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フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室 第10回「新システム導入で、前の方が良かったという人への対応は?」
経理担当者の今回のお悩み
Q:リモートで経理関連の申請ができるソフトウェアを導入したのですが、毎月同じ人達から「申請の仕方を忘れてしまった」、「面倒だから代わりにやってくれない?」、「昔のエクセルのほうが楽だった」などと愚痴を言われます。解決する方法はありますか。
フリーランスの経理部長からの回答
もう以前の環境に戻ることは難しいことを共有する
よくコロナに関連して、「もうコロナ以前には戻れない」と言われることがありますが、そのような感想を持たれた方は、きっとこれまで「安全」、「安心」、「安定的」な環境にいらっしゃったのではないかと思います。
私のようなフリーランスであれば、これまでも、そしてこれからも、自分の仕事がいつどうなるかなどわからない不安定な環境ですので、コロナに関しても「リスクマネジメントすべきことの一つ」に過ぎないというのが正直なところです。ただし、社内への社員教育、業務指導には、この「もうコロナ以前には戻れませんよ」というフレーズは、キャッチーではないかと思います。
特に現場系出身の社長さんの会社に多いのですが、たとえば経費精算そのものを、本人ではなく、デスク担当、営業事務、経理などにさせている会社というのが結構あります。私は原則本人が申請したほうがいいという考えですが、会社の経営方針もありますので、「その代わりに、とにかく1円でも営業には数字を上げてもらう」「細かい事務処理のせいで自分の仕事ができない、と現場社員に言い訳させないために」そのようにしているという会社はそれでもいいと思います。
しかし今回のコロナのような状況になると、出社制限をして密を避けなければいけないということもあり、前述のような、経費精算や請求書の処理の代行などは物理的にできにくい環境になりました。
自分のことは自分でやったほうが早い環境になったとも言えます。コロナ以降、リモートでも対応できる経理のソフトウェア環境を整えた会社も多いでしょうし、そうでなくても、経理担当者から「領収書などを自分でPDF化して私宛にデータで送ってください」などと言われて、自分で初めて事務作業をする、という現場の方達もいるかもしれません。
すぐそばにいる人に声をかけて甘えられる環境ではなくなった人達が、「面倒くさい」「前のほうがよかった」と愚痴を言い始めた際に、「私もなんとかしてあげたいですけど、もうコロナ以前には戻れないですからね…お互い頑張りましょう…」としんみりお伝えすることで、経理への愚痴をやり過ごすことができます。
申請自体を忘れる人への対応
とはいえ、愚痴はやり過ごせても、毎回申請を間違える人、やり方を忘れる人、申請自体を忘れる人などは、社員教育や業務指導の対応をしなければいけません。このようなミスなどを減らす施策として効果的なものを、私の経験から2つ、お伝えしたいと思います。
- その人だけの「申請画面のスクリーンショット付き」の申請マニュアルを作る
- ソフトウェア内の便利機能(複写機能、検索機能、コピー&ペーストできる箇所など)を伝える
1. その人だけの「申請画面のスクリーンショット付き」の申請マニュアルを作る
多くの会社員は、社内の新しいソフトウェアの使い方に関して、一度担当者から説明を受ければ、あとは自分でヘルプ画面を見ながらなんとかやってみる、ということが多いと思います。しかしどの会社でも1割2割の方達は、そういったことを面倒がります。また、ソフトウェアに搭載されているデジタルマニュアルやヘルプ機能は、全ての機能を網羅しているので、「いったいどこに自分の知りたいマニュアルがあるのか」と、検索して見つけるだけでもストレスが溜まる人もいます。
私がそのようなシチュエーションに立った場合は、たとえば経費精算であれば
A.販管費を使う人の経費精算マニュアル
B.原価を使う人の経費精算マニュアル
の2種類を、自分でデモンストレーション用に申請をしたものをスクリーンショットして、文字の説明と共に、Wordなどにペーストしてマニュアルを作成します。
面倒といえば面倒なのですが、人間というのは、「余計な情報」があると、そこが気になって肝心な情報が見つけられない、ということがあります。たとえば販管費の旅費交通費のコードが621で、原価の旅費交通費のコードが521だったとすると、原価に所属する社員が、「間違って621のコードを何度も打ち込んでしまう」「何で旅費交通費のコードが二つあるんですか、と質問をしてくるなど、余計な情報があることによって、ミスや混乱してしまうことがあるのです。
販管費しか使わない部署には販管費の事例入力、原価しか使わない部署には原価の事例入力だけのマニュアルを作成したほうが、余計な情報がないのでそのマニュアルを元に申請をすればすんなり処理ができます。それでも「申請が苦手、面倒」という方達に関しては、少し甘いと言われるかもしれませんが、自分で作成したマニュアル事例を、その人だけのものにカスタマイズしてあげます。
山田太郎さんであれば「山田太郎」名で代理ログインできればそうして、実際にその人が過去申請した内容、いつも申請しているリアルな内容を入力し、それをスクリーンショットしてもともとあった販管費用、原価用などのマニュアルのスクリーンショットと差替えます。
