更新日:2019/05/07
働き方改革一括法案(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が2018年7月に公布されました。
これにより企業の労務管理を見直す必要があります。特に、残業時間や有給休暇の取得日数は細かい労務管理が求められます。この記事ではその対応方法について説明していきます。
働き方改革関連法案の施行はさまざまな議論があるものの、基本的には労働者にとって働きやすい環境をつくるために施行されるものという認識となっています。
そのため、現場の労働者がこの法案施行に伴い、自主的に働き方を変更しなければならないというわけではありません。さまざまな変更が求められるのは労務管理を行う企業側です。その主な理由として挙げられるのが、長時間労働上限規制と有給休暇義務化でしょう。働き方改革関連法案の施行に伴って変わることは多々ありますが、ここではこの2つに絞って労務管理の変化について見ていきます。
法案のポイントやPCAでできる対策を記載しました。是非ご覧ください。
長時間労働上限規制は、この法案施行によってなされる「同一労働、同一賃金の導入」と関わりがあります。これまで、社員やパート、派遣など、雇用形態が異なる人が同じ労働を行った場合でも賃金に違いがあるのが一般的でした。たとえば、雇用形態が異なる人々が同じ内容の文書を作成するとします。パートのAさんは、1時間で作業を完了させました。一方、社員のBさんは作業完了に丸々午前中を費やしました。それなのに、1時間あたりの賃金はパートのAさんのほうが少なかったという事例が多くあります。このような事態を防ぐため、この制度が導入されるのは非常に理にかなっているといえるでしょう。
一方、これまでは特定の労務に関する基準を明確にしていないケースも多いのが実情でした。例えば、終業時刻までに予定していた仕事が終わらず、残業して賃金を稼げばいいという考え方は、作業効率が悪くなってしまいます。その状況が労使間で暗黙の了解となってしまい「残業時間は後で調整すればいい」という認識となっていました。これは過重労働につながる恐れがあり、労使双方にとって決していいことではありません。ここで必要になってくるのが、労働時間が既定の時間を超えないよう、就業時間を厳密に管理することです。
今回の働き方改革関連法案では、年間720時間、単月100時間、2ヶ月~6ヶ月平均で80時間以内を上限とする罰則付き長時間労働の上限規制が導入されます。2ヶ月~6ヶ月平均というのは2ヶ月平均でも5ヶ月平均でも残業時間を80時間以内に抑える必要があるということになります。「締め日を過ぎてから」や「締め日の間近になってから」労働時間の上限を超えているという事態を防ぐためには、リアルタイムに残業時間を集計することが必須と言えます。
また、現時点では猶予期間中ですが、2023年4月から月60時間を超える時間外労働の割増率が引き上げられます。※大企業では実施済みです。
働き方改革関連法案施行では、有給休暇義務化も企業にとっての大きな変更点となります。
これまで、有給休暇の取得は労働者の権利でしたが、実際には業務が多忙などの理由で有給休暇を取得できず、未消化のまま消滅してしまっていたケースが数多くありました。しかし2019年4月以降は、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には1年以内に5日間の有給休暇の取得が義務化されます。労働者が自ら5日以上の有給休暇を取得した場合は不要ですが、取得していない労働者に対しては使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられます。これまでも労働者に対して有給休暇を消化することを促していた企業であれば特段の変更はないものの、そうでなければ「年次有給休暇の計画的付与制度」の導入を検討するなど対策が求められます。
また、有給休暇の管理簿の作成が義務となりました。今後は有給休暇の残管理だけでなく、半年で3日間の有給休暇を取得していない社員にアラートを出すなど進捗状況の管理も必要となってきます。
働き方改革関連法案施行に対応していくためには、個々の労務管理をこれまで以上に徹底する必要があります。企業によっては「なんとなく残業する」「みなし残業制だから…」「管理職ばかりだから…」という理由で、働いている時間の記録を取得していないケースもあります。
ただし、今回の法案の目的が「働き過ぎを防ぐことで、働く方々の健康を守り、多様な『ワークライフバランス』を実現できるようにする」ということにありますので、給与計算とは話をわけて始業時間・退勤時間のデータを記録する必要があります。
企業の労務管理は、2019年4月施行の働き方改革関連法案に限らず、今後も柔軟な変化が求められる課題でもあります。PCAでは就業管理システムや、リモートワークにも対応できるクラウドシステムなどをご用意しております。PCAの働き方改革のご提案ページをぜひご覧ください。