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フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室 第2回「リモート環境下で経理業務を効率化する方法は?」

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経理の「知識」の部分については会計士や税理士の先生に聞いたりインターネットで調べれば解決できますが、社内の日頃の「コミュニケーション」の部分については相談できる相手が見つからず、「自分が我慢すればいいか…」とあきらめている経理社員の方達も多いのではないでしょうか。

今シリーズでは、さまざまな会社を見てきた「フリーランスの経理部長」が、日常的によくある経理社員のお悩みについて相談、解決していきます。

経理担当者の今回のお悩み

Q:3月決算の会社の経理担当です。新型コロナウイルスの影響で業務が普段より大変な状況です。外出自粛要請もあり、部署によっては在宅勤務の人もいるのでコミュニケーションがとりづらいですし、決算作業の一方で4月の月次決算もすぐ始まります。時間も限られ、リモート環境の社員もいる中で、何か少しでも経理業務を効率化できる方法があったら教えてください。

フリーランスの経理部長からの回答

リモートで作業をしてきた経験からお伝えする、経理業務を効率化できる5つのポイント

新型コロナウイルスの影響で、皆さんの働き方にも大きな変化があったことと思います。特に3月決算の会社の経理の皆さんは、外出自粛要請が出ていてもどうしても出社をしないと作業ができないこともあるでしょうから本当に大変でいらっしゃると思います。

私自身も、この大変な環境の中で、自分には何ができるのだろうかと考える毎日です。
大したお役立ではできませんが、これまで10年近くフリーランスの経理としてリモートで作業をしてきた経験から、このような有事の環境でも、いかに短時間で証憑などを整理し、状況によっては概算でも月次決算をまとめていくか、そのポイントなどをお伝えできればと思います。

もし、私が経理の会社員と想定して、週に1日程度の出勤で残りはリモート作業だとしたら、次の5つをポイントとして挙げたいと思います。

  1. 提出期限の厳守を経営者からアナウンスしてもらう
  2. 提出の有無をチェックする社員リスト・部門リストを作成する
  3. 毎月請求書が届く取引先、口座引き落としの一覧を作成する
  4. 取引額の上位数社分の内容等を確認する
  5. 概算計上を活用する

1.提出期限の厳守を経営者からアナウンスしてもらう

社長自身が経費精算の締め日に「しまった、まだ経費精算まとめていない!」という会社もこれまであったかもしれませんが、この状況においてはそのような社長はさすがにいないことと信じています。どの会社でも今年年内においての喫緊の課題はまず資金繰りがどれくらいまで大丈夫かということでしょう。それを試算するための数字をどの会社も早くまとめなければなりません。

多くの皆さんが誤解をしているかもしれませんが「こういう有事だから、月次決算は普段より遅れていい」という発想は、会社の経営を考えたらむしろ逆です。平穏な時は、1日、2日遅れても支障はありませんが、このような有事の時こそ1日も早く数字をまとめなければ経営分析もできません。経営判断をして次の行動に移るということができないのです。だからこそ普段から締め日を社長や現場の方達に守ってもらい、経理も素早く月次決算を締めるという習慣をつけておいたほうがいいのです。実際に金融機関に融資の相談をしようとした時に、他社より出遅れると面談日が大幅に先の日程になってしまう、ということが既に起きているようです。

有事の際には「1日も早く行動に移る」ということが大切なので、会社が生き残るためにも、社長から社内に数字に関する申請は素早くするように今回は厳命していただきましょう。

2.提出の有無をチェックする社員リスト・部門リストを作成する

有事の際には、現場も経理も混乱しているので、「抜け」が生じるリスクがあります。

つまり「経費精算の申請漏れ」「売上請求書の発行漏れ」「支払請求書の回覧漏れ」などが生じないようにしなければなりません。私がリモートで作業をする場合は、小規模な会社なら個人別の名簿を作成し、経費精算、売上請求書、支払請求書の有無確認と申請済かどうかのチェックを個人別にし、基本的な抜けがないようにしていました。手元に経費精算が全員分届いていない場合、残りの人は、出し忘れているのか、それとも経費精算が今月は発生しなかったのか、どちらかがわかりません。一人ずつ「今月は経費精算がない、ということで大丈夫ですか」と確認していき、全員の確認が取れ次第、すぐ仕訳の入力作業に入りました。

