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算定基礎届とは?わかりやすく解説

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算定基礎届は年に一回の健康保険料・介護保険料、厚生年金保険料の計算の基礎となる標準報酬月額を届出するものです。この標準報酬月額に保険料率をかけて毎月の保険料が算出されます。
この「年一回見直し」は重要で、届出した額は簡単に訂正することはできません。そのため人事担当者は非常に神経を使います。

この記事では算定基礎届の意味と作成時の具体的な注意点を詳しく解説します。


算定基礎届とは

算定基礎届とは健康保険や厚生年金保険の被保険者が実際に受け取っている報酬と既に決められている標準報酬月額が大きくかけはなれないように、毎年一回標準報酬月額を決め直して届出する書類です。

実務の社会保険の手続では、この標準報酬月額の見直しを「定時決定」といい、算定基礎届は書類を指すだけでなく定期決定の手続き自体を指して使うこともあります。


標準報酬月額とは

標準報酬月額とは毎月の健康保険料や厚生年金保険料を計算するときに用いるもので、被保険者が受け取っている報酬を等級別に区分した際の、仮の報酬月額のことです。

例えば月額報酬が210,000円から230,000円であれば標準報酬月額は220,000円となります。この等級は「標準報酬月額保険料額表」で定められています。算定基礎届はこの等級区分の変更のための届出になります。


令和3年度保険料額表(令和3年3月分から)の都道府県別の標準報酬月額保険料額表はこちらから確認できます。https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r03/r3ryougakuhyou3gatukara/

算定基礎届の対象

算定基礎届の届出対象はその年の7月1日時点で健康保険と厚生年金に加入している被保険者です。従業員も役員やパートなどの身分は関係ありません。会社が発行している健康保険証を持っている人と考えるとイメージしやすいです。

被保険者は算定基礎届の届出対象外となる被保険者もいます。次に該当する場合は届出が不要ですので覚えておきましょう。

  • その年の6月1日以降に資格を取得した人
  • その年の6月30日以前に退職をした人
  • 7月に随時改定の対象者となった人

「随時改定(月額変更届)」は、昇給などにより変更月以降3カ月の平均給与と現在の標準報酬月額と2等級以上の差が発生したときに標準報酬月額を変更するものです。


算定基礎届の対象となる期間

算定基礎届の標準報酬月額の対象となる期間は、毎年4月・5月・6月の3カ月の平均給与をもとに算定します。

算定基礎届を提出すると、その年の9月から翌年の8月までの1年間は届出した標準報酬月額をもとに毎月の健康保険料・介護保険料や厚生年金保険料が計算されます。


算定基礎届の対象となる報酬

算定基礎届の平均報酬を計算する場合に対象となる報酬を確認しておきましょう。
報酬となるものと報酬とならないものが細かく定められています。

【報酬となるもの】

基本給(月給・週給・日給など)・能率給・奨励給・役付手当・職階手当・特別勤務手当・勤務地手当・物価手当・日直手当・宿直手当・家族手当・扶養手当・休職手当・通勤手当・住宅手当・別居手当・早出残業手当など

他のも現物支給される通勤定期券・回数券・食事・食券・社宅・寮・被服(勤務服でないもの)・自社製品など

【報酬とならないもの】

大入袋・見舞金・解雇予告手当・退職手当・出張旅費・交際費・慶弔費・傷病手当金・労災保険の休業補償給付・年 3 回以下の賞与など

現物支給される制服・作業着(業務に要するもの)・見舞品・食事(本人の負担額が・厚生労働大臣が定める価額により算定した額の 2/3 以上の場合) など」

報酬となるものを正しく選別して月額報酬を計算しないと、算定基礎届の標準報酬月額も正しい額が算定できませんので注意しましょう。

標準報酬月額の算定方法

算定基礎届で届出する標準報酬月額は4月・5月・6月の報酬を平均して算出します。

勤務実績の少ない月を無条件で含めると適正な平均月額が算定できないため、対象とする各月の賃金支払いの基礎となる支払基礎日数は17日以上と定められています。

また、算定基礎届は4月、5月、6月に支払われた給与を報酬月額として届出しますが、給与計算の締切日と支払日によって、支払基礎日数が異なってきます。

例えば、月給制で給与末日締で当月末日支払の場合は、4月分として4月1日~30日を数えるため、支払基礎日数が「30日」になります。しかし、給与25日締で当月末日支払の場合は、4月分として3月26日~4月25日を数えるため、支払基礎日数が「31日」になります。

