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ストレスチェックは意味ない?形骸化する原因と意味のあるものに変える方法

公開日:2022/11/08
更新日:2026/07/07

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ストレスチェックを実施しているものの、従業員から「意味ない」「やりっぱなし」と言われていませんか?本記事では、ストレスチェックが形骸化してしまう根本的な原因と、それを意味のある制度に変えるための具体的な方法を解説します。

結論として、意味がないと感じられる最大の理由は「実施後の職場環境改善や具体的な対策が行われていないこと」にあります。集団分析の正しい活用法や産業医との連携強化など、メンタルヘルス不調を未然に防ぎ、離職率低下や生産性向上につなげるための実践的なノウハウを見ていきましょう。

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ストレスチェックとは?実施の義務と基本的な概要

ストレスチェックとは、従業員の心理的な負担の程度を把握するために行われる検査です。この制度の主な目的は、従業員自身のストレスへの気づきを促し、メンタルヘルス不調を未然に防止することにあります。法改正により、まもなく全事業場が義務の対象となります。

ストレスチェックの対象となる従業員は、正社員だけでなく、条件を満たすパートタイム労働者やアルバイトなどの非正規雇用者も含まれます。具体的な対象者の基準は以下の表のとおりです。

対象者の条件詳細
契約期間期間の定めのない契約、または契約期間が1年以上であること(更新により1年以上使用されることが予定されている場合も含む)
労働時間1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者(正社員など)の4分の3以上であること

実際のストレスチェックでは、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」などが広く用いられ、主に次の3つの領域に関する質問がおこなわれます。これらの質問を通じて、従業員それぞれのストレスの度合いや原因を可視化します。

  • 仕事のストレス要因(職場環境や業務量などの原因に関する質問事項)
  • 心身のストレス反応(疲労感や不安感などの心身の自覚症状に関する質問事項)
  • 周囲のサポート(上司や同僚、家族からの支援に関する質問事項)

このように、ストレスチェックは単なるアンケートではなく、法的な根拠に基づき従業員の健康を守り、働きやすい職場環境を構築するための重要な枠組みとして位置づけられています。

なぜ「ストレスチェックは意味ない」と言われるのか?

クエスチョンマークの積み木

ストレスチェックには「従業員が自身のストレス状況を把握する」「職場環境の改善に役立てる」などの重要な目的があります。しかしその一方で、実施しても「ストレスチェックは意味ない」と形骸化を指摘されるケースも少なくありません。

そこには、アンケートに回答する「従業員側」と、制度を運用する「企業・人事担当者側」それぞれの立場における原因や理由が存在します。以下の表は、両者が意味がないと感じる主な理由を整理したものです。

立場「意味ない」と感じる主な理由
従業員会社が具体的な対策をしてくれない、産業医面談のハードルが高い、評価への悪影響が不安
企業・人事担当者義務として実施しているだけ、集団分析の活かし方が不明、受検率が低くデータが不正確

従業員が「意味ない」と感じる理由

ストレスチェックを受けた従業員には、いくつかの理由から制度の意義を感じられない人が多いようです。具体的にどのような不満や不安を抱えているのかを解説します。

会社が具体的な対策や職場環境の改善をしてくれない

従業員が「ストレスチェックに意味がない」と感じる最も大きな原因は、検査を実施したにもかかわらず、会社側が具体的な対策や職場環境の改善をしてくれないことです。

従業員の多くは、「ストレスチェックに回答すれば、会社が労働環境や業務量を見直してくれるのではないか」と期待しています。しかし実際には、質問に答えて個人の結果を通知されるだけで終わってしまうパターンが非常に多く見られます。従業員自身が「何か具体的な対策をしてほしい」「人間関係や労働環境を改善してほしい」と切実に思っていても、会社が具体的な施策を講じてくれないのであれば、ストレスチェックの意義を感じることはできません。

産業医面談のハードルが高く、根本的な解決につながらない

高ストレス者と判定された場合、医師による面接指導を申し出ることができます。しかし、産業医との面談に対する心理的なハードルが高く、面談を受けても根本的な解決につながらないと感じる従業員が多いことも課題です。

