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働き方改革に対応する企業が直面する組織運営の課題とその解決策 Vol.1

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企業で働き方改革を推進した結果、逆に職場内の”モヤモヤ”を高める要因となり、社員同士の関係にひずみが生じてくるという悪循環が起きる問題があります。効果を出すために、組織全体が良い空気感で連携のとれたチームとして変容していくためには何をしていけば解決できるのか。 有限会社人事・労務で日本初のES(人間性尊重経営)コンサルタントとして、企業をはじめ、大学、商工団体で講師を務める金野美香氏がわかりやすく解説していきます。

せっかく改革を進めても「ひずみ」が生じるだけ!?

働き方改革における「有給休暇五日間付与義務」の動きを踏まえ、これまでおざなりになってきた有給休暇取得の促進に取り組み始めたサービス業のA社。
有休管理簿をつくり、各社員の保有日数が分かるようにして、パート社員も含め積極的な消化を全社に呼びかけました。

その数か月後、管理職が集まる社内会議で、「このままだと現場がまわらなくなる」という声が上がるようになりました。
具体的に聴いてみると、それまで有給休暇という制度すら知らなかったパート社員がどんどん申請を出すようになり、シフトをまわしづらくなったこと。また、業務に穴はあけまいとパートが有給で休んだ分を正社員が補うようになったこと。それによって、正社員の有休消化が全く進んでいないこと。そして、その不満が一部の正社員から出てきて、パートとのひずみが生じ、職場があまり良い雰囲気になっていないこと。そんな悩みが次々と出てきました。

会社としては、「いよいようちも働き方改革だ!」と良かれと思って推し進めた施策が、逆に職場内の”モヤモヤ”を高める要因となり、社員同士の関係にひずみが生じてくる、という悪循環を生み出してしまっていたのです。


職場の中に悪循環が起きていないか

ダニエル・キム(マサチューセッツ工科大学)の「成功循環モデル」を踏まえると、人と人との関係性(人間関係)が良好だと、個々の思考が前向きになりオープンマインドで振る舞うことができます。

それによって他者と連携をとったり新たにチャレンジしたりと、パフォーマンス高く行動することができます。そして、そのパフォーマンスの高さが、結果の質(成果)に好影響をもたらす、好循環のサイクルを生み出すと言われています。
しかし逆も然りで、人間関係が悪いと互いに前向きな思考にはなりづらく、視野が狭まり、積極的な行動が生まれづらくなり、成果が高まらないという悪循環も起こり得るのです。

前述のA社のケースは、まさにこの”関係性の質の悪さから始まる悪循環”が起きてしまったものと言えます。

この状況を打破するため、会社から強く「必ず正社員も五日間の有給を消化するように」と命令すれば、表向きにはそれまで遠慮していた正社員も有給を申請しやすくなるかもしれませんが、今度はその分がパートへのしわ寄せとなり、不満の声が上がるかもしれません。
あるいは、お互いに「有給は取りたいけれど、今の業務プロセスだと無理!」「仕事は無責任に投げ出したくない!」といった本音を言い出せない状態が続くと、職場の中にモヤモヤが溜まる一方です。

個々のモヤモヤは、解消しないと不満になり、職場全体の風土や関係性の質に影響してしまいます。


組織の関係性を高める四つのステップ

組織全体が良い空気感で連携のとれたチームとして変容していくためには、「四つのステップ」が重要と言われています。
いきなり物事(ここでは”有給取得の推進という施策”)を共有し運用していくのではなく、まずは「お互いのおもいを知り合う」「そのおもいの背景にある意図や経緯を受け止める」「そこから見える異なりを受け入れ認め合う」という段階を経て初めて、「共有・共感する」という段階へと至る、と言われています。

A社のケースで置き換えると、有給休暇の取得推進という施策を実行・運用するために、まずはどのような要望や懸念があるのか、現場の中で知り合う機会を持つべきでした。
その際、「こうすべき」という表面的な言葉で伝え合うのではなく、自身の本音を伝えても大丈夫という安心・安全な空気感(心理的安全性)を醸成し、個々が主観を述べ合う場を設けることが必要でした。

労務管理に関わることを現場で議論するのは良くないと考える方もいるかもしれません。しかし今や、インターネットで検索すれば、あらゆる人事労務に関わる情報があふれている時代です。会社が掲げる方針を誤解せずに正しく捉え理解を深めてもらうためにも、あえて包み隠さずに、現場の中で「対話」する場を設けることが重要なのです。

