公開日:2024/08/20
従業員が転居等で住所変更をした場合、会社側も労働者名簿や社会保険等に関する住所変更手続きを行います。そこには法規定をはじめとしたさまざまな理由があり、会社は必要な手続きについて把握しておかねばなりません。
本記事では従業員の現住所を会社側が把握しなくてはならない理由や、従業員が住所変更をした場合に必要な手続きについて解説いたします。
身上申請を効率化するためのヒントと合わせてご覧いただき、住所変更があった場合にスムーズな手続きを行えるよう、段取りを把握しておきましょう。
会社は従業員が引っ越しなどで住所を変更した場合、現在の居住地(住所)を把握しなければなりません。その理由には以下の3点が挙げられます。
① 労働基準法で労働者名簿を更新する義務があるため
② 総務の業務(社会保険料の算出や通勤手当の再計算等)に必要なため
③ 従業員の連続無断欠勤や災害時などに安全配慮義務を行使するため
まず、労働基準法の第107条(労働者名簿)では以下のような規定があります。
“使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。 ② 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。”
要するに「住所変更があれば速やかに訂正すること」が法令上求められており、そのためには従業員の最新の住所を把握する必要があるということです。
総務部門の主な業務として、従業員の各種手続きがあります。
【例】
これらを正しくスムーズに行うには、常に最新の従業員の連絡先住所が必要です。
また通勤手当に関しては、会社までの距離や通勤手段などをもとに計算しますが、住所を正しく把握していないと支給額に過不足が生じてしまいます。通勤手当は固定賃金に含まれ、社会保険料の計算にも深く関わるものであることから、正確な住所の把握が必須となっています。
会社が安全配慮義務を行うためにも、従業員の住所の把握が必要です。
例えば従業員が災害に巻き込まれるなどの非常事態が発生した場合、会社側は従業員の安否を確認する必要があります。このとき現在の住所を把握していないと、安否確認が大幅に遅れ、適切な対処ができなくなってしまう可能性があります。
また従業員が連続で無断欠勤をしていて連絡がつながらない場合など、何らかの異常が発生しているときに住所を把握していないと、さらなる事態の悪化を引き起こす可能性もあるでしょう。
住所変更手続きや対応が必要なものには以下が挙げられます。
以下、一つずつ詳細を確認してみましょう。
従業員の住所変更があった際には、すみやかに社会保険の住所変更手続きを行います。
とりわけ以下のケースに当てはまる場合は、管轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 被保険者住所変更届」を提出する必要があるため、住所の把握・更新を怠らないようにしましょう。
【被保険者住所変更届の提出が必要なケース】
・ 「協会けんぽ」以外の健康保険組合に加入している場合
・ 海外転勤したためマイナンバーがない(非居住者)
・ 住民票記載の住所以外に居住している
被保険者住所変更届は2枚綴りになっており、家族構成によって提出方法が変わります。
【手順】
1.加入する社会保険に応じて○をつける(両方の場合は○をつけない)
2.各種項目を記入
(事業所整理番号・被保険者整理番号・変更後と変更前の住所、基礎年金番号・住所変更日)
※協会けんぽの健康保険のみ加入の場合は基礎年金番号を省略してよい
3.被扶養配偶者がいる場合は住所変更欄に「レ」を記入。配偶者の個人番号または基礎年金番号、生年月日、配偶者氏名を記入
4.事業所情報と届書提出日を記入
記入および提出の際には、従業員が届け出た旧住所と国民年金機構に登録されている住所が同じであるかを確認しましょう。
ただしマイナンバーが基礎年金番号と紐づけられている場合は、現住所が変更されたとき自動的に登録情報が更新されるため、住所の提出は必要ありません。
また雇用保険に関してはそもそも住所を登録していないことから、従業員に住所変更があっても現住所の提出は不要です。ただし、従業員が退職する際は「離職票」の発行のために現住所の把握が必要となります。
労災保険については「会社」が事業単位で加入し、保険料の全額を負担しています。つまり個人単位での加入ではないので、従業員の住所変更に伴う手続きはありません。
一方、会社で加入している各種損害保険、傷害保険については、住所変更が必要になる場合があります。
年の途中で従業員の住所変更があった場合には、旧自治体の事務所へ「給与支払報告書」を提出します。
また、年末調整の時期には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で新住所を記載してもらいましょう。
仮に記載住所が自社で登録されている住所と一致しない場合、原則として住民票の異動を行い、納税先と居住地が一致するよう促す必要があります。
労働基準法第107条記載のとおり、会社は従業員の入社時に氏名、生年月日、住所などを「労働者名簿」に記載し、保管する義務があります。
そして転居等で住所変更があった場合には、都度遅滞なく訂正をしなくてはならないことが法で定められています。また緊急連絡先名簿や住所録、社員名簿等の社内名簿についても、住所変更があれば更新が必要です。
住所変更によって通勤ルートが変わる場合、通勤手当の見直しを行う必要があります。先述のとおり社会保険料の算定に関わっていることに加え、定期券を購入している場合は通勤経路の変更に伴う払い戻し・再支給の手続きが必要になるからです。住所変更が遅れた場合はこれらの手続きも遅れてしまいます。
トラブルを防ぐには、あらかじめ通勤経路変更時の払い戻しに関する規定(通勤経路変更届等の提出について、払戻金がある場合の計算方法、日割りの有無、新経路の定期支給月数など)を決めて周知されるとよいでしょう。
従業員の住所変更手続きでは健康保険や厚生年金の「被保険者住所変更届」の提出を始め、通勤経路や緊急連絡先の各種身上申請の変更手続を行うことになります。
このとき被保険者住所変更届については紙の書類提出で手続きを行わなくてはなりません。
しかしそれ以外の身上申請については、クラウドサービスを活用して管理すると効率化が実現します。
デジタルで申請から管理までを一元化すれば、身上申請書類の整理や分類、管理といった物理的な手間から解放されます。またデータであれば書類の保管場所の確保も不要です。厳格なセキュリティ対策が講じられているクラウドサービスであれば、書類の紛失・盗難といった漏洩リスクも低くなります。
一連の手間と時間がかかる業務がスムーズになれば業務効率が向上し、生産性アップ、ひいては労務管理コストの削減が期待できるでしょう。
本記事では従業員が住所変更をしたときに必要な会社の手続き・対応について解説いたしました。
住所変更等の身上申請については、初めから労務管理サービスで作成・提出・管理まで一元で行う方法がおすすめです。
特に従業員自身が申請書を入力・送信できるタイプの労務管理サービスは、手入力でのデータ化による入力ミスの削減につながりますし、書類のファイリング等も不要なため業務効率が向上しますのでおすすめです。
また給与計算などの業務ソフトと連携できるものを利用すれば、通勤経路の変更をするだけで給与計算ツールにも同期されるなど、シームレスな変更手続きが可能です。
これにより、申請手続きや書類管理にかかる人件費等のコスト削減も期待できるでしょう。
労務関連の書類管理を効率化し、業務効率化・将来的なコスト削減を目指されたい企業様は、労務管理サービスでのペーパーレス化を検討されてみてはいかがでしょうか。