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電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの役割と利用方法について
電子帳簿保存法とは? 概要をおさらい
電子帳簿保存法(正式名:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿の保存方法等の特例に関する法律)は、もともと紙媒体で保存していた帳簿書類を電子データで管理するために作られた法律です。
近年では紙と電子データによる帳簿書類が混在していますが、電子帳簿保存法は段階的に改正が行われており、「電子データでの帳簿書類の保存、および紙保存の廃止」を推進しています。
電子帳簿保存法の対象となるのは、税法で保存義務が課せられている「国税関係帳簿」や「国税関係書類」、「電子取引にかかる文書」などです(電帳法4条1~3項、同法第7条より)。
- 国税関係帳簿
仕訳表、総勘定元帳、売掛帳、買掛帳、現金出納帳、固定資産台帳など - 国税関係書類
決算関係書類(貸借対照表、損益計算書、試算表、棚卸表など)
取引関係書類(請求書、見積書、納品書、注文書、領収書等)自己発行の写し(請求書、見積書、納品書、注文書、領収書等の控え)
電子取引(メールやクラウドサービス、EDIなどにより授受した書類)
請求書、見積書、納品書、注文書、領収書等
会社のバックオフィス業務においては「会計ソフト」「販売管理ソフト」等で帳簿を作成し、取引先とPDFやダウンロード方式、紙などで証憑のやりとりを行います。
こうした取引記録は、すべて電子帳簿保存法の対象です。
また同法律では、帳簿や書類の性質、種類に応じた保存要件を定めています。
- 国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存について
会計ソフト等で初めからPCで作成した帳簿書類はそのまま電子データで保存をする - 国税関係帳簿書類をスキャナで読み取る電子保存について
紙で発行された請求書等をスキャナで取り込み、電子データとして保存する - 電子取引による取引情報の電子保存について
インターネットを介し、データで授受された取引の情報をそのまま電子データで保存する
電子帳簿保存法はもともと1998年に制定された法律ですが、時代の変化とともに改正され、直近では2022年1月から「改正電子帳簿保存法」が施行されています。
改正後は電子保存に関する税務署長の事前承認が不要になったほか、2022年1月1日以降に行われた電子取引データを紙へ印刷して保存できなくなりました。ただし、このルールには2年間(2024年1月1日まで)の猶予期間が設けられています。
「タイムスタンプ」の役割とは?
電子帳簿保存法と密接な関係のある「タイムスタンプ」は、電子データのコピーや改ざんを防ぐためのしるしです。
タイムスタンプには日付や時刻だけではなく、ハッシュ関数というランダム生成の値が含まれています。このハッシュ値は、データが少しでも変わると全く異なるハッシュ値が生成されるのが特徴です。
実際に電子データへタイムスタンプを追加すると、以下の2点を証明できるようになります。
- タイムスタンプを付与した日時に、データが存在していた
- タイムスタンプが加えられたときから、データの改ざん等が行われていない
電子データは紙の書類に比べると、コピーや改ざんが簡単にできてしまうという性質があります。
そこへタイムスタンプを付与することで、原本の信ぴょう性(原本性)を証明できるようになるのです。
仮に改ざんされたとしても、ハッシュ値が異なるため「変更が加えられたこと」が確実にわかるようになります。
またタイムスタンプは「時刻認証局(TSA)」という第三者機関によって発行されるものです。
つまりタイムスタンプが付与された電子データは「第三者が原本であることを証明しているデータ」となり、高い信頼性があるデータ、ということになります。
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの利用方法
2022年の改正以前、電子帳簿保存法でタイムスタンプを利用する際にはさまざまな要件が定められていました。
しかし改正以降は、タイムスタンプの付与要件、およびルールが緩和されています。
帳簿書類によってはタイムスタンプの付与が要らないケースもありますので、しっかりと把握しておきましょう。
PCで作成済みの帳簿書類を電子データ保存する場合
税務関係の帳簿や決算関係の書類をPCで作成した場合、そのまま電子データとして保存する必要があります。
このとき、「電子帳簿保存法に対応済みの会計ソフト」を使って帳簿を作成していれば、後からタイムスタンプを付与する必要はありません。
ピー・シー・エー株式会社の『PCA会計シリーズ』電子帳簿保存法に対応済みの会計ソフトで、電子帳簿保存法4条1項、4条2項(決算書類関係)に対応しており、JIIMA認証を取得しております。
紙で受領済みの書類をスキャンして保存する場合
紙で受け取った請求書や領収書などの書類については、以下の条件をすべて満たしていればタイムスタンプの付与が要りません。
- 電子データの訂正や削除時に履歴が残る(電子帳簿保存法に対応した)クラウドシステムを利用している
- 決められた入力期間内(※)にスキャン、クラウドシステムに保存している
※最長約2ヶ月と概ね7営業日以内
つまり「電子帳簿保存法に対応済みのサービス、クラウドシステムを利用すれば、タイムスタンプを後から追加しなくてよい」ということになります。また処理期間についても最長で2ヶ月+7営業日の猶予が設けられていますが、これにより「すぐにスキャンができない」というケースであっても対応できるようになっています。
電子取引の書類を保存する場合
2020年の電帳法改正前は、電子取引のデータを受領した者が遅滞なくタイムスタンプを付与しなくてはなりませんでした。しかし2020年の改正後は、以下のようなルールが定められています。
- 発行者側でタイムスタンプが付与されていれば、受領者(受け取る側)はタイムスタンプを付与しなくてよい
- 発行者側でタイムスタンプが付与されていなくても、受領者側が“データの改変ができないシステム”を利用していればタイムスタンプは不要
後者は「データ改変ができない=原本性が担保される」システムやサービスを利用することで、タイムスタンプの代わりとしていると考えてよいでしょう。電子帳簿保存法に対応しているシステム・サービスを使っていれば、この要件を満たしています。
なお、「発行側がタイムスタンプの付与なしで、かつ受領側が改変できるシステム・サービスを使っている」という場合は、受領者側がタイムスタンプを別途で付与しなくてはならないので注意しましょう。
タイムスタンプの発行手順や費用は?
