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人事総務ご担当者様向けクイズシリーズ人事総務ご担当者様向け 第21回実務トレーニングクイズ

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人事・総務の業務上で、知識をどのように実務に当てはめるかお悩みになる場面も多いかと存じます。

実務に不安を抱える人事・総務のご担当者様にお役立ていただけるよう、実務にまつわる問題をクイズ形式でご用意しました。

こちらの問題で自分の知識を確認してみましょう。

問1 賃金のデジタル払いについて

A社は、若年層へのアピールとして賃金のデジタル払いを導入する予定です。賃金の半分をこれまで通り銀行口座へ、残り半分をデジタル払いで支給したいと考えています。A社は全従業員向けの説明会を開催し、そこで過半数の同意を取得した場合、就業規則を改定し、労使協定を締結するつもりでいます。そして、同意していない従業員も含めて全員の賃金をデジタル払いで支給する予定です。この導入の流れに何か問題はありますか?次のうちから正しいものを選んでください。

  1. この流れで特に問題はない
  2. 賃金を口座振込とデジタル払いで分けて支給することはできない
  3. 同意しない従業員の賃金をデジタル払いで支給することはできない

正解:C…同意しない従業員の賃金をデジタル払いで支給することはできない。

解説:賃金は原則として通貨(現金)で支払うことが求められますが、労働者の同意を得た場合に限り銀行口座等への振込が可能となります。

令和5年4月以降、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進み、資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払い(いわゆる賃金のデジタル払い)が可能になりました。

賃金のデジタル払いを導入するためには従業員からの書面による個別の同意が必要です。同意を得る前提として、制度の内容や留意事項を事前に従業員に対して説明する必要があります。今回の導入計画では、制度の内容説明や就業規則の改定、労使協定の締結には問題ありません。しかし、実際にデジタル払いを行うためには、従業員から個別に同意書を提出してもらうことが必要です。

また、賃金の一部を指定資金移動業者の口座で受け取り、残りを銀行口座で受け取ることは可能です。

令和5年6月19日時点で、賃金のデジタル払いを行うことのできる「厚生労働大臣が指定した資金移動業者」には楽天グループ、リクルートMUFGビジネス、KDDI、PayPayが申請を提出しています。厚生労働省は指定資金移動業者の審査には数か月かかる見込みとしており、今後の審査結果に注目が集まっています。

問2 給与明細の発行について

従業員を雇用する際の決まりごとを定めた労働基準法では、給与明細の発行義務が定められていません。よってA社では、従業員に給与を支払う際に給与明細を発行していませんが、従業員が給与に関する疑問や要望がある場合には、いつでも質問を受け付ける窓口を設置しており、丁寧に対応しています。ある日、パートとして勤務しているBさんから、「給与明細を発行してほしい。そもそも給与明細の発行は会社の義務ではないのか」と要望が出されました。会社の対応として正しいものを、次のうちから選んでください。

  1. 給与明細の発行は会社の義務であるため、ただちに対応する
  2. 労働基準法で義務付けられたものではなく、給与明細は任意であるため対応しなくてよい
  3. 給与明細を求められた場合、その従業員については発行義務が生ずるため、個別に対応しなければならない

正解:A…給与明細の発行は会社の義務であるため、ただちに対応する

解説:労働基準法には給与明細の発行義務が明記されていませんが、所得税法(所得税法第 231 条)により、「給与を支払う者は給与の支払を受ける者に支払明細書を交付しなくてはならない」と定められています。したがって、会社は従業員に給与明細書を発行する義務があります。ただし、給与の支払いを受ける者の承諾を得て、電磁的方法により給与明細を提供することは可能です。

給与明細書は、給料がいくら支払われたのか、税金や保険料はいくら引かれているのかなど重要な証拠となるものですから、給与明細に疑問がある場合やトラブルが発生した場合に備えて、給与明細の内容をしっかり確認し、万が一のトラブルに備えて保管しておくことが大切です。

問3 残業代割増率改定と随時改定の関係について

令和5年4月より、時間外労働60時間超の割増率が中小企業においても25%以上から50%以上に引き上げられました。さて、ここで注意しなければいけないのが、残業代割増率改定と社会保険料の随時改定の関係です。残業代割増率改定は「支給率の変動」となりますので、随時改定の起算となるといえます。では賃金の締め日が毎月末日、翌月15日支払いの会社において、どのような場合に随時改定を考えなければいけないでしょうか。次のうちから正しいものを選んでください。

  1. 令和5年4月に60時間超の時間外労働があった場合、5月・6月・7月に支払われる給与で、8月随時改定の算定の対象になる
  2. 令和5年5月に初めて60時間超の時間外労働があった場合、6月・7月・8月に支払われる給与で、9月随時改定の算定の対象となる
  3. 令和5年4月以降、60時間超の時間外労働が発生したら、その都度、随時改定の算定の起算となる

正解:A…令和5年4月に60時間超の時間外労働があった場合、5月・6月・7月に支払われる給与で、8月随時改定の算定の対象になる

時間外労働の割増賃金率の引き上げは、随時改定の条件である「固定的賃金の変動(支給率の変動)」に該当するため、随時改定の対象となります。手当の新設や支給率の変更があった場合、あくまでも、「条件の変更があった月=起算月」として考えます。その観点より、今回の場合は割増賃金率の引き上げられた令和5年4月が随時改定の起算月という考え方になり、4月~6月の3ヶ月間に1ヶ月でも60時間超の時間外労働がある月があれば、それに対する支給月に支払われる給与にて随時改定に該当するかを確認することになります。

今回の例である「賃金の締め日が毎月末日、翌月15日支払いの会社」であれば、4月~6月の3ヶ月間に1ヶ月でも60時間超の時間外労働がある月があれば、5月、6月、7月に支払われる給与にて、8月随時改定に該当するかを確認することになります。

上記ルールにより、5月に初めて60時間超の時間外労働があった場合、6月、7月、8月に支払われる給与にて、9月随時改定にはなりませんので注意が必要です。また、7月以降に初めて60時間超の時間外労働があったとしても、随時改定の対象にはなりません。

今回のクイズはいかがでしたでしょうか?

皆様に知識を広げていただくために、これからも同様の実務クイズを出題してまいりますので、今後ともぜひチェックしてください。

クイズ提供元:社会保険労務士法人 未来経営(ESコモンズ メンバー)

長野県松本市に拠点を置き、それぞれ専門分野を持つ5名の社会保険労務士が在籍しています。私たちのビジョンである「元気な会社作りのお手伝い」を実現するため、母体である税理士法人未来経営ともに、人事労務分野に積極的に携わり、トータルな企業経営サポートを実現しています。

ESコモンズ主宰 有限会社人事・労務 URL:https://www.jinji-roumu.com/

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※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。