更新日:
年末調整の流れと年末調整後に作成する提出書類について解説
12月の年末調整は給与計算の担当者にとって一番の大仕事といっても過言ではありません。膨大な作業量があるため時間とのたたかいで、いかにスケジュールを管理するかがポイントです。
毎月のルーチンである月額給与の計算と同時進行になるため、年末調整のながれを把握して事前に作業を調整したり、場合によっては担当の割り振りを検討することも必要です。
この記事では年末調整とその流れ、年末調整後に作成する、源泉徴収票と、法定調書合計表・給与支払報告書について解説します。
年末調整とは
年末調整はその年の1月1日から12月31日までの所得に各種控除を反映し、正しい所得税を計算して、給与や賞与の支払い時に概算で源泉徴収している所得税との差額を還付・徴収する作業です。
毎月の給与や賞与から引かれる所得税は、配偶者や扶養親族の数、社会保険料を考慮した所得をもとに概算の税率で計算されています。
その時点では生命保険などの保険金控除や住宅ローンの借入に応じて受けられる住宅借入金等特別控除などは反映されていません。それらは年末調整で申告して受けられる控除だからです。多くの従業員が所得税の還付を受けられるのも、そのためです。
年末調整で所得税を徴収される場合は、配偶者のパート代や子供のアルバイト代が103万の扶養上限の収入を超えた場合が多いようです。
給与計算担当者は扶養状況の確認を怠らないように注意しましょう。
年末調整の流れ
年末に向けて進む年末調整は作業量が膨大なうえ、従業員から各種書類を回収する必要があるためスケジュール管理が重要です。年末調整を円滑に進めるための「ながれ」と「手順」を確認しましょう。
【給与を12月25日・冬期賞与を12月10日に払っている場合】
時期 | スケジュール |
11月中旬 | 当年の年末調整に必要な書類を社内に配付する。※税制に変更がある年もあるため注意事項も詳しく説明する |
11月下旬 | 社員から年末調整に必要な書類を回収し、内容をチェックする。 冬期賞与の査定・支給額を確定する。 |
12月上旬 | 賞与の計算を行う。 |
12月賞与 | 冬期賞与を支払う。 |
12月中旬 | 12月給与の計算で12月の給与計算、年末調整の計算をして還付額や徴収額を確定する。 源泉徴収票を作成する。※12月の給与明細と同時に従業員に渡す源泉徴収票を準備・配付をする。 |
12月給与 | 年末調整結果を反映した給与を支払う。 |
1月10日 | 年末調整結果と源泉所得税の申告および納付(休日の場合は翌日)をする。 |
1月31日 | 法定調書合計表・源泉徴収票・支払調書を税務署へ提出(休日の場合は翌日)をする。 |
このスケジュールの11月下旬の従業員から年末調整に必要な書類を回収してから、12月中旬の年末調整の計算を完了するまでは、給与計算担当が1年で一番忙しいといっても過言ではありません。
11月中旬の書類を配付するときに、わかりやすい記入見本を配付したり、前年との変更箇所など記入時に注意すべき点を通達などで周知して、回収した書類の記載誤りや確認事項を少しでも減らす努力をしましょう。
回収した書類は順次確認していきます。保険会社の証明書などが不足している場合は早急に従業員と連絡をとって対応しましょう。
12月に中途入社する従業員も12月給与が発生する場合は年末調整の対象です。前職の退職源泉徴収票の記載内容を確認して年末調整しましょう。
年末調整の結果は「源泉徴収票」として1月末までに所轄の税務署に届出することになっています。従業員数が多いなど一定の条件を満たすと「e-tax」で電子申告しなければなりませんので事前にチェックしておきましょう。
また、給与計算ソフトをうまく利用すると年末調整の効率もあがります。選択肢のひとつでしょう。
新しく給与計算ソフトの導入や、入れ替えを検討中の方は、ピー・シー・エー株式会社のクラウド給与計算ソフト『PCAクラウド 給与』がおすすめです。
月々の勤怠項目の入力により給与明細書を作成、また月次の給与計算・賞与計算の他、算定基礎届や月額変更届の作成、年末調整など、中小企業様での給与計算業務に必要な機能を備えています。最大2ヶ月間の無料体験期間があるため、導入までじっくり考えられます。また、無料期間が終了しても、自動で支払いが始まることもありません。
年末調整に必要な書類
年末調整では会社に必要な書類を提出することで各種の控除を受けることができます。逆にいえば必要書類を正しく記入していない場合や添付書類が不足している場合、書類が未提出の場合は年末調整の税額計算に反映することができません。
控除を受けるためには次の(1)~(6)のような書類が必要です。
- (1) 基礎控除申告書
- (2) 配偶者控除等申告書
- (3) 所得金額調整控除申告書
