更新日:2019/08/29
年俸制の場合、お給料はどのように支払われるのでしょうか。また、残業代は年俸とは別に支払われるのでしょうか。年俸制と残業代について考えていきます。
目次
年俸制とは、賃金の額を年単位で確定する制度です。1日に稼働した分を貰える日給制、ひと月あたりの額で決定する月給制といった資金制度に分類されるように、賃金の額を1年単位で決める制度を年俸制と呼んでいます。年俸制にすると、労働者と企業側(上司等)との話し合いによって毎年の資金額が変わるという特徴があります。
実際の支払いに関しては、労働基準法24条2項によって最低でも月に1回の支給が必要となります。つまり、決められている年俸額÷12を毎月支給することになるのですが、ボーナス月に多めに振り分けられるという場合もあります。
年俸制を導入する際は、「就業規則」の変更が必要となってきます。年俸制の導入に反対する労働者に対しても、この制度を適用するために就業規則の変更内容にきちんと合理性があるかどうか説明するということも必要になってきます。
年俸制の企業で残業代を支払わなくても良いとされる場合に、「裁量労働制(労基法38条の3、38条の4)」という法的な制度があります。これは労働時間を実務労働時間ではなく、一定時間働いたものとみなす制度です。そのため、実務労働時間に応じた残業代は発生しないとされています。
事業主側と労働者側が労使協定を締結し、業務の進め方や時間配分について具体的に指示をしない旨を定めるとともに、裁量労働に受持する労働時間のみなし制の規定を置かなければなりません。また、対象労働者の健康確保措置や苦情処理措置についても定める必要があります。
業務の性質上その遂行方法を労働者の大幅な裁量に委ねる必要性があるため、業務遂行の手段および時間配分につき具体的指示をすることが困難な一定の専門的な業務に適用されます。具体的には以下の業種が対象業務とされています。
ホワイトカラー労働者(企業の中枢部門のなかで企画や立案、調査、分析の業務を行う)に対してみなし制による労働時間を計算しても良いという制度です。企画業務型裁量労働制は専門業務型裁量労働制と比べると要件が厳格になっており、労使委員会において5分の4以上の多数決による決議が必要となります。事業場の過半数の組合の代表、もしそういった組合がないという場合は、労働者過半数の代表者が任期を決めてから指名するとされています。
年俸制の場合、残業代を支払わなくても良いと考えられがちですが、年俸制だからといってすぐに労基法上の割増賃金の規制(労基法37条)から外れるというわけではありません。
労基法41条2号の管理監督者に該当するケース、前項の裁量労働制、事業場外労働についてのみなし時間制(労基法38条の2)の適用がなされる場合を除き、年俸制の企業でも残業代の支払いは必要となります。
また、賞与部分も含めて金額がすでに確定している年俸制の場合ですと、一時金の形をとるようにしている部分については、労基法施行規則21条によって算定基礎からは外されません。よって、すでに確定している年俸額のすべての額を割増賃金算定の基礎的なものとしていくことが必要になってきます。
次の3つに当てはまっていなくてはなりません。
さらに、労働者が残業代を請求するには労働時間が1日8時間を超過している、もしくは労働時間が週に40時間以上の場合に限ります。
給与明細に残業代という項目が存在しない、または項目はあるけれども残業代として支払われている金額が「時給×1.25(割増率)×残業した時間」で計算したときの金額よりも少ないという場合も、労働者は企業に残業代を請求できるようになっています。
そのほか、労働時間が1日8時間、週40時間を超えていなくても、週に休みが1日以下という場合は企業に残業代を請求できます。
今回は、年俸制についてご紹介しました。年俸制はプロ野球選手だけのものではありません。年俸制は労働者の1年間の給与支給額が確定するため、資金計画が立てやすいのがメリットです。
年俸制の残業代について正しい知識をつけておくだけで、いざというときに焦りませんし、労働者も対応に困りません。年俸制のお給料体系になったとしても、労働者と企業が気持ち良く付き合えるようにしたいものです。
情報提供元
オフィスステーション
オフィスステーションは利用企業数3,900社超の労務手続き、年末調整をペーパーレス化によって労務・人事管理を効率化、自動化するクラウド型システムです。
オフィスステーションの詳細はこちら