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第7号文書の勘所印紙税の基本や誤解が生じやすい点を弁護士が易しく解説第2回 第7号文書の種類と要件
この連載コラムでは、印紙税の基本や誤解が生じやすい点について、鳥飼総合法律事務所弁護士の山田重則 氏が易しく解説します。今回は、第7号文書の勘所と題して、第7号文書の実務上の問題点について、4回に分けて連載をします。本稿では、その第2回として、第7号文書の種類と要件について解説します。
1 はじめに
課税文書の中でも特に判断が難しいのが第7号文書です。第7号文書は、1通あたり4,000円という高額の印紙税が課されます。そのため、第7号文書にあたることに気づかないまま、これを大量に作成してしまうと、後に多額の過怠税を課される要因となります。そこで、どのような文書が第7号文書にあたるのかは、十分に理解をしておく必要があります。
第7号文書には5種類の文書が含まれます。もっとも、実務上、特に問題となるのは、印紙税法施行令26条1号が定める文書です。そこで、今回は、この文書の要件について解説します。なお、以下では、印紙税法施行令は、単に「令」と略します。
2 第7号文書の種類
印紙税法では、第7号文書とは、「継続的取引の基本となる契約書」をいい、これは、「…特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となるもののうち、政令で定めるもの」をいうと定められています。そこで、令26条は、第7号文書として、以下のとおり、1号から5号までの5種類の文書を定めています。
【令26条の定める5種類の文書】
一 特約店契約書その他名称のいかんを問わず、営業者(法別表第一第十七号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう。)の間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する二以上の取引を継続して行うため作成される契約書で、当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの(電気又はガスの供給に関するものを除く。)
二 代理店契約書、業務委託契約書その他名称のいかんを問わず、売買に関する業務、金融機関の業務、保険契約の締結の代理若しくは媒介の業務又は株式の発行若しくは名義書換えの事務を継続して委託するため作成される契約書で、委託される業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定めるもの
三 銀行取引約定書その他名称のいかんを問わず、金融機関から信用の供与を受ける者と当該金融機関との間において、貸付け(手形割引及び当座貸越しを含む。)、支払承諾、外国為替その他の取引によつて生ずる当該金融機関に対する一切の債務の履行について包括的に履行方法その他の基本的事項を定める契約書
四 信用取引口座設定約諾書その他名称のいかんを問わず、金融商品取引法第二条第九項(定義)に規定する金融商品取引業者又は商品先物取引法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第二条第二十三項(定義)に規定する商品先物取引業者とこれらの顧客との間において、有価証券又は商品の売買に関する二以上の取引(有価証券の売買にあつては信用取引又は発行日決済取引に限り、商品の売買にあつては商品市場における取引(商品清算取引を除く。)に限る。)を継続して委託するため作成される契約書で、当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち受渡しその他の決済方法、対価の支払方法又は債務不履行の場合の損害賠償の方法を定めるもの
五 保険特約書その他名称のいかんを問わず、損害保険会社と保険契約者との間において、二以上の保険契約を継続して行うため作成される契約書で、これらの保険契約に共通して適用される保険要件のうち保険の目的の種類、保険金額又は保険料率を定めるもの
もっとも、令26条2号から5号までの文書は、特定の業種で作成されることが多く、また、その文書の形式も定型化されていることが多いため、実務上、問題となることは少ないといえます。他方で、令26条1号の文書は、幅広い業種で作成され、しかも、多数の要件が定められているため、実務上、度々、問題となります。そこで、以下では、令26条1号の文書の要件について解説します。
3 令26条1号の文書の要件
令26条1号の文書の要件ごとに番号を付すと次のとおりです。
【令26条1号文書の要件】
特約店契約書その他名称のいかんを問わず、①営業者(法別表第一第十七号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう。)の間において、②売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する③二以上の取引を継続して行うため作成される契約書で、④当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの(電気又はガスの供給に関するものを除く。)
まず、①その契約が営業者間で交わされることが必要です。
そして、②その契約が売買、売買の委託、運送、運送取扱い、請負のいずれかに関するものであることが必要です。
また、③その契約が二以上の取引を継続して行うために交わされることも必要です。
最後に、④二以上の取引に共通して適用される目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のいずれか1つ以上を定めていることが必要です。
4 要件①(営業者間)
営業者「間」であることを要しますので、契約当事者の双方が営業者であることが必要です。契約当事者のいずれか一方が営業者ではない場合、令26条1号の文書にはあたらないということになります。
個人事業主や会社(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)は、利益を得る目的で同種の行為を継続的、反復的に行っているため、営業者にあたります。他方で、たとえば、以下の者は、営業者にはあたりません(印紙税法基本通達第17号文書22~27、国税庁質疑応答事例17号文書7、18~25参照)。
