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人事総務ご担当者様向けクイズシリーズ人事総務ご担当者様向け 第1回実務トレーニングクイズ
人事・総務の業務上で、知識をどのように実務に当てはめるかお悩みになる場面も多いかと存じます。
実務に不安を抱える人事・総務のご担当者様にお役立ていただけるよう、実務にまつわる問題をクイズ形式でご用意しました。
こちらの問題で自分の知識を確認してみましょう。
問1 再出社した場合の割増賃金
不測の事態が発生し、一度帰宅した社員に再出社してもらい、午前0時30分~午前2時まで対応にあたってもらいました。この場合、この労働時間は前日の労働の延長となり、時間外の割増賃金の支払いは必要になるでしょうか。深夜割増賃金は支払われるものとします。給与計算の際、どのように判断しますか。次のうちから正しいものを選んでください。
- 前日の労働の延長となり、時間外の割増賃金の支払いが必要
- 前日の労働の延長には当たらず、当日の労働時間により割増賃金の有無が決定
- 深夜割増のみ支払えば、時間外の割増賃金の支払いは不要
正解:B.前日の労働の延長には当たらず、当日の労働時間により割増賃金の有無が決定
解説:労働時間の考え方に関しては、「1日とは、午前0時から午後12時までの暦日をいうもので、継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日をまたぐ場合でも1勤務として取り扱う」とされています。今回のケースでは、いったん勤務終了後に再出社したという状況であり、再出社前の労働時間の延長ではないか、という考えが浮かびますが、再出社後の業務開始が翌日となっています。このことから2暦日にわたる継続勤務ということにはなりません。つまり再出社後の業務を開始した時点からその日1日の労働がスタートしたと考えられ、当該日の実労働時間が8時間を超えない限り、時間外に関する割増賃金は発生しないという考えになります。
もし今回の再出社が午後23時~翌午前2時だとしたら、前日から継続している労働時間という扱いになり、再出社前の労働時間と合算して、実労働時間8時間を超える部分は時間外の割増賃金の支払いが必要になります。また、このように勤務が前日より継続し、翌日まで超過した場合は、その翌日の始業時刻までの労働について時間外の割増賃金を支払えばよいとされています。
当然ではありますが、午後10時~翌午前5時までの深夜時間帯での勤務には、時間外等とは別に深夜割増賃金の支払いが必要になりますので、お忘れなく。
問2 半日の年次有給休暇取得後に残業した場合の割増賃金の有無
1日の所定労働時間8時間の従業員が、午前半日(4時間)の年次有給休暇(以下、年休)を取得し、その後、その日の終業時刻を超えて1時間30分勤務をしました。この場合は時間外の割増賃金の支払いは必要になるでしょうか。給与計算の際、どのように判断しますか。次のうちから正しいものを選んでください。
- 年休の時間は労働時間とみなされるため、時間外割増賃金の支払いが必要
- 年休取得日のため休日労働とみなされ、時間外に加え休日割増賃金の支払いが必要
- 実労働時間で判断されるので、割増賃金の支払いの必要はない
正解:C.実労働時間で判断されるので、割増賃金の支払いの必要はない
解説:労働基準法第32条に定める労働時間は実労働時間をいうものであり、割増賃金の支払いが必要になるのは、実労働時間が法定労働時間を超えた場合に限ります。労働基準法では「実労働時間主義」をとっており、実際に労働をした時間が法定労働時間を超えない限り、割増賃金の支払い義務は生じません。
今回の場合は午前半日(4時間)の年次有給休暇を取得し、午後4時間の労働を行い、終業時刻後に1時間30分の労働を行っています。実際に労働をしている時間は、午後4時間+終業時刻後1時間30分の5時間30分となりますので、割増賃金の支払いは不要となります。業務に従事しなった理由が欠勤であろうと、年次有給休暇であろうと、実際に労働に従事しない時間は、実労働時間ではないとされています。
もちろんですが、終業時刻後に働いた1時間30分に対して割増賃金の支払いは必要ありませんが、通常の賃金の支払いは必要ですので、お忘れなく。
問3 残業代のみを翌月に支給できるか
給料の締め日から支払いまでの期間が5日とタイトであるため、残業代は1か月ずらして翌月に支払い、その月の出来高に応じて支給している手当は賞与時にまとめて支払したいと考えています。このような取り扱いは労働基準法上許されるでしょうか。次のうちから正しいものを選んでください。
- 残業代、出来高手当ともに当月の給料計算期間において支払う必要がある
- 残業代、出来高手当ともに支払日を変更することは可能である
- 残業代を翌月に支払うことは可能であるが、出来高手当を賞与でまとめて支払うことはできない
正解:C.残業代を翌月に支払うことは可能であるが、出来高手当を賞与でまとめて支払うことはできない
解説:労働基準法第24条では,賃金の毎月払、一定期日払を定めています。しかし,締切日から支払日までの期間については特段定められていません。そのため、社会通念上妥当な期間内の支払であれば,締切日から支払日までの期間が1か月を超えても問題となりません。よって、残業代を翌月に繰り越して、定期に支払うのであれば違法ではありません。
一方で、出来高給を賞与にまとめて支払うことには問題があります。例えばその出来高給が数か月の期間の評価によって算定されるものであれば、その数か月の期間でまとめて支払うことは可能ですが、今回のケースではそのような特段の事情はありません。また賞与は「定期又は臨時に,原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであってその支給額が予め確定されていないもの」であるため、支給額が定められている出来高給は当然に賞与とすることはできません。
今回のクイズはいかがでしたでしょうか?
皆様に知識を広げていただくために、これからも同様の実務クイズを出題してまいりますので、今後ともぜひチェックしてください。
※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。
クイズ提供元:社会保険労務士法人 未来経営(ESコモンズ メンバー)
長野県松本市に拠点を置き、それぞれ専門分野を持つ5名の社会保険労務士が在籍しています。私たちのビジョンである「元気な会社作りのお手伝い」を実現するため、母体である税理士法人未来経営ともに、人事労務分野に積極的に携わり、トータルな企業経営サポートを実現しています。
ESコモンズ主宰 有限会社人事・労務 URL:https://www.jinji-roumu.com/
※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。