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離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)の書き方や注意点について解説 | 離職票や退職証明書との違いは?

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従業員が退職する際には会社が「離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)」を発行する必要があります。離職証明書には記載必須事項が複数あり、正しく記載して期限内に提出することが求められます。

本記事では従業員の退職手続きをご担当される企業側の皆様へ向け、離職証明書の書き方や注意点、離職票や退職証明書の違いについて解説します。

離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)とは

離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)とは、従業員が会社を退職したことをハローワークへ証明するための文書です。

いわば「従業員が正式に退職したこと」を証明する公的書類であり、退職決定時に必要事項を記載して発行すると、ハローワークで「離職票」の請求ができます。

またこの離職票を退職者に渡すことで、退職者は失業給付(失業手当)の手続きができるようになります。

退職者が離職票交付を請求した場合、会社は離職証明書を発行する義務があります。

離職票や退職証明書との違い

離職証明書は他の関連書類と混同されがちですが、それぞれ発行の目的・役割が異なります。

まず離職票は失業給付の申請に必要な書類で、ハローワークが発行、会社が受け取ったあと退職者へ渡すものです。そして離職証明書は、この離職票を発行するために会社がハローワークへ提出する書類です。

退職証明書は一般的な退職証明に使用される書類で、離職証明書・離職票とは異なり会社が任意で発行します。公的な書類ではありませんが、退職者の転職活動などに用いられます。

書式の名称 概要と用途 発行元 提出先(渡す相手) 公的書類か否か
離職証明書
(雇用保険被保険者離職証明書)
ハローワークでの離職票発行に必要な書類 会社 ハローワーク
離職票
(雇用保険被保険者離職票)
従業員が失業給付を申請する際に必要な書類。会社がハローワークから受け取る ハローワーク 退職者
退職証明書 従業員が退職したことを証明する書類。主に転職活動や新しい雇用先での手続きに使用される 会社 退職者 ×

離職証明書の作成・提出が必要なケース

離職証明書は退職者が離職票交付を請求した場合に必ず発行する必要があります。先述のとおり離職票の発行には会社が発行した離職証明書の提出が必須となるからです。

また、退職時の従業員の年齢が59歳以上であるときも離職証明書の発行が必要になります。

1.退職者が離職票の交付を希望(請求)しているとき

退職者が失業給付を受給するための手続きには、離職証明書に含まれる「離職証明書-2」という書類が必須です。

よって会社側は、退職日の翌々日(=雇用保険の被保険者ではなくなった日の翌日)から起算して10日以内に、管轄のハローワークへ以下の書類を提出しなくてはなりません。

  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書
  • 退職者の賃金支払い状況、勤務状況を把握できる資料(※)
    ※該当退職者の状況が把握できる出勤簿、労働者名簿、賃金台帳など

なお、請求に応じなかったときや期日内(退職日の翌々日から10日以内)にハローワークへの手続きをしなかった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるため注意が必要です。

また会社にとっての不利益が生じるだけでなく、退職者側は必要書類である離職証明書が受け取れないままだと失業給付の手続きが滞ってしまいます。

離職票の交付請求があった場合は、遅滞なく速やかに手続きを行いましょう。

2.従業員の退職時年齢が59歳以上であるとき

会社は定年または継続雇用制度で契約期間を満了した従業員の退職時年齢が59歳以上であった場合、本人の希望にかかわらず離職証明書を発行する必要があると法律で定められています(改正高年齢者雇用安定法)。

このことには「高年齢雇用継続給付」が関係しています。

【高年齢雇用継続給付とは】

“高年齢雇用継続給付は、「高年齢雇用継続基本給付金」と基本手当を受給し、60歳以後再就職した場合に支払われる「高年齢再就職給付金」とに分かれますが、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の一般被保険者が、原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。”

引用:ハローワークインターネットサービス - 雇用継続給付

条件に該当する6064歳の方を再就職として雇用する場合、原則として会社が高年齢雇用継続給付の手続きを行うことになります。(※被保険者本人が申請をすることも可能です)

その際「60歳以降の賃金が60歳時点に比べ75%未満に低下したこと」を証明するためには、60歳時点における賃金証明書(正式名称は『雇用保険被保険者六十歳到達時賃金証明書』)の提出が必須です。

賃金証明書の提出時には退職前の賃金支払い状況を証明する離職票-2が必要なため、必然的に離職証明書の発行が求められます。

離職証明書の発行が不要なケース

従業員の退職においても離職証明書の発行が不要なケースがあります。

  • 退職者が離職票を不要とする場合(転職先が決まっている場合など)
  • 従業員が死亡した場合

退職後の転職先が決定しておりすぐに働き始める場合には失業給付の受給対象とならないため、離職証明書および離職票の発行・送付等は不要です。

また従業員が死亡した場合も離職証明書の作成・提出は不要とされています。

ただし、いずれの場合も雇用保険被保険者資格喪失届の提出は必要ですので、期限内に提出を行いましょう。

離職証明書の書き方・記入例

離職証明書には、被保険者番号や事業所番号のほか、従業員の氏名、住所、生年月日、退職日などの基本情報を記入します。

離職証明書の作成・提出については書面(紙)または電子申請(e-Gov)が選べます。事業主控、ハローワーク提出用、離職票-23枚つづりの複写式の書類となっていますので、紙で作成する場合は3枚を重ねて記入しましょう。

