更新日:2023/08/22
会社から従業員へ支給する「給与」。給与支給時には給与額の内訳や控除額などが記載された「給与明細」を合わせて交付しますが、会社で保管しておくべきか判断に困る方がいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、給与明細は「保管義務こそないものの、保管が推奨される書類」です。
ここでは給与明細の保管について、なぜ保管が推奨されるのか、保管方法の注意点や再発行を求められた場合の対応方法なども踏まえてお伝えします。
給与明細は、会社が従業員に支給する書面のひとつです。一般的には給与算定時に給与明細を作成、給与支払い時に従業員へ交付されます。
給与明細には給与に関する支給額、控除額のほか、有給休暇の残り日数などが記載されています。
これらは従業員だけでなく会社にとっても重要な情報であるため、給与明細についても「領収書」「請求書」などの証憑と同じく、保管が必要では? と思われるかもしれません。
実は、法律において“給与明細そのものを保管しなくてはならない”といった義務やルールはありません。
よって保管すること自体は『任意』となります。
一方、「給与計算の根拠となる書類」および「給与明細の記載項目についてまとめた書類」については、既定の期間内で保管が必要になります。
以下の書類は法律で保管が義務付けられているので、整理したうえで所定の場所へ厳重に保管しておきましょう。
【参考:保管義務のある主な書類】
書類の種類 | 概要 | 保管期間 |
---|---|---|
労働者名簿 | 法定帳簿のひとつで、労働者の氏名、住所、生年月日などが記載されている書類 | 5年間 |
賃金台帳 | 従業員に対する給与の支払い状況を記した書類 | |
雇い入れに関する書類 | 雇用決定に関する書類や雇用契約書、労働条件通知書、履歴書など | |
解雇に関する書類 | 解雇決定に関する書類、解雇予告除外認定に関する書類 | |
災害補償関連の書類 | 労災が適用されるけが、病気の診断書、領収書、補償支払い関連の書類 | |
賃金関連の書類 | 賃金決定に関する書類、昇給・減給に関する書類 | |
労働関連の重要書類 | 出勤簿やタイムカード、労使協定書、許認可書など | |
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 扶養控除を受ける従業員が提出した書類 | 7年間 |
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 | 保険料控除、配偶者控除、配偶者特別控除などを受ける従業員が提出した書類 | |
源泉徴収簿 | 源泉徴収簿を作成している場合 |
先の項で「給与明細の保管義務はない」とお伝えしました。
しかし実際には、保管義務がないにもかかわらず「賃金台帳」と合わせて給与明細を保管している企業がかなりの割合を占めているのが実情です。
そこには「従業員に再発行を求められたとき、対応しやすいから」という理由が挙げられます。
従業員が給与明細を紛失したり、住宅ローンや確定申告をするために必要になったりした場合、給与明細の再発行を依頼されることがあります。賃金台帳からまた再作成するという方法もありますが、給与明細を残しておいたほうが手間なく再発行・再交付ができるのです。
また、従業員から「未払い賃金」を請求された場合、給与を支払った根拠として給与明細が役立つケースもあります。
従業員側は給与明細を保管している場合が多いですが、会社も給与明細を保管することで
といったメリットが得られるでしょう。
以上の理由から、給与明細は会社側で保管しておくことをおすすめします。
給与明細の保存期間については、「5年間」としている企業が多く見られます。
これは保管義務のある賃金台帳の保管期間が5年であること、従業員が確定申告をする場合の還付・控除の時効が5年であることが大きな理由です。
また具体的な保管方法は、給与明細の発行方式(紙かPDFなどの電子データか)によって異なります
給与明細を紙で発行している場合、気をつけたい点がいくつかあります。
まず、給与明細は従業員の重要な個人情報が記載された書類である、ということを頭に置いておく必要があります。情報の漏洩や紛失、消失などはあってはならないことですので、十分取り扱いに注意しましょう。
具体的には以下のような対処が必要になります。
バインダーやファイルなどに綴じる場合は、個人別に分け、さらに月別に並べて検索性を高めるようにしておくと後から探しやすくなります。また紙の場合、日光や湿気で劣化してしまうので、気温の変化が少なく日に当たらない場所での保管が適しています。閲覧権限を限定することも重要です。
また、従業員数が多く保管場所が圧迫されそうな場合や、ファイリングの手間・紙の購入コストなどを減らしたい場合は、「電子化」してから保存してしまうのもひとつの方法です。
紙の給与明細をいったんスキャンし、PDFデータや画像データとして保管することで、場所も取りません。ファイル名を工夫すれば検索性も高まります。このとき、電子化した書類を管理する「文書管理システム」などを活用すると、効率よく給与明細データの管理ができます。
なお、給与明細をスキャンする際には、文字が判別できる解像度(200dpi以上)で取り込むようにしましょう。
従業員の同意を得たうえで給与明細を電子データ(PDFなど)で交付している場合は、データのままPCやクラウド上で保管が可能です。保管場所も不要でコストも抑えられるため、近年では電子メールやWEB経由で給与明細を交付する企業も多く見られます。
スキャンなどで電子化したものを含む給与明細データを保管する際は、「情報漏洩」に注意しましょう。
フォルダに給与明細を保管している場合は、アクセス権を限定し、特定の管理者のみが閲覧できるようにしておきます。またUSBなどの記憶媒体へ保管・バックアップする場合は、鍵付きのボックスなど持ち出しが難しい場所へ保管することをおすすめします。
なお、電子化した給与明細の配信・管理を簡便化するには「給与明細配信システム」などのサービスを活用する方法もあります。
これは、作成した給与明細を専用WEBページへアップロードし、従業員へ通知するというものです。
発行した給与明細のデータはシステム(およびWEB上)に蓄積されていき、自動的に時系列順に整理されるため、検索しやすく再発行・修正にもスピーディに対応できるようになります。
データは暗号化されるほか、クラウド上で運用監視されているので不正アクセスが生じた際にもすぐに異常を検知でき、セキュリティ性も抜群です。給与明細の発行から保管、管理をより効率的に行いたいなら、こうしたサービスを活用してみましょう。
給与明細を交付したあと、従業員から再発行を求められるケースは珍しくありません。
給与明細は住宅ローン・カーローンの申し込み、医療費控除等の収入を証明する書類として必要になることがあるからです。また、うっかり紛失してしまったので再発行してほしい、といったケースも意外に多いものです。
給与明細の再発行を求められた場合、会社側への再発行の義務はありません。反対に、再発行をしたからといって法的な罰則があるわけでもありません。あくまでも会社の裁量にゆだねられています。
ただ、再発行を断った場合には従業員の信頼を損なうリスクが生じます。よって特別な理由がない限りは再発行したほうがいいと考えてよいでしょう。
なお、再発行には相応の手間もかかりますし、紙発行の場合は印刷コストや送付等のコストも生じます。これらを踏まえたうえで、「原則として再発行はしないこと」「大切に保管し、紛失などを防ぐ意識を持ってほしいこと」を周知しておきましょう。
給与明細は発行後の保管義務がなく、保管するかどうかは任意です。ただし従業員から再発行を求められたり、給与を支給したことの証拠書類として使用したりする可能性もあるため、現実的には保管しておいたほうが安心だといえます。
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「紙の給与明細による業務の手間を減らしたい」「ペーパーレス化してテレワークしやすい環境を作りたい」という企業は、ぜひ給与明細の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。
紙の場合も電子交付の場合も、給与明細を保管する際は情報漏洩・不正アクセスなどのセキュリティ対策を万全に行いましょう。