最新の改正電子帳簿保存法では、タイムスタンプが不要になるケースが拡大されました。
ただ、現在はいわば“電子帳簿保存法に対応したシステム導入”の移行時期であり「電子取引においてタイムスタンプを自社で付与したい」というふうにタイムスタンプが必要になる場面はまだまだ多いでしょう。
これからタイムスタンプを付与するためにシステム・サービス変更を考えていらっしゃる事業者様は、タイムスタンプの発行に必要な準備や発行手順、費用について把握しておきましょう。
タイムスタンプを発行する際に必要な準備
タイムスタンプを発行する際には、以下の準備が必要です。
- 帳簿書類の準備
- インターネット環境
- 時刻認証業務認定事業者(TSA/Time-Stamping Authorityの略)との契約
- タイムスタンプ付与機能のあるシステムの導入
時刻認証業務認定事業者(TSA)は、タイムスタンプを発行する事業者のことです。
日本では「セイコーソリューションズ株式会社」「三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社」など複数の時刻認証業務認定事業者(TSA)が、タイムスタンプの発行を担っています。
時刻認証業務認定事業者(TSA)との契約には所定の費用がかかるため、あらかじめ確認しておきましょう。
また「タイムスタンプ付与機能のあるシステム」については、タイムスタンプを付与したい帳簿・書類の種類に応じたツールを準備しましょう。たとえばスキャン・保管などができる証憑管理ソフトであれば、会計ソフトと連携できるものを選ぶと便利です。
また、2022年1月に施行された電子帳簿保存法改正に対応した証憑電子保管サービスをお探しの方には、ピー・シー・エー株式会社の『PCA Hub eDOC』がおすすめです。
『PCA Hub eDOC』は電子帳簿保存法改正に対応、法律で求められている電子取引やスキャナ保存制度に対応する機能を搭載した証憑電子保管サービスです。『PCA Hub eDOC AI-OCR オプション』を追加すると、請求書や領収書に記載されている取引先・金額・日付の電子帳簿保存法で必須な管理項目を『PCA Hub eDOC』に自動登録でき、経理部門などの実務担当者における入力作業の自動化を推進できます。
最大2ヶ月間の無料体験期間があるため、導入までじっくり考えられます。また、無料期間が終了しても、自動で支払いが始まることもありません。『PCA Hub eDOC』の詳細資料はこちら。体験をしてみたい方はこちら。
タイムスタンプの発行手順
タイムスタンプの発行手順は以下の3ステップです。
- 電子文書をアップロード
- 時刻認証局(TSA)へタイムスタンプの発行を要求
- TSAがタイムスタンプトークンを生成、利用者へ送信
- スタンプトークンのキーを受け取り、原本の信頼性が証明される
上記のように、時刻認証局(TSA)が生成したタイムスタンプトークン(時刻とハッシュ値が含まれているもの)を、電子データと一緒に保管するというのが一連の流れです。
トークンの生成時には“タイムスタンプのカギ”がかけられており、利用者(タイムスタンプの発行依頼をかけた側)が改変できないようになっています。
また、電子データの原本性を証明したい場合は、TSAからタイムスタンプのカギを受け取り、トークンを開く仕組みです。保存済みのタイムスタンプトークンと原本、それぞれのハッシュ値が同じであれば、「このデータは原本として存在しており、改変もされていない」と証明できます。
タイムスタンプ発行にかかる費用
タイムスタンプの発行には、初期費用と発行費用がかかります。
- 初期費用:数千円~30万円とTSAによって幅がある
- 従量制の場合:タイムスタンプ発行費用として1回あたり10円前後
- 定量制の場合:サービスによりまちまちだが、数千円~が多い
初期費用はTSAや利用するシステムによってもかなり幅がありますが、初期費用が低めの業者はタイムスタンプの発行費用がやや高め、というケースもあります。
また発行費用は“1件いくら”の「従量制」か、“月々いくら”の「定量制」のいずれかとなります。どちらがよいのかはタイムスタンプの付与件数によっても異なるため、よく調べたうえで自社に合った業者・サービスを選びましょう。
タイムスタンプで原本性を証明! 電子帳簿保存法対応ツールを検討しよう
電子データとして保存した帳簿書類の信頼を担保する際には、タイムスタンプの付与が有効です。改正電子帳簿保存法の施行以降は要件を満たしていればタイムスタンプが不要になりましたが、取引先によってはタイムスタンプの付与が必要になるシーンもあるでしょう。
現時点で電子帳簿保存法に対応していないツールを使用している場合は、電子帳簿保存法対応ツールの導入を検討するとともに、タイムスタンプへの対応についても改めて確認しておきましょう。
※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。