- (4) 扶養控除等申告書
- (5) 保険料控除申告書
- (6) 住宅借入金等特別控除申告書
(1)「基礎控除申告書」は「基礎控除」を受けるために必要で、すべての従業員が提出します。扶養内で働くパートタイマーやアルバイト、中途入社で自社での支払い給与が103万未満である従業員や控除額が0の従業員であっても必要です。
年末調整の結果、所得税額が0となるパターンもありますが、それは税計算の結果です。計算過程で基礎控除を反映するためには基礎控除申告書の提出が必須ですので覚えておきましょう。
年末調整の控除とは
年末調整は必要書類を会社に提出することで各種の控除を受けることができます。控除には2つの種類あります。所得税の税率をかける基礎となる所得から控除する所得控除と、計算した所得税の税額から控除する税額控除です。
年末調整で受けられる控除には次の(1)から(12)のようなものがありますが、(1)から(11)は所得控除、(12)は税額控除であることを覚えておきましょう。
- (1)基礎控除
- (2)配偶者控除
- (3)配偶者特別控除
- (4)扶養控除
- (5)障害者控除
- (6)寡婦控除
- (6)ひとり親控除
- (7)勤労学生控除
- (8)生命保険料控除
- (9)地震保険料控除
- (10)社会保険料控除
- (11)小規模企業共済等掛金控除
- (12)住宅ローン控除(初年度は確定申告、2年目以降は年末調整で対応)
上記以外の医療費控除やふるさと納税などの寄付金控除、災害または盗難や横領によって資産に損害を受けた際に受けられる雑損控除は年末調整では処理できません。確定申告しなければなりませんので注意しましょう。
年末調整は会社の義務
年末調整は会社の義務です。年末調整をおこなわないと従業員が正しい税額納付できないからです。そのため、会社が従業員の年末調整をおこなわなかった場合は次のような罰則があります。
年末調整を実施しなかった場合の罰則
所得税法第242条:1年以下の懲役または50万円以下の罰金
年末調整はしたが、不足税額を追加徴収しなかった場合の罰則
所得税法第240条:10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方
年末調整するだけでなく、不足額を徴収することにも罰則がありますので注意してモレのないようにしましょう。
源泉徴収票と給与支払報告書、支払調書
年末調整後には、源泉徴収票と、法定調書合計表・給与支払報告書の作成があります。いずれも税金のために提出するもので、会社の義務ですが書類の意味合いが違います。この時期に耳にすることの多い支払調書とあわせてご説明しましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票とは、1年間で会社が従業員に支払をした給与と徴収した税金の金額が記載された用紙です。年末調整業務終了時や、従業員の退職時、または従業員の依頼があったタイミングなどで発行します。年末調整終了時、従業員に1部、税務署に1部、源泉徴収票を作成します。税務署への提出は、提出の範囲が決められていますので、必要に応じて提出しましょう。
法定調書合計表
法定調書合計表とは、前年の所得税が正しく納税されているか確認するために1月末までに税務署に提出するものです。法定調書の種類ごとに人数・支払金額・源泉徴収税額などの情報を記載し、法定調書と一緒に提出します。国税に関する各種の手続について、インターネット等を利用して電子的に手続が行える、e-Tax(イータックス)で提出可能です。
給与支払報告書
住民税は前年の所得に対して課税されるため、従業員の翌年の住民税を計算するために必要な当年の所得などを市町村に届出します。 eLTAX(エルタックス)で提出可能です。
支払調書
士業やフリーランス、請負などへの支払のほかに、個人地主への地代の支払いなど一定の要件に該当した支払については支払調書を作成して法定調書合計表と一緒に税務署に提出します。支払対象のマイナンバーが必要ですので事前に連絡してマイナンバーを回収しておくとスムーズに進みます。
まとめ
年末調整は給与担当にとって大イベントです。12月の給与計算と同時進行になりますし、冬期賞与とも作業期間がかぶるため、スケジュール管理が重要なポイントとなります。給与計算を担当している筆者も毎年いかに円滑に進めるかを考えます。
令和2年に配偶者控除の記載方法が大きくかわった際は記入誤りなどが多く大変でしたが、3年目となる令和4年は落ち着くのでないかと期待しています。
事前準備を万全にして、スケジュールに余裕をもって進めましょう。
※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。