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フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室 第7回「テレワークの書類申請漏れや紛失の解決は?」

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経理の「知識」の部分については会計士や税理士の先生に聞いたりインターネットで調べれば解決できますが、社内の日頃の「コミュニケーション」の部分については相談できる相手が見つからず、「自分が我慢すればいいか…」とあきらめている経理社員の方達も多いのではないでしょうか。

今シリーズでは、さまざまな会社を見てきた「フリーランスの経理部長」が、日常的によくある経理社員のお悩みについて相談、解決していきます。

経理担当者の今回のお悩み

Q:テレワーク制を導入してから、「領収書を自宅の中で失くしてしまった」「支払請求書の電子データを経理に回覧するのを忘れていた」というような、申請漏れや紛失が増えています。何か良い解決方法はないでしょうか。

フリーランスの経理部長からの回答

テレワークで管理しにくくなる領収書

コロナの前であれば、多くの人が「出社」「帰社」というように、会社とプライベートの境目がはっきり分かれていたので、たとえば会社のために使った領収書は、会社の机の引き出しにしまっておいて月末にまとめて処理する、とか、紙の支払請求書も各担当者の机の上に郵便物として置かれているので、それを開けて確認してすぐ回覧するなどしていたことでしょう。また、経理担当者やデスク担当などが、朝礼や各部署を廻って直接「皆さんのメールアドレスに届いている電子データで来ている支払請求書で処理を忘れているものはありませんか」と締め日前に直接声掛けをすることもできたでしょう。

しかしコロナ発生以降、テレワークになると、こうした細かい部分での対応が現場も経理も行き届かなくなり混乱が生じた会社も多いと思います。領収書に関しては、テレワークになり申請の枚数自体は減った会社も多いのではないかと思いますが、労働環境が自宅中心となると、仕事とプライベートの境目があいまいになり、領収書などの管理の仕方も逆にしにくくなりプライベートのレシートと混在してしまって失くしてしまった、申請し忘れてしまった、ということもあることと思います。

たとえばテレワーク用に、自宅で仕事をするための備品は経費精算して良いという許可を会社からもらった場合、ショッピングセンターでプライベートの買い物と仕事用の買い物を同時にして、どちらの領収書も、同じ財布に入れて置いたとします。すると、「あとで経費精算の申請をしなきゃ…」と思いつつ忘れてしまって、財布が領収書などでパンパンになっていたら、反射的に全部ゴミ箱に捨ててしまい、後日、経費精算するつもりだった領収書も一緒に捨ててしまっていたことに気付いた、ということがあるかもしれません。また、わざわざ経費精算用の領収書を捨てないようにしまっておいても、しばらくして家の中のどこにしまったのか忘れてしまった、ということもあるかもしれません。あるいは失くさないようにと、わざわざ目につくところに領収書を置いたために、逆に家族が掃除のついでに必要ないと思って捨ててしまう、ということもあるかもしれません。


領収書や支払請求書をファイリングを工夫した解決

私もフリーランスで10年近くテレワークをしていますが、領収書などの整理は毎日はせず、1カ月に1度など、まとめてすることが多いです。以前はクリアファイルに入れて書棚に立てかけておいたのですが、クリアファイルが薄いため、他の雑誌や資料の間に埋もれて死角になってしまい、「どこにしまったっけ」ということがよくありました。

それで今は、100円ショップで買ってきた、中がジャバラ状に仕切られている派手な色のドキュメントファイルに領収書や支払請求書などをどんどん「一旦突っ込んで」しまい、保管しています。そうすることで「仕事のものは一旦すべてこのファイルに暫定で入れている」ということがわかるようにしました。

時間のある時に、そのファイルを開け、領収書ならば、仕訳入力をしてのり貼りをして別のファイルにファイリングし、支払請求書も取り出して振込処理をしたら、別のファイルにファイリングします。このように、「区分け」する方法を経理部から現場の社員の方達に提案してもいいと思います。

たとえば、会社の経費で全社員に、経理関連の証憑保管用のファイルを配布してもいいと思います。社員が100人でも、100円×100人分のファイル=10,000円で済みます。

