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数字の良い会社には「敬意」がある非財務情報を経理視点で読み解く第7回 敬意のある会社の社員は反応が早い

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反応の速度で人は親近感や疎外感を感じる

先日、仕事で必要なものをインターネットで購入した際に、領収書を自分で発行する箇所がHP上で見つからなかったので、購入先に「領収書を発行していただくことは可能かどうか」をメールで問い合わせました。すると翌営業日にすぐ顧客担当の方から丁寧なメールと領収書の発行手続きの段取りについて詳細に知らせていただけました。その担当者の方とは当然これまで全くお会いしたこともないですし、きっと今後もお会いすることはないと思いますが、それでもとてもその人や会社に親近感や信頼感が湧きました。ではそのメールのどこに私が親近感や信頼感が湧いたかと考えると、もちろん文面の中身もそうなのですが、やはり自分の送ったメールに「すぐ反応してくれた」ことに親しみや信頼を感じたのではないかと思うのです。たとえばいくら丁寧なメールを送ってくれても、その返信が、自分がメールを出して一週間後だとしたら、それまでの間は、きっとイライラしていたことでしょう。「こんなに丁寧なメールが書けるなら、どうしてすぐ『今確認中ですのでもう少しお待ちください』くらい連絡できないのかな」と思っていたかもしれません。言うまでもなく、このように迅速かつ丁寧に対応してくれる会社は、顧客も「対応が気持ちよかったから今後ももっと利用させてもらおう」「他の人にも勧めよう」となり、売上や利益が自然に伸びていきます。

 コロナ禍を過ぎて、今はまたフルタイム出社の会社が増えてきています。「やっぱり対面じゃないと一体感が生まれないね」という人達もいることと思いますが、作業的なやりとりは確かに対面のほうが細かいことも確認できるのですが、「職場の一体感」や「この人と仕事をしていて楽しい」というのは、実際は「その場に一緒にいる、いない」とは別の要素も大きいのではないかと思います。

反応が遅い、反応がないことに人は「敬意がない」と感じる

今、「敬意のある職場環境を作る」ことを目的とした職場研修をライフワークとして行っているのですが、どの職場においても「敬意がないと感じた行為」の上位に、「社内のメンバーに連絡をしてもすぐ返信・返答がなかったこと」という項目が上がってきます。敬意がない行為というと、「悪意のある行為」「攻撃的な行為」を思い浮かべる人が多いかもしれません。私も実際に研修を始める前はそう思っていました。しかし、敬意のない行為というのは、「何もしていない」「悪意のない」中にこそ集団生活においては潜んでいることが多いということを研修を始めて理解しました。

「折り返し連絡をして欲しい」と連絡を受けた当人たちは「なんだ、こいつか。誰が返信してやるものか」というつもりではなく、後から「なぜ連絡をしてくれなかったのか」と聞けばきっと「すみません、あとで連絡しようと思っていたのですが、忘れてしまいました」「他にやることが先にあって後回しにしてしまいました」といったように、悪意のないことがほとんどでしょう。一つ言えるとしたら「相手よりも自分の都合を優先してしまった」ということは言えるかもしれません。

自分の都合を優先してしまう人の特徴

ではなぜ、「自分の都合を優先してしまった」のでしょうか。多くの人は、相手から急ぎの連絡があったら、すぐ折り返し連絡をするか、「今立て込んでいるので後から連絡します」と、一報すると思います。それができないのは、「余裕がないから」です。自分の仕事に余裕があれば、相手のことを思いやれる余裕があるのですが、相手の急ぎの用事以上に自分に余裕がないので、相手からの連絡を結果的に「放置」してしまうことが起きます。それが相手からすると「放置された=敬意のない行為」とみなされてしまうのです。「自分に余裕がない」時の対応が、相手からは敬意がない、常識がないとみなされてしまうことがコミュニケーションの世界では多いのです。自分がそのような敬意のない行為を無意識にしてしまわないためには、周囲のスピード感を意識して仕事に取り組むことです。

「周囲のスピードの速さ > マイペースの速さ」

となったときに、周囲からの連絡に対応する余裕がなくなる状況が起きやすくなりますので、そうならないように仕事のスピードを少し上げる、あるいは準備により時間をかける、ということで対応をすると良いと思います。

経費精算や請求書の申請が遅い社員には…

経理の皆さんの中にも、経費精算が未申請の現場の社員に「明日までに申請お願いします」と連絡をしても無反応だった時に「敬意がない」と腹が立ったりモヤモヤしたりした経験があることでしょう。そのような時に「どうして連絡してくれないんですか」と怒りたくなってしまいますが、その人は経理や経理社員を軽視しているのではなく、「余裕がない」のです。冷静に考えれば、経費精算の申請は難しい作業ではありませんし、そもそも申請しなければ本人が自腹をきることになるので、本人自身が損をしてしまいます。それなのに期日までにできないということはその人に余裕がない状況が起きてしまっているということだと思います。そのような状況で怒ってもますます相手を追い込んでしまうことになりますので、その人に「お仕事大変そうですね」と声をかけて話や悩みを聞いて心に余裕を持ってもらい関係性を築くのもいいですし、状況が変わらない場合は、経理と現場の部長同士でその人について経費精算をできるくらいの余裕を現場の仕事上で持たせてあげるような対応をして頂くのもいいと思います。

筆者プロフィール

前田 康二郎(まえだ こうじろう)

流創株式会社代表取締役。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。

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