面談を申し出ることで「会社にメンタル不調を知られてしまうのではないか」と警戒する人は少なくありません。また、勇気を出して産業医との面談を申し込んでも、一般的なアドバイスを言われるだけで、職場環境の改善や業務負担の軽減といった具体的なアクションに結びつかないケースもあります。これでは、わざわざ面談を受ける意味がないと判断されてしまいます。

正直に答えると評価に影響するのではという不安がある

ストレスチェックの質問に対して、正直に回答すると人事評価や昇進に悪影響を及ぼすのではないかという不安も、制度が形骸化する原因のひとつです。

本来、ストレスチェックの結果を理由とした不利益な取扱いは法律で禁止されています。しかし、制度のしくみやプライバシー保護の徹底が従業員に十分に周知されていないと、「高ストレスと判定されたら休職させられるかもしれない」「評価が下がるかもしれない」という疑念を抱かせてしまいます。その結果、無難な回答をしてしまい、正確なストレス状況が把握できなくなります。

企業・人事担当者が「意味ない」と感じる理由

ストレスチェックは主に人事総務部を通じて実施されますが、実施側である企業や人事担当者から見ても、制度が形骸化していると感じるケースがあります。

義務として実施しているだけで目的が不明確になっている

労働安全衛生法により年1回のストレスチェック実施が義務付けられています。しかし、単に「法律上の義務だから」という理由だけで実施しており、本来の目的が不明確になっている企業は少なくありません。

メンタルヘルス不調の未然防止や職場環境の改善という明確な目的意識を持たずに、ただ外部機関に委託してテストを実施するだけでは、単なる事務作業に成り下がってしまいます。このような状況では、人事担当者自身も制度の真の意義を見出すことが難しくなります。

集団分析の結果をどう活かせばいいかわからない

ストレスチェックを実施した後は、部署やチームごとの集団分析を行い、職場の課題を見つけることが重要です。しかし、集団分析の結果を受け取っても、それをどのように職場環境の改善に活かせばよいのかがわからないという人事担当者の悩みは尽きません。

ストレスチェックの運用経験が浅い場合や、社内にメンタルヘルス対策のノウハウがない場合、数値化されたデータを具体的な施策に落とし込むことが困難です。結果として、分析レポートを確認しただけで満足してしまい、実際の改善行動につながらないため、「やっても意味がない」という結論に至ってしまいます。

従業員の受検率が低く、正確なデータが取れない

ストレスチェックの受検は健康診断とは異なり、従業員にとって法的な義務ではなく任意です。そのため、従業員の受検率が低く、組織全体の正確なストレス状況を把握するデータが取れないことも、実施側が意味がないと感じる原因です。

従業員が制度の必要性を理解していなかったり、前述のような評価への不安を抱えていたりすると、受検率は著しく低下します。回答者が一部の従業員に限られてしまうと、集団分析を行っても職場全体の傾向を正しく反映できず、効果的な対策を立てるための根拠として活用できなくなってしまいます。

【関連記事:ストレスチェックの受検を従業員に拒否されたら?受検率を高めるポイントを解説

ストレスチェックが持つ「そもそもの目的」を再確認

笑顔の人事担当者

ストレスチェックは労働者のストレスの度合いを可視化し、メンタルの不調を未然に防ぐことを第一の目的にしています。

また、企業が「職場環境の改善」をするうえでも、従業員のストレスチェックは欠かせないものとなっています。ストレスチェックの実施は、厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルにおいても、メンタルヘルス不調の一次予防(未然防止)を主な目的とすることが明記されています。

ストレスチェックが持つそもそもの目的を大きく分けると、以下のようになります。

対象主な目的と効果
従業員(個人)自身のストレス状態を客観視し、セルフケアや医師への相談など自発的な対処を促す
企業(組織)集団分析を通じて職場環境の課題を把握し、労働環境の改善やメンタル不調の未然防止につなげる

