更新日:2026/07/10
「ストレスチェックの担当になったが、何から手をつければいいかわからない」とお悩みではありませんか。この記事では、人事労務担当者が把握すべきストレスチェック実施のTo Doを、準備から本番、事後措置までの3つのフェーズにわけて徹底解説します。
スムーズな運用には「実施前の体制構築と衛生委員会での審議」が最も重要であり、事後措置である高ストレス者への面接指導や労働基準監督署への報告まで漏れなく対応することが法的義務を果たす鍵となります。

ストレスチェックを円滑に実施するためには、人事労務担当者が全体の流れや目的を正しく理解しておくことが不可欠です。まずは制度の基本と、全体のタスクの流れを把握しましょう。
ストレスチェック制度は、労働安全衛生法に基づき実施される検査です。この制度の最大の目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止すること(一次予防)にあります。
定期的に検査を行うことで、労働者自身にストレスの程度への気づきを促し、セルフケアを支援します。また、検査結果を集団ごとに分析することで、ストレスの原因となっている職場環境の課題を洗い出し、改善につなげることも重要な目的です。
これまでストレスチェックの実施は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対してのみ義務付けられており、50人未満の事業場は当分の間努力義務とされていました。しかし、2025年に労働安全衛生法が改正され、2028年4月には、従業員50人未満の小規模事業場においてもストレスチェックの実施が義務化されることが決定しました。
自社の規模にかかわらず、早急に実施に向けた体制整備を進める必要があります。
ストレスチェックの実施にあたり、人事労務担当者が対応すべきタスクは多岐にわたります。抜け漏れを防ぐためにも、業務を「実施前」「実施中」「実施後」の3つのフェーズにわけて管理することが効果的です。以下に、人事労務が把握しておくべきTo Doの全体像を整理します。
| フェーズ | 主なTo Do(タスク) | 人事労務の役割・目的 |
|---|---|---|
| 実施前(準備) | 実施体制の構築、衛生委員会での調査審議・規程策定、労働者への事前周知 | 社内ルールの決定と、従業員が安心して受検できる環境・体制を整える。 |
| 実施中(本番) | 質問票の配布・回収、ストレス程度の評価、高ストレス者の選定・面接指導の勧奨 | 実施者(産業医など)と連携し、個人情報に配慮しながら検査を滞りなく進行する。 |
| 実施後(事後措置) | 医師による面接指導と就業上の措置、集団分析と職場環境改善、労働基準監督署への報告 | メンタルヘルス不調のリスクが高い従業員をケアし、組織全体の労働環境を改善する。 |
このように、ストレスチェックは単に検査を実施して終わりではなく、事前の入念な準備から事後の職場改善までを一連のサイクルとして回すことが求められます。各フェーズにおける具体的なタスクの詳細は、次章以降で順を追って解説します。

ストレスチェックを円滑かつ適法に進めるためには、本番を迎える前の周到な準備が欠かせません。実施前の準備段階で社内の体制やルールを明確にしておくことが、制度を形骸化させず効果的に運用するための鍵となります。ここでは、人事労務担当者が実施前に着手すべき具体的なTo Doをステップごとに解説します。
最初のTo Doは、ストレスチェックの実施体制を構築し、それぞれの担当者を決定することです。ストレスチェックには、労働者の機微な個人情報を取り扱うため、プライバシーを保護するための厳格な役割分担が法令で求められています。人事評価の権限を持つ者が労働者のストレス状況を直接把握することがないよう、適切な要件を満たす人材を各役割に配置しなければなりません。
主な役割とそれぞれの要件、業務内容は以下のとおりです。
| 役割 | 担当できる要件・対象者 | 主な業務内容 |
|---|---|---|
| 実施者 | 医師(産業医など)、保健師、一定の研修を修了した看護師・精神保健福祉士・公認心理師・歯科医師 | ストレスチェックの企画、結果の評価、高ストレス者の選定、面接指導の要否の判定 |
| 実施事務従事者 | 実施者の指示のもとで実務を行う者(人事労務担当者、衛生管理者など)※人事権を持つ者は不可 | 質問票の配布・回収、データ入力、結果の通知、面接指導の勧奨などの事務サポート |
| 共同実施者 | 外部の委託機関など(必要に応じて選任) | 実施者と共同でストレスチェックの評価やデータ処理を実施 |
