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月額変更届とは?随時改定をしなくてはいけないケースとは?

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月額変更届は健康保険・厚生年金などの社会保険料の算定の基礎となる標準報酬月額を改定する届出で非常に重要です。この届出により社員から毎月給与引きする金額だけでなく、会社が負担する法定福利費もかわってきます。

毎年7月に届出する算定基礎届が年1回見直す「定時決定」で、定時決定した標準報酬月額を随時改定する届出が「月額変更届」です。 

この記事では月額変更届の概要と書き方や提出方法などについて詳しく解説します。


月額変更届とは

月額変更届とは社会保険料の計算の基礎となる標準報酬月額を変更する届出のことです。標準報酬月額は定時決定(算定基礎届)といって、毎年4月・5月6月の報酬月額を届出し、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額を決めるシステムです。決定後に変更することを随時改定といい、提出する書類の名前をとって通称:月額変更届とよびます。


月額変更届は決定した標準報酬月額が実際の報酬とかけ離れた場合に実状にあった社会保険料を算定する目的で行います。

健康保険と厚生年金は標準報酬月額に定められた保険料率をかけて保険料を算定しますので非常に重要な届出となります。また、将来の厚生年金の受け取り額にも影響してきますので間違いのないように処理しなければなりません。月額変更届の提出は事業主の義務となっていますのでモレのないようにしましょう。

月額変更届を提出する要件

随時改定の要件に該当する場合は月額変更届を提出します。カンタンにいうと下の図のようなフローとなりますが、詳細な条件もありますので該当要件を詳しく確認していきましょう。

出典:日本年金機構|随時改定と月額変更届
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/guide.pdf


(1) 昇給・降給等により固定的賃金に変動があった場合

固定的賃金とは基本給や各種手当など支給額や支給率が決まっているものです。残業手当や夜勤手当などは時間の増減や回数により変動しますので非固定的賃金といい、変動した理由が非固定的賃金のみであれば月額変更の要件に該当しません。日給から月給など賃金体系を変更した場合は該当します。

【固定的賃金に該当するもの】

基本給(月給、週給、日給)、家族手当、通勤手当、住宅手当、役付手当、勤務地手当など

※休職による休職給は該当しません。
※レイオフなどの一時帰休で継続して3カ月を超えて通常の報酬よりも低額の休業手当等が支払われた場合は該当します。
※通勤手当を6カ月定期料金で支給した場合は6分の1で按分計算して1カ月分の金額を固定的賃金の変動額とします。
※社宅や寮は入った場合は現物給与として扱います。都道府県ごとに定められた価値に換算して報酬額を算出しますので注意しましょう。


(2) 固定的賃金を変動した月以後3カ月すべての給与計算の支払基礎日数が17日以上の場合

支払基礎日数とは報酬を計算する基礎となる日数のことです。賃金締日により支払基礎日数がかわってきます。また、支払基礎日数には有給休暇を含めますが、欠勤日は含めませんので注意しましょう。

例えば4月~6月を例にとると給与締日により支払基礎日数は次のようになります。

【毎月25日締の会社】

  • 4月の対象期間:3月26日~4月25日 支払基礎日数:31日
  • 5月の対象期間:4月26日~5月25日 支払基礎日数:30日
  • 6月の対象期間:5月26日~6月25日 支払基礎日数:31日

【毎月末締の会社】

  • 4月の対象期間:4月1日~4月30日 支払基礎日数:30日
  • 5月の対象期間:5月1日~5月31日 支払基礎日数:31日
  • 6月の対象期間:6月1日~6月30日 支払基礎日数:30日

原則、支払基礎日数17日以上が要件ですが、特定適用事業所などにおける「短時間労働者」の場合は11日以上です。具体的には公官庁や被保険者数が常時501人以上の企業や申出により適用対象となった事業所で働く、週の所定労働時間または1カ月の所定労働日数が正社員の4分の3未満で週20時間以上勤務する労働者です。


(3) 変更前後で2等級以上の差がある

固定賃金の変動により、改定後の標準報酬月額と改定前の標準報酬月額に2等級以上の差が生じる場合が該当します。例えば固定的賃金は増加し、残業手当などの非固定的賃金が減ったため3カ月の平均報酬額が標準報酬月額より下がり2 等級以上の差が生じるなどは対象外ですので注意しましょう。

月額変更届の書き方

随時改定する時は「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険70歳以上被用者月額変更届」、通称:月額変更届を作成して提出します。随時改定の対象者が複数いる場合でも、1枚に5名まで記載できますのでまとめて届出することが可能です。

月額変更届は上から順に次の内容を記入します。

  • 提出日→届出日
  • 提出者記入欄→届出事業所の事業所整理番号や所在地・社名・事業主名・電話番号
  • 個人別記入欄は1~18を記入
  1. 被保険者の整理番号
  2. 氏名
  3. 生年月日
  4. 改定年月
  5. 従前の標準報酬月額
  6. 従前改定月
  7. 昇給(降給)
  8. 遡及支払額
  9. 給与支給月
  10. 給与計算の基礎日数
  11. 通貨によるものの額
  12. 現物によるものの額
  13. 合計(11+12)
  14. 総計
  15. 平均額
  16. 修正平均額
  17. 個人番号もしくは基礎年金番号(70歳以上被用者の場合のみ)
  18. 備考欄の番号を選択

出典:日本年金機構|月額変更届の記載例
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/guide.pdf

月額変更届のエクセル様式は日本年金機構「主な届書様式の一覧」からダウンロードできます。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/shuyotodoke.html


月額変更届の提出方法

月額変更届の提出先と提出方法を確認しましょう。2020年4月以降に開始する事業開始年度から一部の法人に電子申請が義務化されています。

提出時期:該当後速やかに
提出先:所轄の日本年金機構または社会保険事務センター
提出方法:持参、郵送、電子申請
添付資料:原則不要。60日経過後や5等級以上さがる場合は賃金台帳の写しと出勤簿の写し。役員は取締役会議事録も必要。


出典:厚生労働省|2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます
https://www.mhlw.go.jp/content/000511981.pdf

電子申請の義務化について罰則はありませんが、「電気通信回線の故障や災害などの理由により、電子申請が困難と認められる場合のみ、電子申請によらない方法により届出が可能」とされています。対応が困難な場合も可能な限り電子媒体での届出をしましょう。


月額変更届後いつから社会保険料はかわる?

月額変更届は3カ月の報酬の平均をみて届出しますので、固定的賃金を変更した後4カ月目からかわります。給与の社会保険料控除は事業所で定められますので当月もしくは翌月です。当月の事業所は4カ月目の控除から、翌月の事業所は5カ月目の控除から社会保険料が変更となりますので注意しましょう。

変更した標準報酬月額は、再度、随時改定に該当しない限り次の 8 月まで適用されます。


まとめ

月額変更届は非常に重要な届出です。3カ月の報酬や支払基礎日数など細かな部分を確認しなければならならないうえ、報酬が増えているから必ず月変に該当するわけでもありません。手当などが固定的賃金に該当するか否かの判断も必要です。複数の要件を満たした場合のみ届出するため専門的な知識のいる仕事です。

処理漏れや間違いは社会保険料や、のちのちの年金受取額にも直結するため担当者に負担がかかります。
給与や社会保険の手続きは属人化した仕事になりやすいものですが、重要度から考えても複数で確認するなどのチェックできる体制で進めるとよいしょう。


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