更新日:2021/10/08
令和3年度税制改正に伴い、今年から以下の年末調整書類への押印が不要となりました。
昨年は税制改正に伴い書式や記載内容に大きな変更点がありましたが、令和3年9月17日付で公表されている各申告書書式によれば、今年は上記の押印廃止を除き、書式の大幅改正はありません。
そこで、各申告書につき、昨年変更点のあった箇所を中心に記載上のポイントを述べたいと思います。
令和3年度税制改正に伴い、今回より氏名欄の押印が不要となります。
① 生命保険料控除については、平成24年以降「一般の生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3区分となっており、「一般」「個人年金」については契約時期に応じて「旧(保険料)」「新(保険料)」の区分があり、それぞれ控除額計算式及び控除上限額が異なります。
基本的には従業者の方に手元の控除証明書の記載内容を転記して貰うことになります。
② 年の途中から就職した場合で、就職前に国民年金や国民健康保険等に加入していた場合の控除申告漏れに注意しましょう。(「社会保険料控除」欄に記載します。)
平成30年度改正で基礎控除の金額が一律38万円から、合計所得金額に応じて変額することとなった事に伴う記載欄です。
建前上は従業者本人がご自身でその年の給与所得金額を見積もって記載する事となっていますが、実際には歩合給の割合が高い、残業手当が多い、12月に支給される冬季賞与支給月数が不透明である等の理由により、従業者本人側で年収見積額を算定することが困難な場合もあると思います。その場合は提出時には空欄とし、会社側で記入する方法で良いと思われます。
なお、判定欄で「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」が「900万円以下(A)」、「900万円以上950万円以下(B)」、「950万円以上1,000万円以下(C)」、「1,000万円超~2,400万円以下」の4区分についてはいずれも基礎控除額は48万円で同額ですが、この区分は次の(2)「給与所得者の配偶者控除等申請書」欄で用いられることになります。
配偶者控除額・配偶者特別控除額を算定する欄です。
まず、下記のいずれかに該当する場合は、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用対象外となるため、この欄の記載は不要です。
それ以外の場合は、配偶者の令和3年分給与収入見積金額を(1)「給与所得」の「収入金額」欄に記載し、これに対応する所得金額を申告書裏面「4⑴」欄の算式にあてはめて算出の上「所得金額」欄に記載します。(従業者側で所得金額算定が困難な場合は空欄として貰い、会社側で記載でも良いと思います。)
◇配偶者の年収見積額の算定が困難な場合もあると思いますが、申告書提出時点での見積額を記載する事になります。結果的に実際の合計所得金額と記載金額に大きな乖離があると判明した場合には、後日税務署から会社に年末調整の修正勧告が出る場合があります。
給与所得控除額の上限額引下げに伴い、給与年収850万円超の場合は税負担が増加しますが、この年収帯の多くが子育て・介護世帯と見られる事に配慮し、一定の要件に該当する給与所得者に対する緩和措置として「所得金額調整控除」の適用があります。
(制度詳細につきましては、2020年9月1日コラム「今年(2020年)の年末調整は大きく変わります!! 変更点の概要まとめ」(https://pca.jp/p-tips/articles/br200901.html)をご参照下さい。)
下記のいずれかに該当する場合には該当欄へのチェック及び必要事項の記載を行います。
なお、同控除は給与収入額が850万円以上の給与所得者が対象なので、それ以下の場合は記載の必要はないのですが、給与年収見積額が850万円のボーダーライン上にある従業者もいると思われますので、念の為に上記の要件のいずれかに該当する従業者に対しては給与年収見積額に関わらず記載を原則とするのが良いと思われます。
令和3年度税制改正に伴い、今回より氏名欄の押印が不要となります。
①令和2年度税制改正で行われた「ひとり親控除」の創設及びこれに伴う寡婦・寡夫控除の見直しに伴い、C「障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」の欄が「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」に変更されています。(制度改正の詳細につきましては、前出2020年9月1日コラム「今年(2020年)の年末調整は大きく変わります!! 変更点の概要まとめ」(https://pca.jp/p-tips/articles/br200901.html)をご参照下さい。)
なお、「ひとり親控除」は新たな制度のため、従業者側では十分周知されていない可能性がありますので、該当する従業者がいそうな場合には、会社側でも念の為に確認される事をお勧めします。
◇年末調整に際しては、従業員側において「収入」と「所得」の区分が十分理解されていないケースがありますので、会社側でも可能な限りチェックを行うようにしましょう。
◇給与年収2,000万円以上の場合は、年末調整の対象外となります。(要確定申告)
◇住宅借入金等特別控除(いわゆる「住宅ローン控除」)の適用を受ける場合には、別途「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」及び金融機関の発行する「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(残高証明書)」を会社に提出します。(なお、令和3年中に住宅ローンを組んだ場合は、年末調整ではなく確定申告を行う必要があります。)
◇令和3年中に再就職した従業者については、前職分の源泉徴収票の提出が必要です。(提出もれが多いので、会社側でも注意しましょう。)
◇令和3年分より年末調整書式への押印が不要となった事で、事務簡略化が一歩前進しました。
税理士 石橋 秀樹(いしばし ひでき)〔東京税理士会芝支部所属〕
※記事中に、一部誤解を招く内容がありました。そのため、その個所を削除させていいただきました。お詫び申し上げます。