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フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室 第8回「経理作業のモチベーションを維持するには?」
経理担当者の今回のお悩み
Q:経理の作業は頑張ってもそうでなくも実際の給与や賞与はあまり変わらないことが多いので、モチベーションの維持が難しいときがあります。営業のようにインセンティブや報奨金などがある職種が羨ましいです。
フリーランスの経理部長からの回答
経理はモチベーションの維持が難しい職種の一つ
私が会社員時代に経理をしていた時、営業出身の父親から「営業は仕事がとれた分だけインセンティブがあるからやりがいがあるぞ。経理は一生懸命やっても、そうでない人間と給料に差をつけてもらえないだろう」と言われたことがあります。
痛いところを突かれたな、という記憶があります。
経理というのは、仕事に対してやる気がある人にとっては、モチベーションの維持が難しい職種の一つではないかと思います。
結果が出たらその分報奨金などがもらえるという、計算式で成り立つ仕事ではないからです。だから営業出身の父から見たら、私が会社員時代に必死で経理の仕事をしていたのを見て、インセンティブもないのによく働くなあ、何のためにそこまで一生懸命働いているんだろう、と映ったのだろうと思います。
そのような私も、今は「フリーランスになって、やった分だけ稼げるわかりやすいスタイル」という形を選んでいます。
ただ、私が今振り返って思うのは、会社員時代に自分自身があまりに自分のやってきたことをアウトプットしなさすぎたという後悔や反省があります。たとえば経理のセミナーに行った後に、こういう部分がとても役に立った、ということを経営者や役員に報告するだけでも、もっと経理の仕事や自分に関心を持ってもらえたのかもしれない、評価されていたのかもしれない、と思うのです。
「アウトプット」を主眼にした働き方、生き方に変えてみる
会社員時代の私は、「経営者や上司に、自分のためだけに無駄な時間をとらせてはいけない」「経理は裏方なので、大変なことがあっても黙って耐えるべし」という思い込みにとらわれ過ぎていました。
今コロナ禍で、よりはっきりしていると思いますが、もし今の時代に、かつての私のような考え方で仕事をしていたらどうなるでしょうか。各自がバラバラに在宅ワークをしていたら、いくら自分が頑張っていることがあっても、それを共有もせずに黙っていたら、その頑張りを認識してもらえる確率は0%です。業務でトラブルや悩みを抱えたり苦労したりしていることがあっても、何も発信しなければそれに気づいてもらえる確率も0%です。
コロナによってより明確になったのは、アウトプット、つまり「自分から進んで良いことも悪いことも発信している人のほうが、断然、得」ということです。共感や評価もしれもらえるし、助けてももらえるということです。
これを機に、これまで「インプット重視」で仕事をしてきた方達も、「アウトプット」を主眼にした働き方、生き方に変えていくと、ご質問の悩みも自然に解決していくのではないかと考えています。
会社員時代の私は、「評価されない人」というのは、仕事そのものが未達な人だと思っていました。
だから私も経理知識を一生懸命詰め込むなどのインプット重視の生活を送っていました。ただ、フリーランスになってよくわかったのは、評価されない人というのは、単に「その人の存在が認識してもらえていないだけ」ということのほうが多いということに気付きました。
私自身、「フリーランスの経理」と名乗って今年で10年目になります。数年おきに、「そろそろこの肩書は変えようかな」と思うのですが、そのようなタイミングで必ず「フリーランスの経理って珍しいので、問い合わせてみました」という人が現れるのです。既に10冊近く書籍も出版して、セミナーもコラムも数多くやらせていただいているのに、それでも「初めて存在を知りました」という人のほうが圧倒的に多いのです。その度に、「知ってもらうことって、相当大変なことだな」と思わされるのです。「自分のことを知ってください」と、今の私のように活動していてもその認知レベルなのですから、会社員だった時も、黙ってじっとしていたら、まず周囲には何も気づいてもらえない、というくらいに思っていないといけなかったのだなと、今ならわかります。
会社員の方達で「自分を評価してもらえていない」と思う人の多くは、「自分の仕事における知識量が足りないのではないか」と思うかもしれませんが、そうではなく「単に認知、認識されていないだけ」と思い、その点を少し改善してみてはどうかと思います。
自分の活動や考えていることを、形に残るようにアウトプットしていく
ではそのためには何をすればいいかというと、簡単な方法としては、自分の活動してきたこと、考えていることなどを「形に残るようにアウトプットしていく」ということです。
たとえば、自分から経理部内の人達においては、ネット上で参考になる経理関係の記事などがあったら、部内にリンクを回覧するということだけでもいいと思います。仕事上で役に立つ早見表や一覧表などがあれば、教えてもらった部内の人達も助かりますし、そのおかげで全体の作業も効率化するかもしれません。また、業務評価や査定の時には、通常の会社で指定された評価シートとは別に、自分が1年間で新たに取り組んだことなど、資料を作って提出する、ということもいいと思います。評価をされるということは、やはり「他者との違い」も重要ですから、他の人がやらないことをすると印象に残ります。
また、よく経理の管理職の方の悩みで聞くのは「経理部そのものの存在感を社内で上げるにはどうしたら良いか」ということです。
つまり、部署そのものの評価が上がらないと、自分の部下たちの評価も相対的に上がらないのが悩みだとおっしゃっています。その場合も同じように、経理部内で会社全体に有益であろう記事や情報などがネット上であったらそれを週に1度、月に一度など、リンク先を社内に回覧するということも現場や経営陣の方達の印象に残るでしょう。
その中に、経理社員が毎回交代で、短いコラムなども差し込んでみると、各社員のアウトプットする練習にもなりますし、「経理ではこういう人が頑張ってくれているんだ」「経理にはこういう悩みがあるんだ」ということを認識してくれることでしょう。
まとめ
「どうせそんなことしたって…」と思っている限り、頑張りを永遠に認知されずに終わってしまいます。
自分の頑張りを誰かに知って欲しい、伝えたい。そのためには自分から最初は手ごたえを感じなくても繰り返しアクションを起こすことです。1回扉をたたいて無反応だからといってすぐ諦めずに、しつこく、何度も、アウトプットを繰り返すことで周囲も変わり、自分も変わっていくきっかけが掴めると思います。
フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室
経理の「知識」の部分については会計士や税理士の先生に聞いたりインターネットで調べれば解決できますが、社内の日頃の「コミュニケーション」の部分については相談できる相手が見つからず、「自分が我慢すればいいか…」とあきらめている経理社員の方達も多いのではないでしょうか。
今シリーズでは、さまざまな会社を見てきた「フリーランスの経理部長」が、日常的によくある経理社員のお悩みについて相談、解決していきます。
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筆者プロフィール
前田 康二郎(まえだ こうじろう)
流創株式会社代表取締役。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。
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※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。