そこでは何か答えを出したり案を一つにまとめあげる必要はなく、四つのステップに則して「私はこういう意図で反対します」「私はこういう懸念があります」というように、主語を”わたし”で語れる空気感を創り出すことは、リーダーの舵取り次第とも言えるでしょう。


個々のマルチアイデンティティを大切に、お互い”知り合う”ところから

対話形式の会議の場として「イロドリ会議」という手法を取り入れるケースもあります。

イロドリ会議では、下記の点をルールとして、何かテーマを設けて対話を行ないます。

  • 会議に参加する一人ひとりが発言する
  • お互いの発言を否定せずまずは受け入れる
  • 異なる意見を述べたい場合は、その点を伝えた上ではっきりと述べる
  • 結論をまとめない
  • 発言の背景や意図をお互いにつかむ努力をする

このような場を定期的にもつことで、職場の中に対話の習慣が根付き、例えば「有給休暇の促進」と言った”一筋縄ではいかない”テーマについても、企業文化や風土を踏まえた”私たちの職場としてのこたえ”を見つけ出すことができるのです。

社員は、”職場で働く人(会社人)”であると共に、家庭や地域、友人関係など社会というフィールドにおける顔をもった”社会人”であるという視点を忘れてはいけません。

さまざまな顔をもっている(マルチアイデンティティ)ということは、それだけさまざまな背景・意図を抱えているということになります。そのような個々人の背景・意図について、職場だから隠すのではなく、職場というコミュニティとしてオープンマインドで共有することができれば、良い関係性を築きやすくなり、結果として成功循環モデルがまわります。

働く一人ひとりの日常や抱える事情を知り、部分最適ではなく全体最適の視点で解決策を考えていこうという会社の姿勢は、これからの多様性の時代においては、社員の働きごこちの良さ・居場所感を高めることができ、幸福度の向上にもつながると言えます。


筆者プロフィール

金野美香(きんの みか)

  • 有限会社人事・労務 ヘッドESコンサルタント
  • 厚生労働省認定CDA(キャリアデベロップメント・アドバイザー)
  • 一般社団法人 日本ES開発協会 代表理事
  • 福島大学行政社会学部卒業後、有限会社人事・労務にて、日本初のES(人間性尊重経営)コンサルタントとして、企業をはじめ、大学、商工団体で講師を務めるなど幅広く活動する。“会社と社員の懸け橋”という信念のもと、介護事業所や福祉施設、製造業、サービス業などさまざまな中小企業でのクレドづくり・ES組織開発に取り組む。また、「日本の未来の“はたらくカタチ”をつくる」をテーマに、社員一人ひとりが地域社会との接点を持ち共感資本を高めるための活動を推進。自律心高い越境人材の育成や地域活動プロジェクトの運営などに力を入れ、ESを軸にコミュニティ経営の視点を中小企業で実践し、高い評価を得る。
    宮城県仙台市生まれ。「東北の土地の記憶を知ること」「働く犬の研究」がライフワーク。
  • 主な講演実績・著書等
  • ・社会によろこばれる会社のためのESを軸とした組織づくり(熊谷法人会、上尾法人会)
  • ・キャリアデザイン入門 (日本大学法学部)
  • ・シゴト選びのモノサシを変える!新しい一歩を踏み出すキャリアデザイン講座(東北芸術工科大学)
  • ・『人財経営実践塾』愛社精神溢れる-体感経営~ES(従業員満足度)が会社を伸ばす~ (ふくいジョブカフェ)
  • ・対話の習慣を軸とした自律型人材育成法/ESを軸につながりを大切にする経営/新任管理職の為のリーダーシップ強化セミナー(ヒューマンリソシア「定額制公開講座ビジネスコース」)
  • ・イノベーションを巻き起こすES向上型人事制度 (ピーシーエー株式会社)
  • ・千葉県指定工場協議会 第三ブロック向けセミナー~今日からすぐに始められる会社が元気になる7つの施策 (あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)
  • ・後継者向けESマネジメント研修 (あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)
  • ・人と環境と社会にやさしい社内体制の作り方セミナー~グレートスモールカンパニーが社会を変える!~ (日本ES開発協会)
  • ・若手社員の採用と定着を上手に行う秘訣 (常陽産業研究所)
  • ・ES型人事制度構築のポイント (淡路青年会議所)
  • ・「共感資本時代のリーダーはここが違う」(株式会社USEN)・・・他

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