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経理はいい意味で極度なプレッシャーが少ない だから私は経理を選ぶ 第6回
従来のワークスタイルは2020年のコロナ禍で大きな変革がありました。
在宅勤務などのテレワークや、間引き出社などといった新しい働き方をすることになった人も多くいる現状で、経理という仕事を行っていくことの多くのメリットを「フリーランスの経理部長」として、コンサルティング業務を行う前田 康二郎氏が解説していく「だから私は経理を選ぶ」シリーズ第6回目は「経理はいい意味で極度なプレッシャーが少ない」点にフォーカスを当ててまいります
派手な仕事はその分プレッシャーもかかる
私が会社員時代に経理業務をしていた時のもやもやしていたことの一つは、「いくら頑張っても、反対にそれほど頑張らなくても、評価があまり変わらない」ということでした。
たとえば営業のように成績に応じて報奨金などをもらえる制度などは経理にはありませんし、社長などから「今月はよく頑張ったね!」などという声掛けもない仕事です。人に褒めてもらいたくて仕事をしているわけでもないですし、報奨金目当てで仕事をしているわけでもありませんから、別にいいかと思いつつも、社長と営業社員とのそうしたやりとりを見ているとやはり「いいなあ」とは思いました。
でも独立をして、いろいろな業界、会社、職種の方達と交流が増えていくにつれて、考えが少し変わりました。世の中には自分が知らなかったいろいろな環境で働く人達がいて、プレッシャーが尋常でない仕事や、失敗したら全て0になってしまうような仕事もたくさんあるのだということがわかりました。
そして年齢を重ねていったことも関係しています。若い時は体力もありますし、自分のことだけを考えていればよい面もあるので「自分はもっとやる気があるのに、どうして活躍の場が限られているのだろう」とフラストレーションが溜まることが多かったのですが、年齢を重ねてくると、「もし急に親の介護が始まったら、今の仕事と両立できるかな…」とか、自分以外のことも考えなければいけないことも増えてきます。そして自分自身も若い時に比べたら体力や集中力も徐々に落ち始めるので「期待されるほどの結果を出せるだろうか」「結果を出せなかったら様々な方面にご迷惑をかける」といったことも考える機会が増えました。
「その人の頑張り=結果」にならない仕事はプレッシャーが付きまとう
たとえばクリエイティブな仕事をされている人であれば、常に「今までにない」「今まで以上」の結果を求められますから、時代やニーズに応えられているかなど神経をすりへらすことも多い仕事です。自分では会心の出来だと思ったのに、世間的な評価が今一歩だった時には「あの人はニーズをとらえていない」「もうあの人の時代は終わった」など心無いことを言われるリスクもあります。
私も執筆の仕事をしていますが、執筆の他にいくつか収入源がまだあるので「もし執筆のニーズがなくなったら、自分はそこまでの実力なんだから仕方ない」と割り切れますが、これが執筆一本だけで食べて行かなければいけない状態であれば、寝ても覚めても「もし世の中から受け入れられなくなったら」「もし次の依頼がなくなったらどうやって生活していったらいいのだろう」と、疲弊しているかもしれません。
また、営業の仕事だったらどうでしょうか。
毎月定められた予算目標があると、月初めに早々にノルマを達成できた人はいいでしょうが、そうでない人は、中旬、下旬になるにつれて毎日「ああどうしよう」「あと10日、あと5日…」と、寝る前や朝起きる度に考え、気が重い人もいることでしょう。
それでも営業は原則「対面」の仕事ですから、直接でもリモートでも、お客様の前で暗い顔もできません。いつも明るく元気よく心掛けていないと、売れるものも余計に売れなくなってしまいます。
クリエイティブな仕事も営業も共通しているのは、自分が頑張っても評価や結果がその通りついてくるかどうかはわからないということです。いくらセンスを磨いていても顧客に否定されれば結果として認められないことになりますし、たくさんの顧客先をまわって丁寧に商品説明をしても、買ってもらえなければ、何もしなかったのと同じ結果になってしまいます。自分が頑張っても結果が出ない時には、「この仕事自体が自分に向いていないのではないか」とまで思い悩むことでしょう。プレッシャーがかかる職種です。
経理は頑張った分に比例して必ず結果、成果につながる
その点、経理の仕事は、そのようなことはありません。順を追って仕事をしていけば必ず最後までたどり着けますので頑張ればそのまま結果が出ます。
だから「経理よりももっと目立つ派手な職種もいいなあ」「経理よりももっと自分にふさわしい仕事があるんじゃないか」と思うことはあっても、「自分は経理という仕事に実力的に向いていないんじゃないか」と、自己否定に走ってしまう機会はあまりありません。もし課題があったとしても、それは勉強や反復をすれば必ずできるようになります。できるようになれば自信につながるので、仕事をすればするほど自信が持てるようになります。ただし、「自分は数字がわかっているから何でもわかっている」というように、過信にならないように気をつけなければいけない側面はあります。