支払基礎日数を確認したら、3カ月の平均報酬を計算します。
3カ月のなかに17日未満の月があれば除外して計算しますので、注意が必要です。

一般的な支払基礎日数が3カ月とも17日以上のとき

支払基礎日数が3カ月とも17日以上の場合、4月、5月、6月に支払われた給与の合計額を、4月~6月の合計月数「3」で割った額が標準報酬月額になります。

支払基礎日数に17日未満の月があるとき

支払基礎日数に17日未満の月がある場合、17日未満の月を除いた月に支払われた給与の合計額を、17日以上の月で割った額が標準報酬月額になります。

例えば、4月、6月が支払基礎日数が17日以上であった場合、4月、6月の給与の合計額を「2」で割った額が標準報酬月額になります。

支払基礎日数の確認は算定基礎届を作成するうえで非常に重要ですので例のように賃金台帳とあわせて調整しておくとよいでしょう。

月額変更届について

基本的に一度算出された標準報酬月額は、年に1回算出された金額を1年間利用します。しかし、年の途中に給与支給額が大きく変更があった場合、次の算定基礎届を出すタイミングまで更新されず、給与支給額が大きく下がったとしても高額な社会保険料を払い続けてしまいます。

そのため、給与支給額に変更あった場合は標準報酬月額を確認し、変更後の給与支給額に相当した標準月額報酬に変更する必要があり、随時改定するため「月額変更届」を出さなくてはいけません。


算定基礎届の書き方

算定基礎届を作成するための前準備として月額報酬や支払基礎日数を確認したら届出用紙に記入していきます。

一般的な支払基礎日数が3カ月とも17日以上のとき

引用ファイル:日本年金機構Webサイト 算定基礎届の記入・提出ガイドブック

3カ月の平均で報酬月額を算定しますので、賃金台帳をもとに各月の報酬を使います。

画像の例でいえば、報酬月額は4月支給分の671,000円、5月支給分671,000円、6月支給分671,000円の平均額671,000円が標準報酬月額になります。

なお、1円未満の端数は切り捨てになります。


支払基礎日数に17日未満の月があるとき

引用ファイル:日本年金機構Webサイト 算定基礎届の記入・提出ガイドブック

3カ月うち支払基礎日数が17日未満の月を除いた平均で報酬月額を算定します。賃金台帳をもとに4月・6月の報酬を使います。

画像の例でいえば、報酬月額は4月支給分の271,000円、6月支給分264,000円の平均額267,500円が標準報酬月額になります。

仮に17日未満の月が2カ月ある場合は残りの17日以上の月のみの報酬を報酬月額とするので覚えておきましょう。

4月・5月・6月のいずれも支払基礎日数が17日未満の場合または従前の標準報酬月額で決定します。

育児休業や介護休業等、病気欠勤などにより4月・5月・6月のいずれもまったく報酬を受け取っていないときも同様に従前の標準報酬月額が引き続き適用されます。


算定基礎届の提出

算定基礎届の届出について確認します。提出期間が短いので事前準備をして早めに対応しましょう。

提出期間:7月1日から7月10日まで
提出先:事務センターまたは管轄の年金事務所担当窓口
提出方法:持参、郵送、電子申請

電子申請は電子政府の総合窓口 e-Gov〔イーガブ〕で行えます。
https://www.e-gov.go.jp/

必要書類:被保険者報酬月額算定基礎届(70 歳以上被用者算定基礎届)、被保険者報酬月額算定基礎届 総括表、被保険者報酬月額変更届(7 月改定に該当する人がいるとき)
電子申請や電子媒体での提出は必要書類などがことなる場合がありますので、年金機構ホームページ(https://www.nenkin.go.jp/denshibenri/denshibaitai/)でご確認ください。


まとめ

人事担当者にとって算定基礎届はボリュームのある作業のうえ、提出期間も短く大きな負担です。届出した標準報酬月額が9月以降の1年間の健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料の計算の基礎になりますし、届出後は簡単に訂正できないのでプレッシャーも大きいでしょう。

労働保険の年度更新とも重なるため、従業員数の多い事業所では事前準備をしていないと期限内に届出することも難しい場合もあると思います。

4月以降は給与が確定するごとに賃金台帳と支払基礎日数を調整していくと、業務が集中ないため不要な残業が減らすことができます。


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