従業員自身のストレスへの気づきとセルフケアの促進

ストレスチェックでは、質問を通じて「現在の仕事の状況」や「周りの環境」、および「自身の心身の健康状態」を客観視することができます。

返ってきた分析結果を見ることで、自分でも自覚していなかったストレスの度合いや、ストレスの原因を知ることができるのもストレスチェックの大きな利点です。

従業員自身がストレスの原因や傾向を正確に把握すれば、適切なセルフケアを行ったり、産業医の指導・治療を受けたりするなどの対処が可能になります。そうなれば、うつ病や適応障害といった深刻なメンタルヘルス不調を未然に阻止しやすくなります。

職場環境の改善によるメンタル不調の未然防止

従業員のストレスを軽減するには、個人のセルフケアだけでなく、企業側が率先して職場環境を改善することも重要です。

ストレスの原因が「長時間労働」や「職場の人間関係」「裁量権のなさ」などにあるという結果が出た場合、企業側が仕事量の調整、配置換え、コミュニケーション活性化の施策などを実施しないと根本的には解決しないケースも多く見られます。

また、特定の部署で高ストレス者が多い場合は、管理職へのマネジメント研修や関係者へのヒアリングなどの対処を講じる必要もあるでしょう。

ストレスチェックの集団分析結果を活用すれば、このような「従業員のストレスを減らすための具体的な職場環境改善の施策」が実行できるようになります。個人のケアにとどまらず、企業全体にわたる働きやすい環境づくりに活かすことこそが、ストレスチェックの本来の目的です。

【関連記事:ストレスチェックの集団分析を徹底解説!結果を活かす5つのポイント

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「意味ない」まま放置する企業のリスク

ストレスチェックが形骸化し「意味ない」状態のまま放置することは、企業にとって非常に大きなリスクを伴います。単に法律上の義務を果たしているだけでは、潜在的なメンタルヘルス不調者を見落とし、後々深刻な問題へと発展する可能性があります。

ここでは、具体的にどのようなリスクが想定されるのかを解説します。

従業員の離職や休職の増加

ストレスチェックを形骸化させたままにすると、従業員が抱えるストレスや職場環境の悪化に気付くことが遅れます。その結果、メンタルヘルス不調による休職や、職場への不満からの離職が増加するリスクが高まります。

影響の分類具体的な影響内容
コストの増加採用費や教育費の掛け捨て、休職中の社会保険料負担などの増加
業務への支障残された従業員への業務負荷の偏り、業務遅延やミスの発生
組織風土の悪化職場のモチベーション低下、連鎖的な離職の誘発

従業員の休職や離職は、企業にとって大きな損失となるだけでなく、残された従業員への負担を増やし、さらなる離職を招く悪循環を生み出します。

企業の生産性低下と安全配慮義務違反のリスク

メンタルヘルス不調を抱えながら働き続ける状態は「プレゼンティーズム」と呼ばれ、集中力や判断力の低下を招き、企業全体の生産性を著しく低下させます。

また、企業には労働契約法第5条に基づく「安全配慮義務」が課せられています。ストレスチェックの結果を放置し、具体的な対策を講じないまま従業員がうつ病などの精神疾患を発症した場合、安全配慮義務違反として企業が損害賠償責任を問われるリスクがあります。

過去の裁判例でも、企業が従業員のメンタルヘルス不調の兆候を把握できたにもかかわらず、適切な措置を怠ったとして高額な賠償を命じられたケースが存在します。ストレスチェックを「意味あるもの」として運用することは、従業員の健康を守るだけでなく、企業自身を守ることにもつながるのです。

【関連記事:部下の不調を見逃さない!管理職のためのメンタルヘルス人材育成術【チェックリスト付】

ストレスチェックを「意味あるもの」にする効果的な活用法

打ち合わせ

 

ただ機械的にストレスチェックを実施しているだけでは、何の改善にもつながりません。

ストレスチェックを効果的に利用するには、実施側・従業員の双方がストレスチェックの目的を理解することが大切です。

さらに、ストレスチェックの効果を最大化するには、企業側が主体となって従業員のストレスを取り除ける環境づくりをおこなう必要もあるでしょう。

ここでは、ストレスチェックを実施するうえで重要なポイント、および効果的な使い方をご紹介します。

実施前の周知徹底で受検率と回答の精度を上げる

厚生労働省の調査によると「ストレスチェックが義務となっている企業であっても、実際にストレスチェックを受けた従業員は8割未満であった」というデータがあります。

従業員のストレスの実態を調査するには、やはり全従業員に受けてもらうことが望ましいといえます。

全従業員の受検を目指すには、経営層や現場をまとめる管理職がストレスチェックの重要性を理解していることが大前提となります。そのうえで、従業員に対しストレスチェックの目的や意義、結果の活用方法を共有し続ける必要があるのです。