中規模な会社の場合は、一人一人確認する時間がないので、部門リストを作って、各部のデスク担当の方に各社員の確認をしてもらい、各デスクの方から私に確認終了の連絡があったら、部門リストにチェックマークをして、仕訳入力をしていきました。

3.毎月支払請求書が届く取引先、売上請求書を発行する取引先、口座引き落としの一覧を作成する

2と同様に、「抜け」が発生しないよう、毎月固定・変動いずれかで発生する売上請求書・支払請求書のリストを事前に作っておきます。また口座引き落としは「○○費/普通預金」と計上している場合は計上漏れをしたときには普通預金の残高がずれているのでわかりますが、「○○費/未払費用」などと計上としている会社の場合は口座引き落とし通知書を見落としていた場合に計上漏れをしてしまうかもしれませんので、私はリストを作成しています。

会計ソフトに仕訳を一通り入れた後、リストと帳簿を照らし合わせてチェックしていきます。

その中で、請求書が毎月発生する「はず」なのに、仕訳データに入っていない、つまり申請がなかったものについては、各担当者に、それで正しいか確認をします。実際に社員が忘れている場合もありますし、契約が先月で終わったので、なしで大丈夫です、という場合もあります。

2と3で全体の通常時の売上、支払の計上チェックはおおよそ網羅されると思います。

4.取引額の上位数社分の内容等を確認する

取引金額が大きいものというのは、毎月発生するものというよりかは、イレギュラーで発生するものが多いと思います。

そのため、3で作成するリストには入っていない可能性があり、金額も大きいので、有事で時間がない場合でも確認は必要です。

「売上と支払上位5社ずつ」「300万円以上の仕訳」など、それぞれの会社に応じて、もし間違っていたら試算表に大きな影響を与えそうな金額レベルの仕訳は一応内容を確認し入力ミスがないかなどチェックをします。

5.概算計上を活用する

昨今の有事な状況の場合、自社が大丈夫でも、取引先が「請求する金額の集計が遅れていて、いつもの日程で請求書を送れない」など、通常時とは違う対応を求められることもあると思います。

上場企業の場合は、監査法人に一言断りを入れておいた方がいいと思いますが、そういった場合は、概算計上を活用して一旦仮締めをしてもいいと思います。たとえば外出自粛要請で経費精算も請求書もとても全員分網羅できない状態でありながらも、4月の月次決算を一旦仮締めして提出しなければいけない状況でしたら、3月分のデータの中から、4月には絶対に発生しない売上と支払いのデータだけを除外した、残りの3月分のデータをそのまま一旦4月に概算計上し、原価計算を行っている会社であれば、配賦比率なども、一旦前月の実績値などで行い、仮締めをします。その後、翌月で確定値と概算計上との仕訳を振り替える、という対処でしのぐ、という方法もあります。

既にネット環境が整っており職場でも在宅でも関係なくできる会社や受発注システムを導入している会社もあれば、全てアナログの会社もありますので、一概に全て適合するとは限りませんが、何か1つでも皆様のお役立ちになればと思います。

フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室

経理の「知識」の部分については会計士や税理士の先生に聞いたりインターネットで調べれば解決できますが、社内の日頃の「コミュニケーション」の部分については相談できる相手が見つからず、「自分が我慢すればいいか…」とあきらめている経理社員の方達も多いのではないでしょうか。
今シリーズでは、さまざまな会社を見てきた「フリーランスの経理部長」が、日常的によくある経理社員のお悩みについて相談、解決していきます。

筆者プロフィール

前田 康二郎(まえだ こうじろう)

エイベックス(株)など数社の民間企業にて経理業務を中心とした管理業務全般に従事し、(株)サニーサイドアップでは経理部長としてIPO(株式上場)を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は、社内体制強化を中心としたコンサルティングのほか、講演、執筆活動なども行っている。

著書に、『スーパー経理部長が実践する50の習慣』、『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』、『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』、『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』(以上、日本経済新聞出版社)、『スピード経理で会社が儲かる』(ダイヤモンド社)、『経営を強くする戦略経理(共著)』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』、『自分らしくはたらく手帳(共著)』、『つぶれない会社のリアルな経営経理戦略』、『図で考えると会社はよくなる』(以上、クロスメディア・パブリッシング)、『「稼ぐ、儲かる、貯まる」超基本』(PHP研究所)など。


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