更新日:2022/07/15
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、日本語で「持続可能な開発目標」と訳され、持続可能な社会を実現するために2015年に国連で採択された、2016年から2030年までの世界共通の国際目標です。
SDGsの前身として、2000年9月に採択された国際ミレニアム宣言を基にし、2015年までに達成すべき目標としてまとめられたMDGs(Millenium Development Goals:ミレニアム開発目標)という国際目標があります。
MDGsは、極度の貧困と飢餓の撲滅など、2015年までに達成すべき8つの目標を掲げ、特に途上国の人々が直面していた多くの問題を解決する原動力となり、人々の生活環境が改善されました。その一方で、MDGsの達成状況から、様々な格差が浮き彫りとなり、「取り残された人々」の存在が明らかになりました。
そこで、MDGsの最終年2015年に、格差をなくす(誰一人取り残さない)ことを重要な柱とし、MDGsの取り組みをさらに強化すると共に、先進国を含め、より広範な社会問題や環境問題の解決をゴールとし、17の目標を定めたSDGsが採決されることになったのです。
現在、世界は、飢餓や人権侵害、経済格差、気候変動に伴う自然災害など様々な問題に直面しており、これらは、私たちの社会とビジネスの持続性の脅威となっています。
これらの問題を解決するため、SDGsでは持続可能な世界を目指すための17の目標、目標を実現するための169のターゲット、取り組みを評価するための244(重複を除くと232)の指標が設定されています。
SDGsは全ての人に関係があるものであり、ビジネスにとっても決して無関係ではない、持続可能なビジネスを実現するための目標でもあります。
ビジネスの成長や持続可能性を脅かす要因となるものには、自然災害を含む環境問題(Environment)、社会問題(Social)、組織統治問題(Governance)があります。
いずれもビジネスの制約要因となるものであり、これらの頭文字を取って総称したのがESG問題です。
環境問題(E)は、事業拠点の被災や資源価格の高騰、社会問題(S)は、顧客の購買力低下や市場の縮小、組織統治問題(G)は、法的規制の強化による企業の自由の制限といった形で、ビジネスの成長を脅かします。
近年、よく用いられる「VUCAの時代」。
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語であり、予測が難しく、変化が著しい新たな社会状況を指します。
世界のグローバル化、テクノロジーの進化ゆえの弊害に、様々な環境問題、社会問題が付随し、これまでの当たり前が全く通用しなくなっています。
そんな先の見えないVUCAの時代を生き抜く術として求められるのは、多様性・柔軟性・可変性。
今あるものから正解を見つけ出すのではなく、自分自身の、自分たちのよりよい形を見つけていく。そのためには、様々な関係性の中で、対話を繰り返し、時にはぶつかり合いながら、最適解を導き出していく必要があるのです。
予測不可能な時代の中で、企業に求められる''新しい働き方''、それは、ただ法令遵守に捉われるのではない、自社に応じた柔軟な働き方です。
では、この働き方改革の中で、ESG問題をどのように捉えていけばよいのでしょうか。
そのポイントは、ESG問題を社会のニーズと捉え、市場としての可能性を見出すことにあります。ESG問題は、いわば「みんなの困りごと」の集合体、つまりニーズの集合体と言えます。眼前の顧客のニーズだけでなく、より広範囲なESG問題がニーズとなる時代であり、そこにソーシャルビジネスとなりうる新しいビジネスの可能性が存在するのです。
SDGsの実践で言えることは、「決まった型はない」ということです。
SDGsを過度に意識すると、内容の壮大さに困惑し、身動きが取れなくなってしまいます。重要なことは、単なるトレンドとして迎合するのではなく、自社に合った適切な目標を選んで取り組み、社会と自社の持続可能性のために、主体的にSDGsを実践することです。
企業理念やノウハウ、社会的信用、ネットワークといった、無形資源をも評価し活用することが必要であり、自社の「らしさ」を活かすこと、つまりパーパス(存在意義)が重要です。
決まったやり方がないからこそ、自社が社会に提供している「本質的価値」とは何か、自分たちが届けたいものは何かを問い直すことが必要なのです。
近年、働き方改革やSDGsと深く関係するものとして、ウェルビーイングの概念が重要視されています。
ウェルビーイングとは、1946年に署名された世界保健機関(WHO)憲章の前文によると、下記のように定義されています。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
企業の価値向上に向けて、個々人のウェルビーイングを高めていくことが、多様な人材を取り込む術となります。
例えば、価値観やライフスタイルが異なる個々の能力を発揮できるような環境を整えたり、意欲がありながら就労できていなかった高齢者層や、家事や育児、介護といった家庭の事情と仕事を両立したいと考えている人材等を積極的に取り込み、健全かつ意欲的に働ける環境を作り出す必要があります。
こうしたウェルビーイングの実現に取り組むことは、企業にとってもメリットがあります。
ウェルビーイングの取り組みは、働き手にとって働きやすく、やりがいを感じられる企業を整備すること、つまり、就労者にとっての魅力となり、新たな人材獲得や定着率の向上に繋がります。また、仕事にやりがいを感じられるようになることにより、従業員の業務パフォーマンスが上がり、生産性向上や企業としての業績向上が期待できます。
さらに、ウェルビーイングに積極的に取り組むことは、企業のイメージ向上にもなります。従業員の健康や価値観を大切にする会社というイメージが浸透し、金融機関や取引先、顧客等、様々なステークホルダーからの信頼獲得に繋がるのです。
それだけ、心身の健康や、やりがいといった内的側面に、人々の意識が高まっていると言えるのではないでしょうか。
このように、ウェルビーイングを向上させることが、働き方改革の一手として個々の働きがいや、やりがいとなり、SDGs問題のテーマの1つ「働きがいも経済成長も」をはじめとした、目標達成に繋がっていきます。
SDGs、ESGを単なるリスクではなく、むしろ変革の機会と捉え、実践を積み重ねていくことが自社が生き残る術となり、結果として、社会問題の解決の一途となるのではないでしょうか。
有限会社人事・労務 コンサルタント。
903シティファーム推進協議会 事務局。
千葉大学教育学部卒業後、大学院在学中に903シティファームに出会う。活動に携わりながら、在学中のインターンを経て有限会社人事・労務に入社。労働・社会保険手続き、給与計算等を中心に、業務のサポートに関わり、中小企業の組織運営の健全性向上に注力する。
903シティファーム推進協議会では、コミュニティマネージャーとして、農と食を通じて地域をつなげるをコンセプトに、地域でのコミュニティ作りを実践している。
関心のある教育や環境問題の視点から、SDGsや、さらにその先のウェルビーイングな社会を目指し、自らの実践を踏まえて、企業や社員に向けた新しい働き方や経営のあり方を伝えるべく活動している。
・「法制化記念フォーラムin宇都宮 新しい働き方から持続可能な地域づくりに向かって」(ワーカーズコープ 北関東事業本部)
・「RSデイリーニュース #人事・労務のポイント」執筆(あいおいニッセイ同和損害保険モーター営業開発部)
・「SDGsの意味とは?目的やウェルビーイングなどの用語を解説」執筆(ピー・シー・エー株式会社 P-Tips)
・講演「若手社員の採用と定着」(主催:東上ガス株式会社)
・講演「法制化記念フォーラムin宇都宮 新しい働き方から持続可能な地域づくりに向かって」(主催:ワーカーズコープ北関東事業本部)