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経理は一度身に着いたスキルが劣化しにくい だから私は経理を選ぶ 第4回

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従来のワークスタイルは2020年のコロナ禍で大きな変革がありました。

在宅勤務などのテレワークや、間引き出社などといった新しい働き方をすることになった人も多くいる現状で、経理という仕事を行っていくことの多くのメリットを「フリーランスの経理部長」として、コンサルティング業務を行う前田 康二郎氏が解説していく「だから私は経理を選ぶ」シリーズ第4回目は「経理は一度身に着いたスキルが劣化しにくい」点にフォーカスを当ててまいります。

デジタルツールを使いこなす80代の経理社員

先日、ある会社からコンサルのご依頼がありました。その会社では、総務経理は80代と70代の社員の方が行っており、今後のことも考えて業務改善をしていきたいということでした。

以前、別の会社で60代の経理社員がいらっしゃる会社で、パソコンが苦手な社員の方が多く、手書きの証憑がたくさんある現場がありましたので今回もそのつもりで伺ったのですが、いい意味で裏切られました。

給与計算ソフト、会計ソフトも新しいものが導入されており、請求書発行などもその会社のためにカスタマイズされたソフトウェアが導入されていました。そして振込もWEB振込でされていました。

実際に80代と70代の社員の方々に業務フローをヒアリングさせて頂き、入力している状況をも拝見しましたが、実にスムーズに作業をされておられました。何より驚いたのは、結果的に手作業的なものが、ほとんどなかったということです。つまり総務と経理に関しては改善するところが何もなかったのです。

それではなぜ私に会社から依頼があったのかというと、そのお二人以外の方達が総務経理の実務にノータッチなので、第三者に一度診断してもらっておきたかったということでした。

幸い、その会社では新しく若い社員の方が総務経理として入社される予定とのことでしたので、その方に一部作業を引継ぎをして分担し、80代と70代の社員の方の仕事の負荷を減らしていただければ特に問題ないですよ、と申しあげたところ、皆さんほっとしておられました。

最初にこのご依頼の話を伺った時には、失礼ながら70代、80代まで現役社員がいる職場というのはどのような職場なのだろうと想像が難しかったのですが、実はこれは将来の日本のスタンダードの姿になっていくと、国も考えているようです。


70歳までは普通に働く時代が来ている

2021年4月から70歳就業法(改正高年齢者雇用安定法)が施行されました。
これまでは、企業の「義務」として以下のいずれかの方法で65歳まで雇用する、という定めでした。

  1. 定年を65歳まで延長
  2. 定年廃止
  3. 再雇用する(65歳まで)

そして今回、2021年4月以降は、これに加えて企業の「努力義務」として以下のいずれかの方法で70歳まで雇用する、ということが定められました。

  1. 定年を70歳に延長
  2. 定年廃止
  3. 再雇用する(70歳まで)
  4. 他企業への再就職を支援
  5. フリーランスとして業務の委託
  6. 起業した人との業務委託
  7. 社会貢献活動への従事支援

併せて老齢年金の受給年齢の繰り下げも、現行は70歳までですが、令和2年年金改正法により、2022年4月より75歳まで繰り下げ受給できるようになります。

つまり今後は、人生100年時代を見据えて、ずっと現役で働きたい人は、少なくとも70歳までは普通に働ける時代が来るということです。ただ、制度は整っていても、体力などがついていけるのだろうかと思っていました。そのような時に、まさに経理の仕事をされている80代、70代の方々と会う機会を得て、「やはり経理は良い仕事だな」と感じたのです。


経理は身に着いたスキルが劣化しない

80代、70代でも20代、30代と変わらずできる職種とはどのような仕事でしょうか。それには二つ条件が必要だと思います。それは

1.体力的に負荷がかからない労働環境

2.20代、30代で学んだスキルが劣化しない仕事

この二点がポイントです。現在の経理業務にはこの両方の条件が備わっています。

1. 体力的に負荷がかからない労働環境

会計ソフトの進化がもたらした大きな影響が二つあります。

一つは、簿記を知らない初心者レベルでも、ある程度の経理処理が会計ソフトでできるようになったということです。これは経理に限らず他の職種にも言えることで、職種間のボーダーレス化がソフトウェアの進化によりかなり進みました。経理未経験者も経理へ転身しやすい理由の一つになっています。

もう一つは、体力的な負荷が減ったという点です。昔のように手書き、手計算の業務だったら老眼や腱鞘炎など、とても高齢になったら続けることが難しかったと思います。しかしデジタル化によって、経理はチェック業務が仕事の主体になりつつあります。体力差のハンデも少なく、ソフトウェアの操作方法さえわかれば若い世代とそん色なく作業はできます。自宅でもできるソフトウェアの環境が整っていればなおさらです。


2.20代、30代で学んだスキルが劣化しない仕事

そして最も大きいのがこの「学んだスキルがいつまでも劣化しない」という点です。

経理は簿記の概念が変わらない限り、これからもスキルのベースとして役立ちます。法改正などはあるでしょうが、仕事の基礎知識の8割方が変わらないというのは非常に大きいです。これが常にトレンドを追わなければいけない職種だとしたら、毎日さまざまなところに顔を出し、文献も読み、知識やテクニックをインプットしなければいけません。それは年齢を重ねれば重ねるほど負担になってきます。また、営業などの体力勝負の仕事も同様です。接待などでも若い時に比べて食べたり飲んだりできる量は減っていくことでしょう。仕事そのもののアプローチの仕方に変化を持たせていかないといけません。

その点経理は、若い時の仕事のスタイルと何ら変えることなく70歳、80歳まで続けることができます。理論上はそうであることはわかっていましたが、現実的にはどうだろうと思っていましたが、実際にそうした年齢で働いている方達とお会いして、これは事実だということがよくわかりました。


数字は脳を活性化し、同時に身を助ける

80代、70代のお元気な経理の先輩方とお会いして、数字に日頃から触れているということは脳の活性化にとても良いのではないかと改めて思います。何歳になっても、数字が読めるということは自分の身を助けるのです。

筆者プロフィール

前田 康二郎(まえだ こうじろう)

流創株式会社代表取締役。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。

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