【営業者にあたらない者】
1. | 国や地方公共団体 |
---|---|
2. | 公益社団法人、公益財団法人、学校法人などの公益法人 |
3. | 公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的とする人格のない社団 |
4. | 法人労働組合、商品取引所、NPO法人、医療法人等 |
5. | 店舗その他これに類する設備を有しない農業、林業又は漁業に従事する者 |
6. | 医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、保健師、助産師、看護師、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、獣医師等 |
7. | 弁護士、弁理士、公認会計士、計理士、司法書士、行政書士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、設計士、海事代理士、技術士、社会保険労務士等 |
5 要件②(取引の種類)
その契約が売買、売買の委託、運送、運送取扱い、請負のいずれかに関するものであることが必要です。
売買とは、売主がある財産権を買主に移転し、買主がこれに対してその代金を支払うことをいいます。単発的な売買契約の場合は不課税ですが、継続的な売買契約の場合には第7号文書にあたる可能性があります。
売買の委託とは、特定、個別の物品等を販売し又は購入することを相手方に委託することをいいます。たとえば、問屋契約がこれにあたります。
運送とは、運送人が物品又は旅客の場所的移動を約し、依頼人がこれに報酬を支払うことをいいます。単発的な運送契約の場合は、第1号の4文書にあたりますが、継続的な運送契約の場合には第7号文書にあたる可能性があります。
運送取扱いとは、物品運送の取次ぎを行うことをいいます。この場合、顧客→運送取扱人→運送人、という3当事者が登場します。顧客→運送取扱人間の契約は、運送取扱いにあたります。他方で、運送取扱人→運送人の契約は、運送にあたります。
請負とは、当事者の一方が仕事の完成を約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することをいいます。どのような業務が「請負」にあたるのかについては、第2号文書の勘所-第1回 請負、売買、委任の区別-をお読みください。
6 要件③(二以上の取引)
その契約が二以上の取引を継続して行うために交わされることが必要です。つまり、それが「基本契約書」にあたる必要があります。どのような契約書が「基本契約書」にあたるのかについては、第7号文書の勘所-第1回 基本契約と個別契約の違い- をお読みください。
7 要件④(取引条件)
目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のいずれか1つ以上が定められていることが必要です。
目的物の種類とは、取引の対象の種類をいいます。売買の場合には売買の目的物の種類、請負の場合には仕事の種類・内容等がこれにあたります。たとえば、テレビ、ステレオ、ピアノというような物品等の具体的な品名だけでなく、電気製品、楽器というような多数の物品等を包括する名称も目的物の種類にあたります(印紙税法基本通達第7号文書8)。
取扱数量とは、1取引当たり、1月当たり等の具体的な取扱数量をいいます。たとえば、「1月当たりの取扱数量は100台以上とする」、「1カ月の最低取扱数量は50トンとする」、「1カ月の取扱目標金額は100万円とする」といった定めがこれにあたります(印紙税法基本通達第7号文書9)。
単価とは、1単位当たりの具体的な数値をいいます(印紙税法基本通達第7号文書10)。たとえば、「1メートル当たりの単価は100円とする」、「1個の単価は500円とする」、「1カ月の報酬は30万円とする」といった定めがこれにあたります。
対価の支払方法とは、対価の支払に関する具体的な手段をいいます。たとえば、「毎月分を翌月10日に支払う」、「預金口座振替の方法により支払う」、「借入金と相殺する」といった定めがこれにあたります(印紙税法基本通達第7号文書11)。なお、「相殺することができる」旨の規定は、対価の支払方法を定めたことにならないため、注意を要します。
債務不履行の場合の損害賠償の方法とは、債務不履行の結果生じる損害の賠償として給付されるものの金額、数量の計算、給付の方法等をいいます(印紙税法基本通達第7号文書12)。たとえば、「債務不履行の場合は、遅延損害金として年3%の割合の金員を支払う」といった定めがこれにあたります。
再販売価格とは、商品の製造業者又は販売業者から買い受ける事業者等がその商品を販売(転売)する際の価格をいいます。再販売価格の取り決めは、独占禁止法により原則として禁止されており、公正取引委員会が指定する特定の商品(書籍、雑誌、新聞、音楽CDなど)に限って行うことが認められています。
8 まとめ
実務上、第7号文書として問題となるのは、令26条1号の文書です。令26条1号の文書は、今回解説したとおり、多数の要件を定めていますので、これらを漏れなく1つずつ検討することが肝要です。
弁護士プロフィール
弁護士 山田 重則(やまだ しげのり)
鳥飼総合法律事務所所属。
一橋大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。
印紙税相談室に所属し、企業等からの印紙税の相談対応や社内研修の実施など、印紙税に関する幅広い業務を行う。
新日本法規出版株式会社・鳥飼コンサルティンググループ主催の印紙税検定<中級篇>、弁護士ドットコムオンラインセミナー「弁護士が知っておくべき印紙税のポイント」にて講師を務める。
著書に「迷ったときに開く 実務に活かす印紙税の実践と応用」がある。
鳥飼総合法律事務所URL:https://www.torikai.gr.jp/services/stamp/
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