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フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室 第6回「上司からの連絡が多い中、テレワークに集中するには?」
経理の「知識」の部分については会計士や税理士の先生に聞いたりインターネットで調べれば解決できますが、社内の日頃の「コミュニケーション」の部分については相談できる相手が見つからず、「自分が我慢すればいいか…」とあきらめている経理社員の方達も多いのではないでしょうか。
今シリーズでは、さまざまな会社を見てきた「フリーランスの経理部長」が、日常的によくある経理社員のお悩みについて相談、解決していきます。
経理担当者の今回のお悩み
Q:テレワークをしているのですが、スケジュール通り仕事をこなしているのに、上司から1日に何度も「どこまで作業できた?」と連絡が入り、集中力が途切れ仕事がはかどりません。何か良い解決方法はないでしょうか。
フリーランスの経理部長からの回答
どのような人が過剰に連絡してくるのか?
誤解を恐れずに言えば、その上司の方は「暇」である可能性が高いです。暇といっても、毎日何もやることがないということではありません。一つは「インプット」つまり、自発的に新しい知識の吸収などをしていないのではないかということ、そしてもう一つは、手持ちのスキルでこなせてしまう業務しか、今手元に持っていないということではないかと思います。相談者がよほど信頼されていない、という可能性もありますが、ここでは相談者が、申告通り仕事をこなしている方という前提で話を進めさせていただきます。
ある出版社の方に伺ったところ、今、書籍関連で売れているものは、ゲームの攻略本、漫画、そして資格取得のテキストなどだそうです。一時期はビジネス書も売れていたそうですが一段落したとのことで、ビジネス書を書く身としては寂しい限りですが、たとえばこの在宅勤務など、幾分自由な裁量で仕事ができるようになった状況を機に、今まで忙しくて読めなかったビジネス書や専門書を情報のインプットとして読んだり、スキルアップのために資格取得を目指して勉強したり、という人も私の周囲にはたくさんいます。そして今は各企業が無料で主催しているオンラインセミナーもたくさんあります。今までは業務で忙しくてなかなかセミナー会場に行く時間がとれなかった人も、自宅からさまざまな方の知見を無料で見ることができます。ある意味「情報のインプット」の視点から考えると、会社員にとっては今までにないほどのとても良い環境です。このような環境を有効活用している人達にとっては、在宅といってもそんなに暇はないはずです。
また、通常の仕事においても、1日に何度も同じ人と無駄なやりとりをしなくてよいように、仕事の進め方やコミュニケーションの取り方も試行錯誤して効率化を図っていることでしょう。勉強熱心な人、自己成長したい人は自己啓発に忙しいので、いちいち「相手がさぼっていないか」「まだできないのかな」などということに時間を使っている暇などないのです。
一方で、会社から指示された仕事「だけ」を在宅でしていてそれ以外は特に何もしていない人は、「暇」になる人も多いですから、他人が何をしているのかついつい気になってしまうのです。「暇だから相手になって欲しい」という部分が本音なのではないでしょうか。本当に嫌いな相手であれば、連絡をすることすら嫌なはずですから、少なくとも相手からは好かれているはずです。とはいえ、四六時中連絡をしてこられるというのは、仕事の生産性にも影響が出てきます。
過剰な連絡をどう減らすのか
この場合、実際に即効性のある解決法はないのかと言われれば、あります。四六時中連絡してくる人に対しては、こちらからも逆に「相談攻め」、「質問攻め」、「お願い攻め」にしてしまうことです。
自分でインターネットを調べればわかるような仕訳処理も、あえて「ちょっと相談したいことがあるのですが、A社との取引の仕訳処理はこれでいいと思いますか」「頂いた連絡で悪いのですが質問していいですか」「ちょうどよかったです。お願いしたいことがあるのですが」と、こちらから五月雨式にどんどん相談や質問、お願いをします。すると、相手もだんだんと、「まず自分でインターネットを調べたら?」「どう処理するかはいちいち連絡してこなくていいから君で決めていいよ」「自分も忙しいからそのお願いには答えられない」という風になっていきます。過剰に連絡してくる回数も減ってくるはずです。一度お困りの方は試してみてください。
とはいえ、冒頭にも書いたように「本当に仕事をしているのだろうか」「期日までにきちんと仕事ができるだろうか」という部下を抱えている上司の方もいるかもしれません。これからの時代、遠隔で仕事をしなければいけないケースは、コロナが落ち着いてもあると思いますので、このような信頼関係は改善しておきたいところです。
実際に上司や社長が「追いかけたくなる部下」には特徴があります。「逃げれば追う」というように、「自分からなかなか報告をしない」社員、こうした人はまず上司から連絡が入ると思います。部下から上司に定期的に報告が入れば、まず上司も執拗に連絡することは、よほど暇な方でない限りはありません。一般的な報告の頻度、たとえば1日のうちの始業や終業、また、決められた作業が終わった時など、常識的な頻度で上司に限らず、周囲に報告をしている人は、周囲からも「もし、仕事でアクシデントがあったり、期日に間に合わなそうな事情が起きたりしたら、あの人は、自分からその旨連絡をしてきてくれるだろう」と認識しているはず。四六時中「ちゃんと仕事している?」「どこまで終わったの?」ということは聞かれないと思います。特定の人からまめに連絡が来る場合は、連絡してくる方に課題があるかもしれませんが、2人以上の人からまめに連絡が入ると言う方は、連絡、報告の頻度が一般の人より少ない人が多いので、相手が安心する頻度で報告をするようにしたほうが結果的にご自身の作業効率も上がると思います。
先程申し上げた「四六時中連絡してくる人への対処法」も、連絡してくる人に100%非があるわけではなく、おそらく、関係性の中で、連絡する頻度が自分はこれくらいのペースでいいと思っても、相手はそれでは足りないと思っている、つまり「誤差」があるということです。テレワークの場合、「お互いに様子を目視する」ということができませんので、たとえば1日1回始業時に連絡をする、というようなルールを作ったり、逆に14時~17時まではお互いに作業に集中するために、緊急時以外は連絡を取り合わない、と決めたりするのも良いと思います。
テレワークもそうですが、初めての環境で仕事をする場合、想定していないこともたくさん起きます。それぞれの希望や意見を出し合って、「お互いが満足する着地点」を見つけてみてください。
フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室
経理の「知識」の部分については会計士や税理士の先生に聞いたりインターネットで調べれば解決できますが、社内の日頃の「コミュニケーション」の部分については相談できる相手が見つからず、「自分が我慢すればいいか…」とあきらめている経理社員の方達も多いのではないでしょうか。
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筆者プロフィール
前田 康二郎(まえだ こうじろう)
流創株式会社代表取締役。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。
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