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人事総務ご担当者様向けクイズシリーズ人事総務ご担当者様向け 第15回実務トレーニングクイズ

人事・総務の業務上で、知識をどのように実務に当てはめるかお悩みになる場面も多いかと存じます。

実務に不安を抱える人事・総務のご担当者様にお役立ていただけるよう、実務にまつわる問題をクイズ形式でご用意しました。

こちらの問題で自分の知識を確認してみましょう。

問1 週60時間を超える時間外労働の割増賃金

大企業ではこれまでも、月の時間外労働60時間以上の超過分に対して、50%以上の割増賃金を支払う義務が課せられていました。中小企業については長らく猶予措置がとられていましたが、2023年3月31日でその猶予措置が終了となり、4月1日からは中小企業においても月60時間超の時間外労働については50%以上の割増賃金を支払わねばなりません。
さて、この月60時間超という概念はどう考えればよいでしょうか。次のうちから正しいものを選んでください。

  1. 法定休日労働、時間外労働を合計した時間が60時間を超えた場合に、50%以上の割増賃金を支払わねばならない。
  2. 法定休日労働、時間外労働、深夜労働を合計した時間が60時間を超えた場合に、50%以上の割増賃金を支払わねばならない。
  3. 時間外労働が60時間を超えた場合に、50%以上の割増賃金を支払わねばならない。

正解:C…時間外労働が60時間を超えた場合に、50%以上の割増賃金を支払わねばならない。

解説:月60時間超の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれません。例えば日曜日が会社の法定休日だとした場合、月~土曜日までの時間外労働が、1ヶ月の起算日から累計して60時間を超えた時点から50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません 。

深夜労働については、本算定とは分けて考えるため、月60時間超の時間外労働時間を深夜(22:00~翌5:00)の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%以上+時間外割増賃金率50%以上=75%以上の割増が必要となります。

また月60時間超の時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金支払の代わりに、有給の休暇(代替休暇)を付与することが認められています。代替休暇制度を導入するにあたっては、労使協定での定めが必要となります。算定方法、休暇の単位、取得日の決定方法などを労使で協議して決定します。

問2 割増賃金の計算の基礎となる賃金について

X病院で働くA看護師の賃金は以下の通りです。さて、A看護師が時間外労働をした際に支払われる割増賃金の計算の基礎となる賃金に含まれないものはどれでしょうか。次のうちから正しいものを選んでください。
A看護師の労働条件(賃金)
・基本給 :月額200,000円
・役職手当:月額50,000円
・家族手当:月額15,000円
・通勤手当:月額10,000円
・資格手当:月額30,000円
・職能加算:月額5,000円
・夜勤手当:夜勤(22時から翌朝5時)1回につき5,000円を支給

  1. すべての諸手当が割増賃金計算の基礎として含まれる。
  2. 家族手当、通勤手当、夜勤手当は割増賃金計算の基礎に含まれない。
  3. 通勤手当、職能手当は割増賃金計算の基礎に含まれない。

正解:B…家族手当、通勤手当、夜勤手当は割増賃金計算の基礎に含まれない。

解説:割増賃金の基礎となるのは、所定労働時間の労働に対して支払われる「1時間当たりの賃金額」です。例えば月給制の場合、各種手当も含めた月給を、1か月の所定労働時間で割って、1時間当たりの賃金額を算出します。このとき、下記①~⑦は、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されていることなどにより、基礎となる賃金から除外することができます(労働基準法第37条第5項、労働基準法施行規則第21条)。

①家族手当 ②通勤手当 ③別居手当 ④子女教育手当 ⑤住宅手当⑥臨時に支払われた賃金⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

なお、①~⑦は例示ではなく、限定列挙とされているものです。これらに該当しない賃金はすべて算入しなければなりません。これら手当は名称で判断するのではなく、実態で判断する点には注意が必要です。

では夜勤手当はなぜ参入しないのかということになりますが、夜勤業務は所定労働時間(通常の労働時間)の労働にはあたらず、通常の労働時間の賃金には該当しません。よって割増賃金の基礎算入する必要がないというのが行政解釈(昭和41.4.2基収1262号)です。この通達に従えば、割増賃金の基礎に参入する必要はないということになります。

問3 住宅手当の割増賃金への算入

住宅手当を新たに設けようと検討しています。住宅手当は、労働基準法施行規則第21条により、割増賃金の計算基礎として参入しなくてもよいこととなっています。ただし、ここで認められる住宅手当は「住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうものであり、一律に支払われるようなものは、ここでいう住宅手当には該当しない」とされています。
今回新たに住宅手当を設けるにあたっては、家族の有無によって間取りなども広くなり費用がかさむことが予想されるため、扶養家族がいる者には5万円、扶養家族がない者には3万円を支給するとするルールにしようと考えています。この場合の住宅手当は、割増賃金の基礎に算入する必要はないでしょうか。次のうちから正しいものを選んでください。

  1. 扶養家族の有無は、住宅に要する費用と直接的な関係にあるとはいえないため、割増賃金の計算基礎に算入しなくてはいけない。
  2. 扶養家族の有無により住宅手当が一律ではなく変動するため、割増賃金の計算基礎に算入する必要はない。
  3. 扶養家族がいない場合に支給される3万円は割増賃金の計算基礎に算入しなくてもよいが、3万円を超える2万円については参入しなくてはいけない。

正解:A…扶養家族の有無は、住宅に要する費用と直接的な関係にあるとはいえないため、割増賃金の計算基礎に算入しなくてはいけない。

解説:以前には住宅手当は割増賃金の計算基礎に算入すべき手当でしたが、平成11年10月1日の労働基準法改正により、算入しないことができる賃金として追加されました。名称にかかわらず、実際に住宅費に対して補填される手当かどうかが判断基準となります。具体的には次のとおりです。

(1)割増賃金の基礎から除外される住宅手当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうものであり、手当の名称のいかんを問わず実質によって取り扱うことが必要
(2)住宅に要する費用とは、賃貸住宅については、居住に必要な住宅の賃借のために必要な費用、持家については居住に必要な住宅の購入、管理等のために必要な費用
(3)費用に応じた算定とは、費用に定率を乗じた額とすることや、費用を段階的に区分し費用が増えるに従って額を多くすること
(4)住宅に要する費用以外の費用に応じて算定される手当や、住宅に要する費用に関わらず一律に定額で支給される手当は、除外される住宅手当には当たらない

以上により、扶養家族の有無により手当が変動する住宅手当は、住宅に要する費用と直接的な関係にあるとはいえないため、割増賃金の計算基礎に算入しなくてはいけません。

今回のクイズはいかがでしたでしょうか?

皆様に知識を広げていただくために、これからも同様の実務クイズを出題してまいりますので、今後ともぜひチェックしてください。

クイズ提供元:社会保険労務士法人 未来経営(ESコモンズ メンバー)

長野県松本市に拠点を置き、それぞれ専門分野を持つ5名の社会保険労務士が在籍しています。私たちのビジョンである「元気な会社作りのお手伝い」を実現するため、母体である税理士法人未来経営ともに、人事労務分野に積極的に携わり、トータルな企業経営サポートを実現しています。

ESコモンズ主宰 有限会社人事・労務 URL:https://www.jinji-roumu.com/

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※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。