) |
製品の購入者 | 小さな子供を持つ親、製パンメーカー(最終的に一般消費者になります) |
販売価格 | ・小さな子供を持つ親向けの場合 高価格少量販売なら、1~3万円程度 低価格大量販売なら、2~4千円程度 ・製パンメーカー向けの場合 トースターとコラボした専用パンとセットで4~5千円 ※実際は製パンメーカーと協議して決まっていきます |
販売・展開方法 | 高価格の場合、自社のWebサイトや百貨店での店頭販売 低価格の場合、家電量販店での店頭販売 製パンメーカー向けの場合、製パンメーカーを経由して食品スーパーでの店頭販売 |
さらに、必要に応じて、どの様にトースターの開発や量産化を行っていくのかという製造面での戦略も書きます。
また、提供するものがサービスの場合も、上記と同様に書いていきます。
財務計画(収支計画と呼ばれることもあります。また、狭義の事業計画書では、財務計画だけを意味していることもあります。)は、事業戦略を実行した結果、いくらの売上が見込めるのか、どの程度の原価が発生するのか、売上見込みを達成するためにどの程度の販売費(送料や広告宣伝費など)が必要となるのかを数値化して書きます。
また、借入による資金調達を検討している場合は、支払う利息がどの程度になるのかも書きます。
どのレベルまで細かく記載する必要があるかは、提出先により変わってきますが、少なくとも以下のレベルでは書く必要があります。
昨今、「事業計画を書いて」「事業計画を見せて」と言われる機会が増えてきた気がします。
しかし、ご説明した内容を書くためには、作成するための時間と幅広い知識が必要となります。
そこで、強みや知識が異なるメンバーと分担したり、外部の専門家(事業については中小企業診断士、財務については会計士など)を上手く活用したりしながら計画をまとめて頂ければと思います。
その時、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
M&Sアドバイザリー代表。
中小企業診断士。
新規事業企画、連結会計コンサルティングの知識・経験を活かした、事業シナジーを生み出す全社・グループ視点での経営戦略立案を得意としている。