企業側は従業員がストレスチェックの重要性、意義を理解できるよう、情報提供を欠かさずに継続しましょう。実施前に目的をしっかりと周知することで、受検率が向上するだけでなく、従業員が正直に回答しやすくなり、回答の精度も上がります。

集団分析を活用し、根本的な職場環境改善に取り組む

全従業員がストレスチェックを受けるようになったとしても、その結果が活かされなければふたたび受検率は下がるでしょう。

もしストレスチェックで「職場環境に問題がある」と結果が出たとしても、企業側が何も対処をしてくれなければ、従業員側はストレスチェックの意味がわからなくなってしまいます。

ストレスチェックの分析結果には、職場環境を改善するためのヒントが詰まっています。問題点をピックアップしつつ、具体的にどう改善すればよいかを検討、実施しましょう。

集団分析の結果をもとに、以下のような観点で改善策を検討することが有効です。

ストレス要因の傾向具体的な職場環境改善策の例
業務量が多い・業務のコントロール度が低い業務フローの見直し、人員配置の最適化、フレックスタイム制の導入
上司や同僚からのサポートが不足している1 on 1ミーティングの定期実施、社内コミュニケーションツールの導入、メンター制度の構築
仕事の適性に対する不安やキャリアの悩み研修制度の充実、キャリア面談の実施、社内公募制度の活用

「どのように改善していけばいいのか、具体的な対策がわからない」という場合は、他社の改善事例を参考にするのもおすすめです。

産業医や外部機関との連携を強化する

高ストレス者と判定された従業員に対しては、医師による面接指導が推奨されていますが、社内の人間には相談しにくいと感じる従業員も少なくありません。

そのため、産業医や外部の専門機関(EAP:従業員支援プログラムなど)との連携を強化し、従業員が安心して相談できる窓口を整備することが重要です。

面談のハードルを下げるために、オンライン面談を導入したり、外部のカウンセラーに匿名で相談できる体制を整えたりすることで、メンタル不調の早期発見・早期対応につながります。

ストレス解消につながる社内制度を整備する

従業員のメンタルヘルス不調を防ぐには、ストレス解消ができる社内制度を導入するのも効果的です。

ある会社では、メンタルヘルスチェックだけでなく「チャージ休暇」という制度を設けています。これは勤続年数5年ごとに1週間、10年ごとに1ヶ月の連続休暇取得ができるという制度です。休暇中には給与はもちろんのこと、特別手当も支給されるなど、「安心して休めるしくみ」を構築しています。

もちろん、企業規模によっては同様の制度を導入するのは難しいことでしょう。しかし、こうした制度が運用されていると、従業員自身も休息を取りやすく、メンタル不調の予防につながるはずです。

他にも、リフレッシュスペースの設置や、スポーツジムの利用補助、ノー残業デーの徹底など、自社の状況に合ったストレス緩和策を継続的に実施していくことが求められます。

【関連記事:若手社員のウェルビーイングと健康を向上させるには?課題と企業への影響を解説

職場改善を実感できるストレスチェックに

食事中のビジネスパーソン

ストレスチェックが「意味ない」と感じられる主な原因は、実施自体が目的化し、事後の職場環境改善や具体的な対策につながっていない点にあります。しかし、そのまま放置すれば、従業員の休職や離職の増加、さらには安全配慮義務違反のリスクを招きかねません。

本来の目的であるメンタル不調の未然防止を果たすためには、実施前の丁寧な周知で受検のハードルを下げ、集団分析の結果を基に産業医と連携しながら具体的な職場改善を行うことが不可欠です。制度を形骸化させず、従業員が安心して働ける環境づくりに活かしていきましょう。