更新日:2025/09/12
令和6年の年末調整においての話題は定額減税でした。令和7年は、定額減税はありませんが、近年の物価上昇局面における税負担の調整の観点から、税制改正が行われ、基礎控除等の引き上げが行われました。この改正により、所得税の課税最低限が103万円から160万円に引き上げられました。更に、19歳以上23歳未満の大学生年代の働き控え解消を目的として特定親族特別控除が創設され、大学生年代の子を持つ親等の税負担軽減が図られました。今回はこれらの改正を踏まえ、下記の5つの項目について解説していきたいと思います。
次のとおり、合計所得金額に応じて基礎控除が引き上げられました。
イ、合計所得金額が132万円以下である場合
・・・95万円(改正前48万円)
ロ、合計所得金額が132万円を超え336万円以下である場合
・・・88万円(改正前48万円)
ハ、合計所得金額が336万円を超え489万円以下である場合
・・・68万円(改正前48万円)
二、合計所得金額が489万円を超え655万円以下である場合
・・・63万円(改正前48万円)
ホ、合計所得金額が655万円を超え2,350万円以下である場合
・・・58万円(改正前48万円)
※令和9年分以後についてはロ、ハ、二の区分の基礎控除は一律58万円になります。
※基礎控除額の改正に伴い、令和8年分以後の「源泉徴収税額表」に改正が行われました。
給与所得控除について、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられました。
※給与所得控除の改正に伴い、令和8年分以後の「源泉徴収税額表」に改正が行われました。
19歳から23歳未満の大学生年代の子等の合計所得金額が85万円(給与収入金額150万
円)までは、親等が今までの特定扶養控除と同額(63万円)の所得控除を受けられます。
なお、その子等の合計所得金額が85万円を超えた場合は、親等が受けられる控除の額が
段階的に低減します。
特定親族とは、居住者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が58万円超123万円以下の人をいいます。なお、親族には児童福祉法の規定により教育を委託されたいわゆる里子を含みます。
※配偶者が「配偶者特別控除」と他の居住者の「特定親族特別控除」の両方に該当する場合には、いずれか一方のみ該当するものとみなされます。
1、の基礎控除の引き上げに伴って、次のとおり扶養親族等の所得要件の見直しが行われました。
イ、扶養親族及び同一生計配偶者の合計所得金額の要件・・・58万円以下
ロ、ひとり親の生計を一にする子の合計所得金額の要件・・・58万円以下
ハ、配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額の要件・・・58万円超133万円以下
二、勤労学生の合計所得金額の要件・・・85万円以下
・特定親族特別控除の創設に伴い、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」が追加されました。
・「基礎控除申告書」及び「配偶者控除等申告書」から定額減税に係る記載欄が削除されました。
・その他、「基礎控除申告書」の「控除額の計算」の表及び「配偶者控除等申告書」の「判定」欄について、改正後の金額に修正されました。
参考:令和7年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除兼所得金額調整控除申告書
・「控除対象扶養親族」の記載欄が「源泉控除対象扶養親族」の記載欄に変更されました。
・「源泉控除対象親族」が「特定親族」に該当する場合のチェック欄が追加されました。
・「年末調整」欄に「特定親族特別控除」の記載欄が追加されました。
・「扶養控除等の申告・各種控除額」欄について、次の通り変更されました。
・「特定親族」の記載欄が追加されました。
・「従たる給与から控除する源泉控除対象配偶者と控除対象扶養親族の合計数」の記載欄が「従たる給与から控除する源泉控除対象配偶者と源泉控除対象親族の合計数」に変更されました。
・「配偶者の有無」の記載欄が削除されました。
・「前年の年末調整に基づき繰り越した過不足税額」等の記載欄の位置を変更し、「賞与等」の記載欄が1行削除されました。
令和7年分の給与の源泉徴収事務においては、令和7年12月におこなう年末調整の際に、改正後の基礎控除等に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。
従いまして、令和7年11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。
本記事では、令和7年の年末調整のポイントについて解説しました。年末調整は給与担当や総務担当にとって、とても負担の大きい業務です。みなさんにとって少しでも前倒しで業務が進められるよう、知識の助けとなれば幸いです。
本稿は、令和7年8月21日時点での国税庁の情報に基づき執筆しました。
今後、解説内容に変更が生じる可能性もありますので、最新情報は国税庁サイトでご確認ください。
沖縄税理士会那覇支部所属。
税理士法人Bricks&UK 沖縄事務所 所長。