また、2枚目のハローワーク提出用については離職者の確認が必要な箇所が2ヶ所あります。

以下では、離職証明書・離職票-2の画像例をもとに記入項目と内容をまとめていますので、参考にしてみてください。

【記入項目】

①被保険者番号 退職者の雇用保険被保険者番号を記載
※1981年7月6日以前から雇用保険へ加入している場合は雇用保険被保険者証の下段の10けたの数字を記載、残り1枠を空欄にする
②事業所番号 会社の事業所番号を記載
③離職者氏名 退職者の氏名を記載
④離職年月日 雇用保険被保険者資格喪失届に記載した離職年月日を記載
⑤事業所名、所在地、電話番号 自社の事業所名と所在地、電話番号を記載
※2枚目の「ハローワーク提出用」には事業主印を押印
⑥離職者の住所または居所 退職時点での退職者の住所または居所を記載
※退職後に引越し等で居所が変わるなど、本人が希望する場合は変更後の住所を記載
⑦離職理由 該当する離職理由を6種類・19パターンから選択し、「具体的事情記載欄」に内容を記載
※説明欄の()内に記入が必要な場合あり
※別途、離職理由を確認できる資料の提出も必要
⑧被保険者期間算定対象期間 退職者に応じた欄(以下参考)へ退職前の2年間から被保険者期間12ヶ月分を記載
  • 一般被保険者と高年齢被保険者:A欄
  • 短期雇用特例被保険者:B欄
⑨被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数 賃金を支払う対象となった期間を記載
  • 月給制:1ヶ月の全日数を記載
  • 時給または日給:実動日数を記載
※賃金支払基礎日数が11日以上ある月、または賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある月を被保険者期間とする
※賃金支払基礎日数が11日未満の月が複数あり、記入欄が足りない場合は「続紙」として離職証明書をもう1通用意し、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月分になるまで記入する
※疾病や怪我、出産、海外勤務等で30日以上継続して賃金を支払っていない期間がある場合はその期間について記載が不要(支払いが行われなかった理由を『⑬備考』欄に記載)
⑩賃金支払対象期間 退職日直前の賃金締切日の翌日~退職日までを記載
以降は1ヶ月ずつ遡って賃金締切日までの期間を記載
※締日よりも前に退職した場合は1ヶ月としてカウントしない
⑪賃金支払対象期間における基礎日数 ⑩の期間内において賃金支払の基礎日数を記載(有給休暇を取得した日や休業手当の対象日を含む)
⑫賃金額 賃金について記載する
  • 月給(正社員など):A欄にその期間のすべての賃金を記載
  • 時給、日給や出来高制、請負制:B欄に賃金を記載、月極の手当はA欄へ記載し「計」の欄にて合算
※使用しない欄は斜線を引く
⑬備考 上記欄についての補足や未払賃金の有無、その参考額等を記載
⑭賃金に関する特記事項 毎月の賃金以外に支払われている賃金(3ヶ月以内の期間ごと定期的な支払いがあるもの)がある場合は記載
支払日、賃金の名称、支給額を記載する
⑮署名捺印
(ハローワーク提出用)
⑧~⑭について退職者本人に確認してもらい、記名押印(または自筆署名)をしてもらう
※やむを得ない事情にて本人の記名押印・署名ができない場合は、事業主印を押印し理由を記載する
⑯離職者本人の判断 退職者が⑦を確認したのちに間違いがなければ記名押印(または自筆署名)を行ってもらう。離職理由への異議の有無についても○で選択
※記入が不要な欄は斜線を引く

なお、離職証明書を作成する際には離職理由を具体的に記入することが求められます。

特に自己都合退職か会社都合退職かどうかについては基本手当の給付日数や給付開始のタイミングに大きな影響を及ぼしますので、適切な理由を明記しましょう。

例)
自己都合退職の場合……「2023515日付で自己都合により退職」
会社都合退職の場合……「業績不振に伴い、2023515日付で退職」

会社の業績不振や解雇など、再就職の準備をする時間的余裕のないまま退職した従業員については「特定受給資格者」に該当します。

またいわゆる“雇い止め”などで有期雇用契約の更新がされず退職した場合や、心身の不調や妊娠出産、介護・看護などの正当な理由で自己都合退職をした場合は「特定理由離職者」に該当します。

