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何をすると課税されるの?-課税文書の作成とは 第3回「紛らわしい「作成」、「作成者」の判断」

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この連載コラムでは、印紙税の基本や誤解が生じやすい点について、鳥飼総合法律事務所弁護士の沼野友香 氏と山田重則 氏が易しく解説します。今回は、「何をすると課税されるの?-課税文書の作成とは―」というタイトルで、課税文書の作成に関してよくご質問を頂く事例を整理して4回に分けて連載をさせていただきます。その第3回として、今回は、「作成」、「作成者」について判断に迷う事例を解説します。

1 「契約書」になる申込書の「作成者」

⑴ 申込書が「契約書」になる場合

申込書、注文書、依頼書といった表題の文書(以下では、単に「申込書」といいます)は、通常は、一方当事者の申込の意思しか記載されていませんので、これが「契約書」になることはありません。しかし、印紙税の実務上は、文書の表題が「申込書」であったとしても、それが契約の成立を証明することができる場合には、「契約書」として扱われます。印紙税法基本通達21条2項では、申込書が「契約書」になる場合として、以下の3つの場合を挙げています。

図1 申込書が「契約書」として扱われる場合

① 契約当事者の間の基本契約書、規約又は約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合における当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものを除く。

② 見積書その他の契約の相手方当事者の作成した文書等に基づく申込みであることが記載されている当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものを除く。

③ 契約当事者双方の署名又は押印があるもの

申込書が上記①~③のいずれかの場合にあたる場合には、「契約書」として課税文書にあたる可能性があります。印紙税法基本通達21条2項が挙げている、この3つの場合についての詳細は、「これって課税文書?-過去の新聞報道を題材に 第3回「契約書になる申込書」とは」 をご参照ください。

⑵ ①の場合の「作成者」

ある文書の「作成者」、つまり、印紙税の納税義務者は、その文書が「単独作成文書」と「共同作成文書」のどちらにあたるかによって判断されます。単独作成文書の場合には、その文書を交付した者が「作成者」となり、共同作成文書の場合には、その文書に署名、押印をした契約当事者双方が「作成者」となります。以上の点については、「何をすると課税されるの?-課税文書の作成とは 第2回「単独作成文書と共同作成文書の取扱い」」 をご参照ください。
さて、①の場合の申込書は、申込者が単独で作成する文書ですので、単独作成文書にあたります。そのため、この文書を交付する申込者が「作成者」となります。

※A株式会社融資約款第13条には「融資申込者は、融資約款別紙3の申込書の提出をもって融資の申し込みをするものとし、これにより融資契約が成立するものとする。」との定めがあるものとします。

 図2の事案の融資申込書では、申込者であるB株式会社が「作成者」となります。そのため、B株式会社が印紙税の納税義務を負い、B株式会社はこの融資申込書に印紙を貼った上でA株式会社に交付する必要があります。


 ⑶ ②の場合の「作成者」

②の場合の申込書も、①の場合の申込書と同様、単独作成文書にあたります。そのため、この文書を交付する申込者が「作成者」となります。

図3の事案の製品加工注文書についても、申込者であるB株式会社が「作成者」となるため、B株式会社はこの注文書に印紙を貼った上でA株式会社に交付する必要があります。

⑷ ③の場合の「作成者」

③の場合の申込書の「作成者」については、注意を要します。③の場合の申込書には、契約当事者双方の押印がありますので、一見すると契約当事者双方が「作成者」になるようにも思われます。しかし、③の場合の申込書は、一方が申込の意思を表示する時点と他方が承諾の意思を表示する時点とが離れており、他方が承諾の意思を表示したところで初めて契約が成立します。これは、通常の「請書」の場合と同様です。そのため、一方が申込の意思を表示して他方に交付し、他方が承諾の意思を表示して一方に返送するというやり取りを前提にしている申込書については、「請書」と同様に、承諾の意思を表示した他方当事者による単独作成文書となります。したがって、③の場合の申込書については、承諾の意思を表示した他方当事者のみが「作成者」となります。

図4の事案の工事発注書については、申込をしたのがB株式会社であり、その申込を承諾したのがA株式会社です。そのため、この発注書の「作成者」はA株式会社となり、A株式会社は印紙を貼った上でこの発注書をB株式会社に返送する必要があります。

2 消費貸借契約の保証人や不動産売買契約の仲介人に交付する文書の「作成者」

 ⑴ 契約当事者以外の者に交付する文書の取扱い

課税文書となる契約書については、作成した正本の数だけ印紙税が課税されます。つまり、いずれの正本にも印紙を貼る必要があります。しかし、契約当事者以外の者、たとえば、監督官庁、融資銀行などの「その契約に直接関与しない者」に交付する正本については、その交付先が文書に記載されている場合には、印紙税は課税されません(印紙税法基本通達20条)。

もっとも、消費貸借契約の保証人や不動産売買契約の仲介人は、「その契約に直接関与しない者」にはあたらないため、この取扱いの適用はなく、これらの者に交付する正本もまた課税文書となります。


⑵ 保証人や仲介人に交付された文書の「作成者」

消費貸借契約書には、金銭の貸主と借主のほかに保証人も押印をすることがあります。

さて、この金銭消費貸借契約書には、株式会社A、B、Cのそれぞれの押印があるため、一見するとこの3社が「作成者」になるようにも思われます。しかし、この金銭消費貸借契約書は消費貸借に関する契約書(第1号の3文書)であり、その課税事項はあくまで消費貸借の事実です。そのため、この文書の契約当事者は、消費貸借契約の当事者である株式会社Aと株式会社Bであり、その「作成者」もまた株式会社Aと株式会社Bとなります。

先ほど解説したとおり、消費貸借契約の保証人に交付する正本もまた課税文書となります。そのため、株式会社Aと株式会社Bは、株式会社Cに交付する正本に貼る印紙代についても負担する必要があります。このように、株式会社Cはこの契約書に押印をしていますが、「作成者」にはならず、印紙代を負担する必要がありません。

以上の結論は、不動産売買契約書に仲介人が押印し、仲介人に交付する不動産売買契約書についても同様です。つまり、不動産の売主と買主とが仲介人に交付する正本に貼る印紙代についても負担する必要があります。


3 まとめ

今回は、「誰が印紙税を負担するか」という点について判断に迷う事例について解説をしました。「契約書」については、通常は押印をした者が「作成者」として印紙税の納税義務者になりますが、常にそうなるとは限りません。取引先から印紙の納付を求められた場合、税務調査で納付漏れを指摘された場合などには、本当に自社が印紙税の納税義務者になるのか検討されたほうがよいでしょう。

弁護士プロフィール

弁護士 山田 重則(やまだ しげのり)

鳥飼総合法律事務所所属。
一橋大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。

印紙税相談室に所属し、企業等からの印紙税の相談対応や社内研修の実施など、印紙税に関する幅広い業務を行う。
新日本法規出版株式会社・鳥飼コンサルティンググループ主催の印紙税検定<中級篇>、弁護士ドットコムオンラインセミナー「弁護士が知っておくべき印紙税のポイント」にて講師を務める。
著書に「迷ったときに開く 実務に活かす印紙税の実践と応用」がある。

鳥飼総合法律事務所URL:https://www.torikai.gr.jp/services/stamp/

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