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産業雇用安定助成金を使って、「在籍出向」であらたなイノベーションを!

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産業雇用安定助成金の趣旨

現在、世の中の会社を見てみると飲食業や観光業など新型コロナウイルス感染症の影響による打撃が大きく、社員を休まざるを得ない会社もある一方で、ステイホーム需要により業績好調で採用を検討している会社もあります。

雇用安定助成金は、このような会社間での雇用シェアを「在籍出向」という形で実現させた場合に、その出向に要した賃金や教育訓練等の経費を補填する助成金となります。

主に社員を休業させた場合に助成される雇用調整助成金に対して、社員を在籍出向して、出向先で働くことにより、助成されるのがこの産業雇用安定助成金です。前回の記事でもご案内したこの助成金について、もう少し詳しく見ていきたいと思います


在籍出向とは

そもそも在籍出向とはどのようなものかということですが、在籍出向とは、出向元企業と出向先企業との間の出向契約によって、労働者が出向元企業と出向先企業の両方と雇用契約を結び、一定期間継続して勤務することをいいます。

出向元の会社と出向先の会社で出向契約(出向期間や職務内容、勤務場所、就業時間、休日、賃金負担等)を結び、その契約に基づいて出向先で社員に働いてもらうのですが、在籍出向は、出向元と雇用関係がありつつ、出向先とも雇用関係があることが特徴です。これに対して移籍出向(転籍)は、出向元と出向先で出向契約を結ぶのは同じですが、出向する社員と出向元の雇用契約を解消して出向先とのみ雇用関係を結びます。

産業雇用安定助成金は、あくまでコロナ禍の中での一時的な雇用シェアを促進する意図ですので、在籍出向の場合のみが対象になります。

このような在籍出向は、一般的にはグループ企業間での人材交流や実習等の目的で行うことが多いのですが、この助成金は、「出向元と出向先が、親子・グループ関係にないなど、資本的、経済的・組織的関連性などからみて独立性が認められること」が受給の条件になっており、グループ企業間での出向は原則、対象外になります。


産業雇用安定助成金の要件

産業雇用安定助成金の概要についてですが、前回の記事で対象となる労働者および出向元と出向先の要件、受給するためのポイントをお伝えしましたが、その他の主な要件は以下の通りです。

  • 出向元と出向先が、親子・グループ関係にないなど、資本的、経済的・組織的関連性などからみて独立性が認められること
    ※資本金の50%を超えて出資していたり、代表者が同一人物などの場合は認められない。
  • 対象労働者は、雇用保険被保険者であること。
  • 出向労働者の同意を得たものであること。
  • 労働者ごとの出向期間が1か月以上2年以内であって出向元事業所に復帰するものであること。
  • 出向元および出向先が賃金の全部または一部をそれぞれ負担していて、出向労働者に出向前に支払っていた賃金とおおむね同じ額の賃金を支払うものであること。
  • 1年度の対象労働者の上限は500人(500人未満の事業所は、その人数分、10人未満の事業所は、10人分)
  • 同一の賃金の支出および同一の教育訓練等における経費支出について、他の助成金を受給している場合は支給対象外
  • 出向先事業所で勤務する日と同じ日に出向元事業所でも勤務する場合や、出向期間中の1か月ごとの出向先事業所で勤務する日数が、出向元事業所において出向を行う前の原則1か月の所定労働日数の半分未満であるものは対象外。

産業雇用安定助成金の受給額について

産業雇用安定助成金は、「出向運営経費」と「出向初期経費」に分かれます。

ア【出向運営経費】

出向元事業主および出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費などにより掛かった金額の以下の割合で掛けた金額が助成されます。

中小企業  9/10(解雇なし)4/5(解雇あり)

大企業   3/4(解雇なし)2/3(解雇あり)

上限額 12,000円/日(出向先・出向元合計)

