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経理は性差・体力差・年齢差の影響が少ない だから私は経理を選ぶ 第7回
何を基準に仕事を選ぶか
以前、スポーツ選手をマネジメントする会社に勤めていた際に、所属していたプロゴルファーのインタビュー記事を読んだことがあります。なぜその人が数あるスポーツの中からゴルフを選んだかという質問に、「ゴルフは長期間現役で活躍できるスポーツだからということも理由の一つです」と答えていました。
プロアスリートとして40代、50代でも活躍している人はいらっしゃいますが、多くのアスリートは20代などでのうちに結果が出なかった場合に引退し、セカンドキャリアを模索する道を選びます。コーチやインストラクターなど、引き続きそのスポーツに関わりながら仕事をしていく人もいれば、全く未経験の営業などに転職をする方もいます。また、それまで稼いだ自分の貯金で独立をする方もいます。いずれにしても、今までの生活とは一変しますので、それに慣れないという方も多いようです。そのため、生涯スポーツとしてできるものを選択するという判断もあるのだと思います。私たちの中にも、自分の仕事を「かっこいいから」「おしゃれなイメージがあるから」という刹那的、直感的に選ぶ人もいれば、「つぶしが利くから」「安定しているから」という現実的な生活設計を考えて選ぶ人もいることでしょう。
皆さんはどちら派でしょうか。
意外と多い性差・体力差・年齢差のある仕事
これまでの日本の組織においては、女性に比べて男性優位、つまりいろいろな業界で男性中心、あるいは男性が組織のトップにいるということが多いですが、それは実質的に「体力差」という点にあると思います。たとえば営業であれば、営業をすればするほど売上が上がるのであれば、体力がない人より体力のある人の方が有利です。また、料理人など職人的な仕事も、練習すればするほど上達するのであれば、体力がないよりあったほうが有利になります。
また、研究職などのような仕事も、何百何千という実験を繰り返して、それでも何も発見できないということがざらの仕事でしたらやはり体力も重要になります。建設業や宅配の仕事など、そもそも重たいものを運ばなければいけない仕事であればなおさらです。仕事には女性より男性、体力のない男性より体力のある男性のほうが物理的に有利、という仕事が実際には数多くあります。
そして体力差が影響する仕事ということは、性差だけでなく、年齢差も影響をしてくるということです。
年齢を重ねれば重ねるほど経験値や人脈などは培われていくので、組織の要職に就くことはできますが、実際の「腕」というのは、多くの人は年齢の衰えとともに鈍っていきます。中には高齢でもバリバリ現役の方もいらっしゃいますが、多くの場合は、加齢とともに、自分の思うようなスピードや正確性で仕事ができなくなってきていると実感することのほうが多いのではないかと思います。
経理は「生涯職種」になりやすい
では「経理」はどうなのかというと、そうした体力差の影響を最も受けにくい職種の一つではないかと思います。その証拠に、経理の女性比率は他の職種よりも高いですし、かつ年齢が高い方達でも現役で活躍している方達がたくさんいます。
その「事実」が、経理と言う仕事が、体力差の影響を受けにくい、つまり「生涯職種」にしやすい理由の一つです。スキルを維持するために、ストイックに毎日何時間も計算練習などをしなくても、普通に業務範囲の中で真面目に仕事に取り組んでいれば、そのスキルが劣化することは少ないということです。
以前、ある会社で70歳代80歳代でも未だ現役の経理社員の方に実際にお会いした時も、最初は驚きましたが、業務の込み入った話をしていくうちに、いつの間にか私も相手の方達の年齢のことなど忘れてしまい、どうやったら今の課題を解決できるだろうか、と、同僚のように熱い会議になっていました。他の職種であれば、世代が違うと「その用語は何?」「その今言った会社はどんな会社?」など、コミュニケーション時に噛み合わないことが出てくることもあるでしょうが、経理の場合は、経理そのものが原則や本質が固定化されているので、20代と80代が経理の話をしても、業務内容の理解が噛み合わないとうことはまずありません。経理ももちろん用語や法律が変わっている部分はそれなりにありますが、「本質的な部分や業務上の常識」は変わりませんので、経理関係の用語の改訂や法律の改正などがあったとしても、その部分を都度キャッチアップしておけば、70代、80代になっても、健康でさえあれば十分「現役バリバリの戦力」でいられるのです。
経理は、自分とは違う属性の人達とも円満に仕事がしやすい職種
業務の本質な部分が変わらないということは、「そのやり方は古いです」などといった、世代間のギャップも少なく済むということです。他の職種ではこのような世代間ギャップの発生しやすい職種も多いでしょうが、経理に関しては、そうしたいさかいも他の職種に比べて発生しにくいと思います。言い換えれば「自分とは違う属性」の人達とも、「経理」という長らく変わらない固定の価値観やルールの下で働くことで、協調してうまくやっていきやすい環境ということです。「生涯職種」を模索している人は、経理もその選択肢の一つとして候補に入れておくのも良いと思います。
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筆者プロフィール
前田 康二郎(まえだ こうじろう)
流創株式会社代表取締役。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。
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※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。