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経営者が信頼するバックオフィスの仕事の習慣~即答力~

更新日:2019/08/19

経営者が信頼するバックオフィスの仕事の習慣~即答力~

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少しの心がけの差で評価は大きく変わる

皆さん初めまして。今月からコラムを担当させていただくことになりました前田康二郎と申します。現在は「フリーランスの管理・経理部長」と称して、さまざまな会社のお手伝いをさせて頂いています。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、これまでさまざまな職場の方と仕事をご一緒していく中で、仕事への取り組み方には人それぞれに特徴があることがわかってきました。そして最初は同じ程度の実務レベルの人同士であっても、仕事への取り組み方一つで、社長や上司の信頼を得たり、またそうでなかったり、ということも見てきました。

今回の連載では、そのような「ちょっとした仕事への取り組み方の違い」をポイントに、経営者が安心して信頼するバックオフィスの社員にはどのような特徴や習慣があるかということを取り上げていきたいと思います。

会話の流れを止めない速さで質問に対応する

まず私が真っ先に取り上げたいのは、「即答力」です。

社員の方達の仕事の様子を見ていると、誰かから質問をされた場合に、どのように対応するかで二つのパターンがあることに気付きます。自分の仕事を「暗記している人」と「暗記していない人」です。

たとえば管理部門の会議などで「先月入社したAさんの年俸いくらだったっけ」「今現在で、うちの会社の利益はいくらあるんだっけ」と、話の流れの中で突然社長が尋ねてきたときに、「Aさんは年俸550万円です」「税引き前利益で2,300万円です」と何も資料を見ずに社長の顔を見て即答できる人と、「えっと・・・ちょっと待ってください」と資料を調べ出す人の二つのパターンがあります。

即答できる場合は、話の流れを止めずに引き続きそのまま議論を進められるのですが、そうでない場合はその人の回答待ちになり、会議の流れが一旦止まります。こうした些細なことも、毎回の繰り返しになっていけば、経営判断のスピード感に差が出てきますから、会社経営や数字にもやはり影響が少しずつ出てきます。

私自身が会社員時代の時には、ほとんどのことをいつも「暗記」していました。
株式上場を目指す会社に勤めることが多かったので、新しいスタッフが増えても、そして新しいシステムが入っても、それを上回る業務量とタイトなスケジュールで、常に余裕のない状況でした。そのような環境下で監査対応や証券会社、取引所などからの質問に対する回答資料を作成していましたので、過去5年分の年度末の部門別の従業員数だとか、過去5年分の売上先上位10社だとか、日常業務の合間にそれらを調べて、翌日の午前中までに回答を提出しなければいけないということも多く、本当に時間が足りませんでした。すると、おのずと「どうしたら制限時間内に作業ができるだろうか」と必死に考えるようになり、いろいろなことを「暗記」しておけば、都度データや資料をひっくり返す時間がなくなる分時間がとれる、という考えに至ったわけです。自分の作業で必要な会計ソフトの勘定科目コードに始まり、人から聞かれそうな人事情報、経理情報などは、暗記して口頭で言えるようにしておきました。

すると、想定していなかった効果が生まれ始めたのです。相手からの質問にその場で即答することで「この人はよくわかっている」という信頼が得られ、コミュニケーションも以前よりスムーズに進められるようになったのです。特に外部機関や現場部門など、経理部外から求められる質問や依頼に対しては、最初から「確認して資料を送ります」と言ってしまうと資料を作らなければいけなくなり、時間がとられます。そこで私はその質問された場(電話口や対面)で即答をして、「口頭だけでなく、資料も必要ですか」と聞くようにしました。すると、かなりの確率で「いえ、今お伺いしたものを自分でまとめますので大丈夫です」「ちょっと確認したかっただけだから大丈夫。ありがとう」ということも数多くありました。自分で勝手に減らないと思いこんでいた作業量を大幅に減らすことができ、さらに「この人はわかっているから大丈夫」という認識をしていただけるようになり、自分のやりやすい形で業務スケジュールなども組ませてもらえるようになりました。

デキる人は「無駄」「意味がない」と皆が思う仕事の中から価値あるものを探す

今の時代は、クラウドなどで情報管理をしている会社も多いので、「いちいち情報を暗記するなんて、無駄な努力ではないか」と考える人も多いかもしれません。

それはその通りなのですが、社長や役員が「おっ」と思う人、引き上げたい、と思う人には、「他の人がやらない努力をしている人」という特徴があります。それが「他の人より一歩抜きんでている人」と評価・認識されやすいからだと思います。

社長から仕事の数値の質問をされて、「今ソフトを開きますからお待ちください」でも、「クラウドにデータが入っていますので、社長御自身でお開きになって見ていただけますか」でも正解なのですが、質問された瞬間に、「はい、○○円です」「はい、○○人です」と反射的に答えられる人も中にはいるわけです。そこで経営者は「この社員は他の社員と仕事に対する考え方が違う、経営者寄りだな」と思うわけです。

即答できるということは、単に業務を覚えられるスキルがあるだけではなく、「社長が知りたそうなこと」が常にわかっているから即答できるという側面もあります。つまり「即答」には、「会社に興味がある」というエンゲージメント、社長の考えていることがわかっているという「社長や会社に対するロイヤルティ」、そして業務の「専門的スキル」、この3つの意味が同時に含まれています。だから社長から見ると「この社員は信頼できる」ということになるのです。

即答するために暗記するコツ

では具体的にどのようにすれば、効率的に「暗記」ができ、「即答」ができるようになるでしょうか。

当然ながら、会社の全てのあらゆるデータを暗記することはほぼ不可能です。つまり「できる人」というのは、次の4つのポイントを軸に会社の情報を暗記しています。

  • 自分の業務で継続して出てくる頻度が高いもの
  • 現場社員から聞かれるもの
  • 社長から聞かれるもの
  • 外部機関から聞かれるもの

この4つに該当するものを、皆さんそれぞれの業務の中からまず洗い出してください。洗い出しをしておくと、これまで唐突に聞かれていた印象があったものでも、「○○さんは、いつもこのことを、この時期に聞いてくるな」と、傾向があることがわかってくるはずです。だから暗記をする範囲は思っているよりとても狭いのです。そして、それに対応する「答え」を準備しておきましょう。「Q(社長から)今月の新規契約分の売上は」「A:○○円です」という形です。それだけでいいのです。

知識があるはずなのに質問に対して即答できない人を見かけることがあります。
そのような人は、「聞かれる準備」をしていません。想定していないことを突然聞かれると、いくら知識があっても人間というのは口が開かないのです。

そのような場合は、「相手中心主義」という考えを少し取り入れてみると視点が変わって良いと思います。

周囲が自分に求める情報は何だろうか、それくらいは、最低限即答できるように暗記しておこう、と、自分の都合や視点ではなく相手の視点に立って準備をしておきます。準備をしても誰からも質問をされることなく終わってしまうことももちろん多いですが、その心がけそのものは周囲の人達は見ていますし気づきますから、評価も大きく変わる可能性は非常に高いです。

デジタルな時代だからこその「即答力」。これがまず他者と自分を差別化する第一歩です。

この記事の執筆者
前田 康二郎
前田 康二郎(まえだ こうじろう)

流創株式会社代表取締役
エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。