新規CTA

更新日:

人事総務ご担当者様向けクイズシリーズ人事総務ご担当者様向け 第14回実務トレーニングクイズ

jr221101_img01_pc.jpg
jr221101_img01_sp.jpg

人事・総務の業務上で、知識をどのように実務に当てはめるかお悩みになる場面も多いかと存じます。

実務に不安を抱える人事・総務のご担当者様にお役立ていただけるよう、実務にまつわる問題をクイズ形式でご用意しました。

こちらの問題で自分の知識を確認してみましょう。

問1 従業員が副業・兼業を行うときの時間外割増賃金について

所定労働日が月曜日から金曜日まで、1日の所定労働時間が8時間であるX社にて、従業員A氏から「会社の休日である日曜日に別の会社Y社で1日4時間のアルバイトをしたい」という副業・兼業の届出が出されました。X社では就業規則において、副業・兼業は認めています。A氏がアルバイトをするのは日曜日のみです。 この場合、A氏はすでにX社で週40時間の法定労働時間を労働しているため、副業・兼業先のY社でのアルバイト分は週法定労働時間を超えた労働になり、時間外割増賃金支払いの対象になると考えられます。 さてこの場合、週法定労働時間を超えた割増賃金の支払い義務はX社、Y社どちらにあるでしょうか。X社では週の起算日は日曜日としています。次のうちから正しいものを選んでください。

  1. X社の週の起算日が日曜日なので、週40時間を超える金曜日に労働をさせるX社が支払う。
  2. 労働契約が先の会社が時間外割増賃金支払いを行う義務があるのでX社が支払う。
  3. 労働契約が後の会社が時間外割増賃金支払いを行う義務があるのでY社が支払う。

正解:C…労働契約が後の会社が時間外割増賃金支払いを行う義務があるのでY社が支払う。

解説:労働基準法において「労働時間は事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用は通算する」としています。今回のX社、Y社は別の事業主になりますが、上記の概念から労働時間は通算されます。

副業・兼業の場合に労働時間をどのように通算するかの解釈については、通達やガイドラインが示されています。今回の場合、A氏のX社、Y社での週所定労働時間を通算するとX社40時間+Y社4時間で44時間となります。この場合4時間の法定時間外労働が発生するので、この4時間に対しては割増賃金の支払いが必要になります。

ガイドラインでは、「労働時間を通算して、法定時間外労働が発生した場合は、時間的に後から労働契約を締結した使用者が、時間外割増賃金を支払う必要がある」としています。

このケースの場合はY社が後から労働契約を締結しているので、Y社に支払い義務が生じます。

なお、休憩、休日、年次有給休暇については労働時間に関する規定ではなく、通算をしません。各社で休日が取れていれば、法定休日労働を心配する必要はありません。

問2 健康保険における被扶養者の認定について

夫Xと妻Y夫婦と子Zの3人家族について、以下の状況の時、子Zはどちらの健康保険の被扶養者となるでしょうか。 夫Xは自営業で、住所地の国民健康保険に加入しています。直近の年間所得から算出した収入は400万円です。妻Yは就職し、被用者保険(協会けんぽや健康保険組合等)に加入しました。今後1年間の収入の見込み額が380万円となっています。 次のうちから正しいものを選んでください。

  1. 夫Xの方が収入が多いため、夫Xの被扶養者(国保に加入)となる。
  2. 収入の差額が1割以内のため、夫婦どちらの被扶養者にするのか選ぶことができる。
  3. 被用者保険は収入が低くても優先されるため、妻Yの被扶養者になる。

正解:A…夫Xの方が収入が多いため、夫Xの被扶養者(国保に加入)となる。

解説:令和3年4月30日に、厚生労働省から「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日保保発0430第2号・保国発0430第1号)」という通達が出され、被扶養者の認定について明確な取り扱い基準が定められました。主な内容は次の通りです。

≪夫婦ともに被用者保険の被保険者の場合≫

  • 被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの)が多い方の被扶養者とする。
  • 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。

≪夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合≫

  • 被用者保険の被保険者については年間収入を、国民健康保険の被保険者については直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較し、いずれか多い方を主として生計を維持する者とする。

夫Xと妻Y夫婦は後段の≪夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合≫に該当します。そのため、2人の収入差は1割以内ですが、扶養者を夫婦の裁量で選ぶことができません。子Zは収入が多い夫Xが扶養者と判断され、国民健康保険に加入することとなります。
なお、Cのような決まりはありません。

問3 通勤手当の過払いが発生した場合の精算について

X社では通勤手当として、従業員の自宅から会社までの距離に応じて、ガソリン代相当額を毎月支給しています。従業員が引っ越しをした場合は、引っ越しを行った翌月より距離に応じて通勤手当を変更しています。 従業員A氏は最近、会社の近くに転居したのですが、総務部への申請が遅れてしまい、1ヶ月分、従前の多めの通勤手当を支払ってしまいました。 この場合、次の給与計算を行う際に、その分を精算して計算し、A氏に賃金支払いを行うことは認められるでしょうか。次のうちから正しいものを選んでください。

  1. 賃金の全額払いの原則に抵触するため、精算はできない。
  2. 前月分の過払い賃金を当月分で精算する程度であれば、賃金の全額払いの原則に抵触せず、精算が可能。
  3. 賃金一部控除に関する労使協定書が交わされている場合に限り、精算は可能。

正解:B…前月分の過払い賃金を当月分で精算する程度であれば、賃金の全額払いの原則に抵触せず、精算が可能。

解説:労働基準法上、賃金とは、名称を問わず、労働の対象として支払うすべてのものを指します。もちろん通勤手当も賃金となりますので、賃金支払いの5原則が当てはまり、通貨で、直接労働者に、全額を支払わなければなりません。

一方、例外もあり、賃金一部控除に関する労使協定書が交わされている場合は、一部控除をして賃金支払いをすることが可能です。

今回のケースのような賃金過払いは、実務では時々発生するケースだと思います。今回のケースのような前月分の過払い賃金を当月分で精算する程度であれば、これは賃金の計算に関するもので、賃金の全額払いの原則には抵触せず、賃金一部控除に関する労使協定書が交わされていなくても精算が可能です。

過去の判例でも、過払いの時期と精算する時期が合理的に密着しており、事前に精算を行うことを予告し、その精算額が多額すぎないなど、精算を行う時期と方法、そして対象労働者の生活の安定を奪うほどのインパクトのあるものでなければ、法には違反しないとされています。

今回のクイズはいかがでしたでしょうか?

皆様に知識を広げていただくために、これからも同様の実務クイズを出題してまいりますので、今後ともぜひチェックしてください。

クイズ提供元:社会保険労務士法人 未来経営(ESコモンズ メンバー)

長野県松本市に拠点を置き、それぞれ専門分野を持つ5名の社会保険労務士が在籍しています。私たちのビジョンである「元気な会社作りのお手伝い」を実現するため、母体である税理士法人未来経営ともに、人事労務分野に積極的に携わり、トータルな企業経営サポートを実現しています。

ESコモンズ主宰 有限会社人事・労務 URL:https://www.jinji-roumu.com/

新規CTA

※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。