体制が整ったら、事業場の衛生委員会(または安全衛生委員会)において、ストレスチェックの具体的な実施方法やスケジュールについて調査審議を行います。審議すべき主な内容は、対象となる労働者の範囲、使用する質問票の種類、高ストレス者の選定基準、面接指導の実施方法、結果の集団分析の取り扱いなど多岐にわたります。
衛生委員会での合意形成後は、その内容を明文化した「ストレスチェック制度実施規程」を策定します。規程を社内ルールとしてしっかりと整備することで、担当者の変更時にも一貫した運用が可能となり、労働者の制度に対する不信感を払拭することにつながります。
規程が策定できたら、実際にストレスチェックを実施する前に、対象となる全労働者に向けて制度の目的や実施スケジュールを周知します。単に実施日程や手順を知らせるだけでなく、受検は法令上の義務ではないものの自身のメンタルヘルス不調に気づくための重要な機会であることや、個人情報が確実に保護されることを丁寧に説明することが重要です。
事前周知の手段としては、社内ポータルサイトへの掲示、全社メールの送信、朝礼での説明、社内報への掲載などが挙げられます。労働者が安心してありのままの回答ができるよう、結果が人事評価や配置転換などに不利益な影響を与えない旨を、事業者のトップメッセージとして明確に伝達しておきましょう。
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事前準備が整い、実際にストレスチェックの実施期間に入ってからの人事労務担当者のTo Doは、「実施事務従事者」としての実務的な作業が中心となります。実施中において最も注意すべき点は、労働者のプライバシー保護と個人情報の適切な取り扱いです。ここでは、ストレスチェック本番期間中にやるべきタスクを具体的に解説します。
ストレスチェックの実施にあたり、まずは対象となる全労働者へ質問票を配布します。質問票には、国が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」などが一般的に用いられます。紙媒体で実施する場合と、Webシステムを利用する場合で人事労務(実施事務従事者)のTo Doが異なります。
| 実施方法 | 人事労務・実施事務従事者のTo Do |
|---|---|
| 紙媒体(マークシート等) | 質問票の印刷・封入、対象者への配布、回収ボックスの設置または直接回収。第三者に内容が見えないよう、目隠しシールの活用や封筒を密閉させるなどの配慮が必須。 |
| Webシステム(クラウド等) | 対象者への受検用URL・ID・パスワードの案内メール送信、システム上での受検状況のモニタリング、未受検者へのリマインド通知を行う。 |
この段階で最も重要なのは、労働者の回答内容や未受検であるという情報が、人事権を持つ者や第三者に不当に漏洩しないよう徹底することです。未受検者に対する受検の勧奨は実施事務従事者が行うことができますが、受検を強要してはいけません。
回収した質問票をもとに、産業医などの「実施者」が労働者のストレス程度を評価します。人事労務担当者(実施事務従事者)は、この評価業務が円滑に進むようサポートを行います。
具体的には、回収したマークシートの読み取りやデータ入力、Webシステムから抽出した回答データの整理などを実施者の指示のもとで行います。評価基準については、あらかじめ衛生委員会で調査審議し決定した基準が適用されます。
評価が完了すると、実施者から各労働者に対して直接、ストレスチェックの結果が通知されます。結果通知は労働者本人に対して行われ、本人の事前の同意がない限り企業(事業者)に結果が提供されることは法律で禁止されています。人事労務担当者(実施事務従事者)は、結果通知が確実かつ安全に行われるよう、通知書の封入・発送作業やWebシステムでの閲覧設定などを実施者の補助として行います。
ストレス程度の評価と同時に、実施者は面接指導が必要とされる「高ストレス者」を選定します。高ストレス者と判定された労働者に対しては、結果通知の際に医師による面接指導を受けるよう勧奨が行われます。
人事労務担当者(実施事務従事者)のTo Doとしては、面接指導の申出窓口の設置と、申出がしやすい環境づくりが挙げられます。面接指導の申出をしたことを理由とした不利益取扱いは厳格に禁止されています。
高ストレス者からの申出があった場合、速やかに産業医などの医師に連絡し、面接指導の日程や場所の調整を行います。この際、申出をした労働者のプライバシーを保護し、周囲に知られないよう配慮した連絡体制を構築することが不可欠です。申出がない高ストレス者に対して、実施者から追加で面接指導の勧奨を行うことも効果的ですが、最終的な申出の判断は労働者本人に委ねられます。