コロナ以前から、経営者や役員などコーポレートカードを持っている方達は、コーポ―レートカードで支払い済の領収書を個人の経費精算だと勘違いして結果的に2重申請になっていたことが後からわかることもよくあります。

ジャバラ状のファイルは、「コーポレートカードの領収書」、「通常の領収書」と分けて管理もできるので、こうしたファイルの活用を経営者や役員、秘書の方には以前からお勧めしています。「会社の領収書はとにかくこのファイル」「コーポレートカードの領収書はとにかくこっちの仕切りに入れる」など、直感的にわかりやすくしておくと、紛失、申請忘れ、2重申請ということが減らせると思います。

支払請求書の取扱ルールの変更・追加による解決

また、支払請求書に関してですが、コロナ以降は、私自身もクライアント先の担当者の方から「請求書を紙でなくデータで欲しい」と言われるようになりました。

紙からデータに移行したことにより、慣れないうちは、現場の担当者が「後で請求書の処理をしよう」と思いつつ、その後、他のメールが次々に来ることで請求書が添付されたメールが埋もれてそのまま経理宛に処理するのを忘れてしまう、ということが起きる頻度が増えたのではないかと思います。

また、紙ベースの支払請求書も、その担当社員がテレワークだと、封の空いていない支払請求書の封筒が机の上にずっと置きっぱなし、ということも増えたことと思います。経理で月次決算を締める際に、「支払請求書の発生有無と原紙、原データの所在確認」が、これまでよりも煩雑になっていることと思います。

たとえば、「現場社員」「その上司」「経理」のお互いが全員遠隔での作業同士であれば、暫定で「電子データで支払請求書をもらったら、すぐ一旦上司と経理担当者にそのメールを転送し、それから正式な申請や請求書の印字をする」という一律のルールを現状のルールに加えて作ってしまってもいいかもしれません。

また、「電子データで請求書が来るたびに処理をするのが面倒」という人が多い場合は、メールでの管理方法を、紙の領収書を一旦一つのファイルにまとめて入れてしまうのと同様に、メールの管理ボックスに「請求書」という名前のボックスを追加して作り、請求書関係のメールのやりとりは全てそちらに移動させ、月末になったらまとめてそのボックスの中の処理を行う、というような管理の仕方を経理から提案してもいいかもしれません。

そして経理側も、やりとりを簡素化する、あるいは2重で同じ請求書データが転送されてこないために、たとえばAさんが3社分の電子データの支払請求書を受け取っていたら、都度送ってもらうのではなく、月末に3社分の支払請求書の電子データを一つのメールにまとめて添付してもらい、上司や経理に転送してもらうようにすることで、請求書に関するやりとりや確認回数をスリム化することもいいかもしれません。

紙ベースの支払請求書に関しては、経理や総務が週に1日でも出社できる状態であれば、総務と経理で連携して、「請求書在中」と外部の封筒に印字されている郵便物に関しては現場担当者に事前に許可を得て一旦開けて中身を確認し請求書の内容を控えてから、各担当者の机の上に置いておく、という形をとってもいいかもしれません。コロナの状況が落ち着いたら、また正式な管理ルールを作ればよいと思いますが、暫定処置であれば、内部統制や個人情報などに違反しない範囲で、臨機応変に対応してもいいと思います。

まとめ

コロナの状況下だからこそ、資金繰りや予算実績管理など、月次作業を遅らせるわけにはいきません。

しかし、遠隔同士だと「経理に申請、提出されたもの」の集計はできたとしても、「本当に申請漏れがないかどうか」という確認は、これまでよりもかなりハードルが上がります。少しでも申請忘れの確率を下げるために、こうした工夫や提案を経理からしてみるのも良いと思います。

フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室

経理の「知識」の部分については会計士や税理士の先生に聞いたりインターネットで調べれば解決できますが、社内の日頃の「コミュニケーション」の部分については相談できる相手が見つからず、「自分が我慢すればいいか…」とあきらめている経理社員の方達も多いのではないでしょうか。
今シリーズでは、さまざまな会社を見てきた「フリーランスの経理部長」が、日常的によくある経理社員のお悩みについて相談、解決していきます。

筆者プロフィール

前田 康二郎(まえだ こうじろう)

流創株式会社代表取締役。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。

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