イ【出向初期経費】

就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先事業主 が出向者を受け入れるための機器や備品の整備などの出向の成立に要する措置を行った場合に助成されます。出向元も出向先も経費が掛かっている場合は、それぞれ受給できる。

助成額 各10万円/1人あたり

加算額 各5万円/1人あたり(出向元事業主が飲食業や運輸業等の雇用過剰業種の企業や生産量要件が20%以上減少している企業である場合、出向先事業主が労働者を異業種から受け入れる場合について、助成額の加算を行います。)

産業雇用安定助成金の受給までの流れ

最後に助成金の手続きの流れの大枠は、以下の通りです。

  1. 出向元と出向先が出向契約を結びます。
  2. 出向契約をもとに、出向先が作成する書類を含めて、出向元事業主が計画届の手続きを行います。
  3. 計画届の通りに出向を実施します。
  4. 出向を実施したあと、支給申請を行います。

その後、審査を経て支給決定されれば受給となります。
※具体的な手続き方法は『厚生労働省「産業雇用安定助成金ガイドブック」をご参照ください。https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000735077.pdf


最後に

出向を単純な「労働力の補填」として捉えると、同業との間で出向契約を結び、出向先としても経験者を受け入れたいと思うことが多いかもしれませんが、異業種から受け入れることにより出向を会社のイノベーションに生かし、新規事業に挑戦するということも可能です。この出向を機会に、助成金を受給しながら新たなチャンスに転換することを検討してみてはいかがでしょうか。

※この助成金や出向制度についてもう少し知りたい、出向についての契約書をどう作ればよいのか分からないなど、お困りごとがあれば是非、弊社サービス”ASUBI座”にご相談ください。

プラットフォーム”ASUBI座”

筆者プロフィール

西田 周平(にしだ しゅうへい)

有限会社人事・労務 チーフ人事コンサルタント

日本大学法学部卒業後、食品メーカーを経て現職。従業員が500名を超える会社から数名の会社まで幅広い企業のES向上型人事制度作成に数多く携わるほか、多くの労働基準監督署の是正勧告対応などの労務トラブルに対応し、その経験からリスク管理に長けた就業規則を作成するなど、中小企業の人事・労務に精通している。最近は、執筆や講演も精力的に行っている。

主な執筆実績

  • 小さな会社働き方改革 就業規則が自分でできる本(ソシム株式会社)
  • Q&A 「労働基準法・労働契約法」の実務ハンドブック(セルバ出版)
  • 従業員満足ES向上型人事制度のつくり方(日本法令)
  • Management Flash(みずほ総合研究所株式会社)
  • HOTERES 週刊ホテルレストラン~物語で学ぶ労務管理~(株式会社オータパブリケイションズ)
  • 月刊遊技通信(株式会社遊技通信社)
  • 会社の経理を全自動化する本(執筆協力 株式会社翔泳社)


主な講演実績

  • 業員満足(ES)向上型人事制度のつくり方(中央職業能力開発協会)
  • 成長企業から学ぶ!ES(従業員満足)向上型人事制度(ヒューマンソリシア株式会社)
  • 第1回 人事・労務 勉強会 -ES 従業員満足施策-(一般社団法人組織内コミュニケーション協会)
  • ここだけは押さえておきたい!トラブルを起こさない労務管理のポイント(キヤノンシステムアンドサポート株式会社)
  • 快適な職場作りを!~メンタルヘルス対策のための労務管理~(ディーアイエスソリューション株式会社)
  • メンタル不調者の対応と労務管理(ピー・シー・エー株式会社)
  • 雇用保険・社会保険の実務ポイント(大分県商工会連合会)
  • ここだけは押さえておきたい!「改正派遣法の概要とポイント」(富士ゼロックス群馬株式会社)
  • マイナンバー制度の概要と実務(青森県青森商工会議所) ・マイナンバー制度開始に向けて企業が取り組むべき対応(応研株式会社)

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