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ストレスチェックは、労働者に質問票を実施して終わりではありません。結果が出た後にどのような事後措置を行うかが、メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)において非常に重要です。ここでは、人事労務担当者が実施後に行うべきTo Doの流れを詳しく解説します。
高ストレス者と判定され、かつ実施者から面接指導が必要とされた労働者から申し出があった場合、企業は医師による面接指導を実施する義務があります。人事労務担当者は、面接指導のセッティングやその後の対応を速やかに行わなければなりません。
面接指導の申し出があった場合、申し出から概ね1ヶ月以内に産業医などの医師による面接指導を実施する必要があります。面接指導後、企業は医師から就業上の措置に関する意見を聴取し、必要に応じて適切な対応をとります。
| ステップ | 人事労務のTo Do(タスク内容) |
|---|---|
| 1. 申し出の受付 | 高ストレス者からの面接指導の申し出窓口として機能し、プライバシーに配慮して受け付ける。 |
| 2. 面接指導の調整 | 産業医等の医師と対象労働者の日程を調整し、面接の場をセッティングする。 |
| 3. 医師からの意見聴取 | 面接指導終了後、遅滞なく(概ね1ヶ月以内)医師から就業上の措置に関する意見を聴く。 |
| 4. 就業上の措置の決定・実施 | 医師の意見を勘案し、必要に応じて就業場所の変更、労働時間の短縮、深夜業の回数減少などの措置を講じる。 |
面接指導の申し出を理由とした解雇や不当な配置転換などの不利益な取扱いは法律で禁止されているため、対象者が安心して申し出ができる環境づくりも人事労務の重要な役割です。
個人の結果への対応だけでなく、部署や課などの集団ごとの集計・分析を行い、職場環境の改善につなげることもストレスチェック制度の大きな目的のひとつです。
実施者から提供された集団ごとの集計結果をもとに、ストレスの原因となっている職場環境の課題を特定します。集団分析の結果は、原則として10人以上の集団であれば労働者の同意なく企業に提供されるため、人事労務担当者はこのデータをもとに経営層や各部門の管理職と連携して改善策を検討します。
具体的な改善策としては、業務量の調整、業務フローの見直し、コミュニケーション活性化のための施策などが挙げられます。職場環境の改善は努力義務とされていますが、従業員のエンゲージメント向上や離職防止の観点からも積極的に取り組むべきTo Doです。
ストレスチェックと面接指導の実施後は、所轄の労働基準監督署へ実施状況を報告する法的義務があります。これが一連のストレスチェック業務の最後のTo Doとなります。
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、毎年1回、ストレスチェックの実施状況を報告しなければなりません。報告には所定の様式を使用し、産業医の署名または記名押印等が必要です。
| 確認項目 | 詳細・注意点 |
|---|---|
| 提出書類 | 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書 |
| 提出先 | 事業場を管轄する労働基準監督署 |
| 提出時期 | 遅滞なく(一般的にはストレスチェック実施後、面接指導等の事後措置が完了したタイミングで速やかに提出) |
| 記載内容 | 検査を実施した労働者数、面接指導を実施した労働者数など |
報告書の提出を怠った場合や虚偽の報告をした場合は、労働安全衛生法に基づく罰則(最大50万円の罰金)が科される可能性があるため、提出漏れがないよう確実にスケジュールに組み込んでおきましょう。

ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、働きやすい職場環境を構築するための重要な制度です。年1回の実施が義務化されており、法令遵守の観点からも確実な対応が求められます。
人事労務担当者は、実施前の体制構築や衛生委員会での規程策定といった準備から、本番での質問票の配布・回収、高ストレス者への面接指導の勧奨、そして労働基準監督署への結果報告書の提出に至るまで、多岐にわたるTo Doを計画的に進める必要があります。
これらのタスクを漏れなく実行し、集団分析を通じた事後措置として職場環境改善につなげるために、準備や実施だけでなく、受検勧奨・報告、さらに職場改善に関する取り組みの優先順位付けまで対応できるツールを利用するのがおすすめです。ツールをうまく利用しながら、企業全体の生産性向上と従業員の健康確保を実現しましょう。