それを渡すことで、まず、「特別感」を相手に与えることができ、「きちんとやらないと」という意識を植え付けることができます。私も一見甘いように見えるかもしれませんが、「ここまでやって、それでもし間違っていたら…ねえ」と明るいプレッシャーはかけます。いつも使う勘定科目や内容がその人のマニュアルに書いてあることで、〇〇代は、何費だったっけ、ということを悩まずにさくさく申請できますので実際に間違いも少なく作業も早くできるはずです。「何もわからない」よりも「ある程度わかる」ほうが、「面倒」と言っている人達もトライしやすくなりますので、最初は手間と時間がかかりますが、後が楽になります。
2.ソフトウェア内の便利機能(複写機能、検索機能、コピー&ペーストできる箇所など)を伝える
経理の方達は、ソフトウェアを使い慣れている人達が多いので逆に盲点なのですが、便利機能を知らない人達というのが実はたくさんいます。当たり前ですがこれを知っていると知らないとでは、作業時間、作業負荷がかなり違います。いろいろな会社で社員の方達のパソコンの使い方を見てみると、あらゆるショートカットキーを駆使して作業をする方もいれば、一つひとつ慎重にキーを押している方もいます。経理のソフトウェアなども、複写機能があるのに、毎回1から全て入力をしている人もいます。「なんでこんなに時間がかかるんだろう」という場合は、多くはこのような作業のショートカットを知らない方が多いので、どのようにいつも入力しているかを聞いたり見せてもらったりして「画面の左下に『複写』という表示があるので、それを押せば先月と同じものが作れますよ」など、便利機能が使えそうな部分はその旨教えて差し上げてください。「なぜ面倒だと言っているのか」「なぜ時間がかかっているのか」の理由の一つに、こうしたことも原因ではないか、という選択肢も頭に入れておくとよいと思います。
まとめ
知恵やテクニックを駆使して、円滑に経理処理ができる環境を整えていきましょう。
フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室
経理の「知識」の部分については会計士や税理士の先生に聞いたりインターネットで調べれば解決できますが、社内の日頃の「コミュニケーション」の部分については相談できる相手が見つからず、「自分が我慢すればいいか…」とあきらめている経理社員の方達も多いのではないでしょうか。
今シリーズでは、さまざまな会社を見てきた「フリーランスの経理部長」が、日常的によくある経理社員のお悩みについて相談、解決していきます。
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- 第6回「上司からの連絡が多い中、テレワークに集中するには?」
- 「テレワーク中、スケジュール通り仕事をこなしているのに、上司から1日に何度も進捗連絡が入り、集中力が途切れ仕事がはかどりません。何か良い解決方法はないですか。」というお悩み解決します。
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- 第7回「テレワークの書類申請漏れや紛失の解決は?」
- 「テレワーク制を導入後、「領収書を自宅の中で失くした」「支払請求書の電子データを経理に回覧するのを忘れた」等の申請漏れや紛失が増えています。何か良い解決方法はないですか?」というお悩み解決します。
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- 第8回「経理作業のモチベーションを維持するには?」
- 「経理の作業は頑張っても、実際の給与や賞与はあまり変わらないことが多いので、モチベーションの維持が難しいときがあります。営業のようにインセンティブや報奨金がある職種が羨ましい。」というお悩み解決します。
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- 第9回「コロナ禍で進める経理業務の改善は?」
- 「コロナの見通しが立たない中、他の会社の経理の皆さんは、経理業務の改善をどのように進めているのか。コロナの状況が明確になるまで暫定ルールで行くか、それとも大きく変える提案をすべきか」というお悩み解決します。
筆者プロフィール
前田 康二郎(まえだ こうじろう)
流創株式会社代表取締役。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。
前田 康二郎 氏 連載記事
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- 財務情報を専門的に取り扱う「経理」が非財務情報の正しい理解をしておくことで、敬意のある行為が良い非財務情報を形成し、それが良い財務情報として連動し数値化されることを理論的に説明できます。
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- 社長と経理が共有しておくべき経理やお金の基本概念などについて分かりやすくお伝えします。
※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。