特定受給資格者または特定理由離職者に認定された場合、失業給付の受給に必要な被保険者期間の要件が「6ヶ月(離職以前1年間)以上」に緩和されるほか、基本手当の所定給付日数が手厚くなる場合があります。

退職理由については正確に記入するとともに、退職者に誤りがないかを必ず確認してもらいましょう。

参考リンク:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準|厚生労働省

離職証明書を作成する際の注意点

休業手当の支払期間がある退職者の場合

休業手当を支払った期間がある場合は、⑬の「備考」欄へ記入します。

ひと月まるまる休業していた場合は「全休業」と記載し、休業手当の支払い額を記載しましょう。

育児・介護等で時短勤務していた退職者の場合

育児や介護などで時短勤務をしていた期間がある退職者については、実際に支払われた賃金をベースにして基本手当を算定します。

ただし「特定受給資格者」に該当する時短勤務者の場合は、特例により時短勤務前の賃金日額をベースに算定が行われます(賃金日額特例措置対象予定者)。

この場合、離職証明書とともに「雇用保険被保険者短縮措置等適用時賃金証明書」の提出が必要です。

参考リンク:被保険者についての諸手続|◎勤務時間短縮措置等適用時の賃金日額算定の特例について 厚生労働省

短期雇用特例被保険者にあたる退職者の場合

4ヶ月以内の期間を定めて雇用される者」「一週間の所定労働時間が30時間未満である者」に該当しない季節雇用の労働者は「短期雇用特例被保険者」となり、離職月を含む月から被保険者となった時点まで遡って記載をします。

短期雇用特例被保険者であっても1年以上雇用していた場合は一般被保険者(65歳以上は高年齢被保険者)に該当するため要注意です。

高年齢被保険者にあたる退職者の場合

退職者が高年齢被保険者(65歳以上で雇用保険に加入している者)の場合は、離職証明書内の⑧被保険者期間算定対象期間、⑨当該期間における賃金支払基礎日数に「退職前の6ヶ月以上にあたる期間・日数」を1ヶ月ごとに記載します。

離職証明書の提出方法

離職証明書の提出は期限内に行うとともに、離職理由に応じた添付書類が必要です。また署名・押印が必要な箇所、提出方法についても把握しておきましょう。

提出期限は退職日の翌々日から10日以内

離職証明書は従業員が退職した翌々日から10日以内に作成、提出します。提出が遅れると退職者の失業給付受給開始が遅れてしまうため速やかに提出しましょう。

離職理由に応じた添付書類を準備する

離職証明書の提出時には以下を提出します。

  • 離職証明書3枚複写)
  • 記載期間すべての賃金支給の内訳や交通費が確認できる賃金台帳(または給与明細書)
  • 記載期間すべての出勤簿(またはタイムカード)
  • 離職理由が確認できる書類のコピー

離職理由が確認できる書類のコピーの例は以下の通りです。

添付書類として離職証明書に添えて提出しましょう。

離職理由 必要な添付書類
事業所の倒産等 裁判所で破産手続きの申立てを受理したことを証明する書類等
解雇 解雇通知書、労働者名簿等
自己都合 退職願、労働者名簿等
退職勧奨 退職願、労働者名簿等
定年 就業規則や再雇用に係る労使協定書等
契約期間満了 労働契約書や雇入通知書、契約更新通知書等
いずれも該当しない場合 離職内容を確認できる資料等

離職証明書⑮⑯欄に退職者の署名・押印が必要

作成方法についての項で触れたとおり、離職証明書のハローワーク提出用には退職者の署名・押印が必要です。内容を確認してもらい⑮⑯欄へ署名押印をもらいましょう。

また、書き損じなどで訂正が必要な場合は左側の枠外に事業主印を押印します。退職者本人が署名できない場合は⑮⑯欄に事業主印の押印、または事業所名の記入が必要です。

抜け漏れがないよう必ず確認しましょう。

離職証明書の提出方法には直接提出、郵送、電子申請がある

離職証明書の提出方法には直接提出、郵送、電子申請などがあります。

直接提出の場合はハローワークから専用用紙を取得し、記入して提出します。ハローワークによっては郵送で離職証明書を請求し、提出することができるケースもあります。

一方電子申請の場合は、e-Govから離職証明書の提出を行います。申請にはe-Govのアカウント登録および電子証明書の取得が必要ですが、紙の離職証明書を取りに行く手間がなく、24時間手続きが可能なため効率的に退職の手続きを進められます。

離職証明書を電子化して効率化を図ろう

本記事では離職証明書の書き方や注意点について解説してまいりました。

離職証明書は離職票の発行、および退職者が失業給付を受給するうえで欠かせない書類です。正しい作成方法を把握したうえで速やかに提出しましょう。

また、提出方法については電子申請を選択することでより効率的かつ迅速に作成・提出ができるようになります。ペーパーレス化を進めていらっしゃる企業様は、今後の離職証明書の作成・提出においても電子化を検討されることをおすすめいたします。

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※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。