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数字の良い会社には「敬意」がある非財務情報を経理視点で読み解く第4回 非正社員への配慮や気遣いの有無が社内の生産性に影響する

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「非正社員」の業務内容が変わってきた

今の時代は正社員だけでチームを編成している会社を見つけるほうが難しいのではないかと思います。派遣社員や業務委託など、さまざまな雇用形態の人を組み合わせてなんとか業務をまわしているという会社が多いのではないでしょうか。インターンがチームメンバーとして参加している会社も今はあることでしょう。以前はそのような「非正社員」の人達は、正社員のサポート的な業務をすることが中心でしたが、今は専門的なスキルを持った非正社員を即戦力として雇用し、その人を中心に業務を行ってもらうケースもあります。それくらい、正社員と非正社員の立場や関係性はいろいろな意味で「主従関係」から「協力関係」に近い関係性になってきているともいえます。そのような環境であっても、会社との契約関係においては正社員と非正社員とでは大きな隔たりがあります。中でも非正社員の立場から正社員に配慮してもらえたら嬉しいのが「勤怠」です。

「5分の遅刻がなぜ悪いのか」の答え

非正社員の場合、「遅刻をしても平気な顔で出社をする」という概念がありません。なぜならそのような行為を繰り返していたら即座に契約を切られる可能性があるからです。もし私が正社員の立場で、そのような非正社員を雇ってしまったら指導をしますし、それでも改善しなかったら契約を満了させていただくことも検討するでしょう。その一方で、正社員の中には、遅刻をしても平気な顔で出社をしてくる人もいます。

同じ遅刻でも、「すみませーん!」とバタバタと走り込んで皆に謝りながら着席する正社員であれば「寝坊でもしたのかな。たまにはそういうこともあるよね」と思いますが、悠然とノッソリノッソリと歩いてきて「うぃっす」と席に着く正社員、電車を1本早く乗れば間に合うのに、毎日必ず5分遅刻してくる正社員、無断遅刻をしている部下に上司が電話をしても無視する正社員というのも聞いたことがありますが、そのような正社員が自分の席の近くにいると思うだけで、非正社員はモチベーションが下がります。その人と仕事を関わっている、関わっていないに関係なくそうなってしまうのでさらにやっかいです。

会社員時代、ある正社員が、毎日5分遅刻をしてくるので直属の上司に怒られていた時、「別に私が5分遅刻したところで会社は潰れませんよね」と言い返しているのを見て、「確かに」と不覚にも思ってしまったことがあります。(当然その社員は上司にさらに怒られたわけですが)。その時は私も、もし自分が聞かれたらどう答えたら良かったのか良い回答が思い浮かびませんでしたが、正社員でなくなった今の立場なら正社員が遅刻をしてはいけない理由は答えられます。「毎日5分遅刻をしてくる正社員を見せられている非正社員は朝からモチベーションが下がり生産性も下がるので、すぐは潰れないけれど、潰れる方向には必ず向かっていく」と答えると思います。

正社員の勤怠が良い会社にはモチベーションの高い非正社員が集まる理由

正社員の勤怠の悪さを見せられた非正社員の中のうち「他の会社にすんなり行ける実力がある非正社員」は、次第にそちらの環境へと移っていきます。実力がある「非正社員」ほど、「正社員が規律正しく頑張っている会社」のほうがモチベーションの維持がしやすいので、そのような環境を好みます。おのずと組織というのは正社員が規律正しい会社ほど、非正社員もモチベーションの高い強い人材が揃っていく仕組みになっているのです。

インターンにしても同様です。自分は朝きちんと出社しているのに、遅刻を繰り返している「大人であるはずの」正社員を見て、インターンの人達の考え方も二手に分かれると思います。

  1. こんなに規律が緩いラクな会社だったら自分もこのまま正社員として入社したい!
  2. こんなに規律が緩い会社だったら自分がダメになってしまうから、ここには就職しないでおこう

1の社員がそのまま正社員として入社をしたら、それをまた新たなインターンが見ます。そしてラクをしたい人だけが集まる組織になっていく下地ができていくことでしょう。正社員の規律が正しい会社とそうでない会社ではどちらの生産性が高いかは明白です。そしてそれは売上利益にももちろん反映されていきます。「社員は、上司や社長のことをよく見ている」と言われる一方で、部下に無関心な社長や上司がいると言われることもあります。同様に、「非正社員は正社員のことをよく見ている」一方で、非正社員に無関心な正社員がいることもあるのが実情です。


「同じ人間」としての敬意が、立場の違う仲間に対してある組織は数字も出やすい

他者への関心の有無は、「配慮」「気遣い」など、その人自身の心の中に、他者に対する「敬意」があるかないかなのだと思います。社長が「自分は社長だから自分の好きなように仕事ができるからストレスはないけど、部下たちは全てが思うままにできるわけじゃないからストレスを感じることもあるだろうな」という配慮や気遣いがあるかないかで、社員が社長に対する忠誠心はかなり違うと思います。同様に、正社員が「非正社員の人達は遅刻や病欠一つでも契約に関わってくることがあるから大変だな」という配慮や気遣いがあれば、遅刻をしているのにのんびり正社員が出社してくる、ということもないはずですから、非正社員の正社員に対する貢献意欲も下がらずに済むと思うのです。現代の組織では、非正社員の人達に「正社員の人達のために協力したい、サポートしたい、貢献したい」といかに思ってもらえるかが重要です。

役職や雇用形態の違いはあっても、「同じ人間同士としての」配慮や気遣いなどの敬意があれば、立場の違いを超えて一丸となり、生産性の高い組織として売上利益を生むことができると思います。


筆者プロフィール

前田 康二郎(まえだ こうじろう)

流創株式会社代表取締役。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。

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