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経理をやれば、良いお金の使い方がマスターできる だから私は経理を選ぶ 第10回
会社と個人の資金運用の原理は同じ
先日、「『稼ぐ、儲かる、貯まる』超基本」(PHP研究所)という本を発売しました。
これは、もし自分自身を「会社」とみなしたら、どのようにすれば「利益が残る」、つまりお金が貯まるのかな、それを経理のテクニックや思考法を使って実践できないかな、という発想から企画しました。
会社がお金を貯めるには、売上を増やしながら経費節減も行い、そして余った利益の一部を人やモノに再投資をすることで規模が大きくなり、さらに売上を得る機会も増え、お金も貯まる確率が上がります。個人のお金についても同じで、稼いだお金を節約しながら自分や自分以外のものに再投資をしていくと、自分自身が成長し、それにしたがってより稼ぐことができ、お金も貯まるのではないかと思います。
お金が貯まる4原則
そこで、個人のお金の貯め方を「会社で稼ぐ」「個人で稼ぐ」「投資による利益」「節約」の4カテゴリに分けました。
- 「会社で稼ぐ」…会社員として稼ぐ。自分で金額を決めることはできませんが、長期間、固定した金額が毎月収入として得られます。行動などはフリーランスよりも制約されますが、病気などになっても、保障してもらえる制度が充実しています。
- 「個人で稼ぐ」…(1)フリーランスとして稼ぐ。自分で値付は決められますが、収入の保障はありません。会社員よりも爆発的に稼げる可能性もありますが、反対に、全く収入がない場合もあります。会社員より制約なく自由に活動ができますが、反面、病気になったときなど、自ら稼働できない時は収入が0になる可能性もあります。(2)会社員の副業として稼ぐ。活動範囲は限られますが、本業の収入があるので気軽に好きなことから始めることができます。今の仕事環境、今の職種以外の経験もしてみたいという方にも向いています。
- 「投資による利益」…(1)自分に投資する。簿記、TOEIC、MBAなど、資格を取得したり、知見を向上させたりすることにお金を使います。自分自身の価値を高めることで、より高い評価を受けやすくし、報酬を増やす機会を作ります。(2)自分以外に投資をする。株式などの金融商品や、企業などに出資をするなどして、配当による収入機会を作ります。自分が病気などになった時に、定期的に配当などの収入を得られる機会を作ることができる可能性がありますが、反面、損失のリスクもあります。
- 「節約」…他の3つは「自分で給与金額を決められない」「仕事の受注があるかわからない」「株価やレートの変動を自分ではコントロールできない」など、それぞれ不確実性の高い要素がありますが、節約だけは、全てを自分でコントロールすることができます。そのため、計画立ててお金を貯めることができます。その反面、自分の意思が弱いとできません。
このように分類すると、今現在自分が行っているお金の管理方法は正しいのか、それとも課題があるのか、そして、何が得意で何が不得意なのかということもわかると思います。
目的に応じて投資先を選択する
たとえば、投資に関してただ漠然と「何か資格でも取ろうかなあ」「何か儲かりそうな株式銘柄ないかな」などと考えるよりも、もっと具体的、戦略的に考えて何に投資をするかを考えた上で投資をしたほうがその効果は大きいはずです。
会社員として、より多くの給与を得たい願望があれば、持っていれば職場から高く評価される資格の取得、昇給や昇進、海外赴任などのチャンスを得られるようなスキルのアップを目指して、その勉強費用を自分自身に投資したほうがいいでしょう。また、会社での給与や待遇は今のままで十分、あるいはこれ以上は会社の経営上期待できない、という場合は、副業や独立に役立つ資格や勉強に投資をしたほうがいいでしょう。今現在副業が禁止の会社でも、資格の勉強そのものは問題がないはずです。一方で、自分がいつまでも健康でいられる保障はないので、万全に働けない状態の時でも生活費の足しになるくらいの配当や資金源を確保しておきたい、という人は、自分以外への投資を選択すると良いでしょう。国債や株式などの配当があるものへの投資もあれば、老後に賃貸の入居を断られるリスクなども考えてマイホームを購入して住居は確保するという投資の仕方もあります。
良い会社は「ノリ」で投資をしない
会社経営でも、残った利益を何に再投資をするのかということは重要です。ある会社は設備投資をして、さらに売上を伸ばせる体制にします。またある会社は、優秀な人材を採用して、同様に売上を伸ばせる体制にします。また別の会社は、金融商品を購入して資産運用をし、配当を得ることで少しでも手持ちの資金が増える方法を選択するかもしれません。
どの場合も、多くの会社は「ノリ」で決めることなく、手持ちの資金をどのように使うことが最も自社にとってプラスになるのかということを考えた末に、結論を出します。稀に「ノリ」でリスクの高い金融商品を購入する会社もあるでしょうが、そのようなケースの多くは損失を出して失敗をします。そもそも金融商品は投資の中でも「損失リスク」がある投資ですので、リスクの高い商品であればあるほど、投資する前に慎重に考える性質のものであり、「買ってから考えればいい」という発想では、それが利益化する確率は限りなく少なくなります。経理の皆さんの中にも、自分の勤めていた会社が、ノリで金融商品に手を出して帳簿上の有価証券などの科目明細に、長期間塩漬け状態になっているのを見かけた経験がある方もいらっしゃることでしょう。
川の流れのようにお金の流れを見る
経理の仕事をしながら会社のお金の流れを日々見ていると、「ノリ」や「なんとなく」お金を使っていると、結果的に無駄遣いになっていることが非常に多いことに気付かされます。反対に、目的を持った使い方や投資をしているのを見ると、またそれが資金源や売上の種になっていることもわかります。経理の仕事はお金の流れを川の流れのように見続けることで、それが最終的にどこへ向かっていくのか、どうなっていくのかがわかるようになります。自分自身のお金の使い方も同じ目線で考えられるようになり、無駄のない使い方、プラスになる投資の仕方が習慣づいてできるようになります。
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筆者プロフィール
前田 康二郎(まえだ こうじろう)
流創株式会社代表取締役。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。
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※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。