先日、あるコンテストで世界一になった方が、もともと極度の上がり症で、それを克服するのに何年もかかって苦労をしたという話をされていました。普段は問題なくできるのに、いざたくさんの審査員の前で披露するとなった途端に緊張し、頭が真っ白になりパニックになってしまうのだそうです。仕事には、そのように常に皆に見られる中で最高のパフォーマンスをしなければいけない仕事もあれば、誰も見ていないところで黙々とする仕事もあります。
でもどちらも「仕事」です。そのように考えると、プレッシャーのかかるような状況が常時ある環境が性格上苦手な人や、人目に触れず黙々と集中して作業をすることが好きな人は、経理という仕事であれば、そうしたプレッシャーにとらわれることなく、伸び伸びとスキルを身に着け活躍することができると思います。
自分の力が有り余って仕方がない時は「リスクを負ってもいいから、思い切りチャレンジして成功を得られる仕事がしたい」と思っていましたが、人生はずっとそんな状態ばかりではないのも確かです。「極度なプレッシャーがかからない仕事環境は、継続的に長く仕事が続けられる実はとてもありがたい環境だったんだな」と今になって思います。じっくり自分のペースで極度なストレスやプレッシャーを感じることなくスキルを積めたのも経理という仕事がベースにあったからかもしれません。
自分のライフプラン、ライフステージに合わせた職種選びも「あり」
職種には、クリエイティブ系や営業など、人目につきやすい仕事から、経理などの裏方的な仕事まで、さまざまあります。自分のライフプラン、ライフステージに合わせて職種を衣替えしていってもいいかもしれませんね。
「だから私は経理を選ぶ」シリーズ
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- 第4回 経理は一度身に着いたスキルが劣化しにくい
- 経理は簿記の概念が変わらない限り、これからもスキルのベースとして役立ちます。80代、70代でも20代、30代と変わらずできる理由を詳しく解説していきます。
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- 第5回 経理にはスランプがない
- 経理の仕事というのは、人間の感情が悪影響を及ぼさない、数少ない、一生の仕事にしやすい職種の一つである理由を詳しく解説していきます。
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- 第7回 経理は性差・体力差・年齢差の影響が少ない
- 女性比率は他の職種よりも高く、かつ年齢が高い方達でも現役で活躍している方達がたくさんいる経理という仕事を解説していきます。
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- 第8回 経理は気疲れしにくい仕事
- 「ヒトに振り回される」ということが他の職種に比べて少ない、社内の対人関係で悩むということはあまりない経理という仕事を解説していきます。
筆者プロフィール
前田 康二郎(まえだ こうじろう)
流創株式会社代表取締役。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。
前田 康二郎 氏 連載記事
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- 経営者が信頼するバックオフィスの仕事の習慣
- 「ちょっとした仕事への取り組み方の違い」をポイントに、経営者が安心して信頼するバックオフィスの社員には、どのような特長や習慣があるかを解説
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- フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室
- さまざまな会社を見てきた「フリーランスの経理部長」が、日常的によくある経理社員のお悩みについて相談を解決
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- だから私は経理を選ぶ
- 「経理という仕事を選んで正解!なぜなら…」という経理の「トクトクポイント」をニッチなところまで解説
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- AIやITで、経理は本当になくなるのか?~共存する人とAIとIT~
- AIをはじめとした IT技術でできる経理業務とできない業務の具体的な境界線、また、100%IT、100%人間、ではなく、「共存」が実務上重要であるという内容を解説
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- 数字の良い会社には「敬意」がある
- 財務情報を専門的に取り扱う「経理」が非財務情報の正しい理解をしておくことで、敬意のある行為が良い非財務情報を形成し、それが良い財務情報として連動し数値化されることを理論的に説明できます。
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- 社長と経理が共有すべき経理とお金のキホン
- 社長と経理が共有しておくべき経理やお金の基本概念などについて分かりやすくお伝えします。
※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。