バックオフィス業務のお悩みや、PCAの業務ソフトをお使いの皆様の
お悩み解決を提供する総合サイト

資金繰りを管理するための表とは?

更新日:2022/02/15

資金繰りを管理するための表とは?

fl210501_img01_pc.jpg
fl210501_img01_sp.jpg

フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室

さまざまな会社を見てきた「フリーランスの経理部長」が、日常的によくある経理社員のお悩みについて相談を解決

会社にとって資金繰りは非常に重要です。資金繰りとは会社の支払いに必要な資金と売上の回収予定をもとにやり繰りすることです。不足すれば金融機関から借り入れするなどの対応を考えねばなりません。資金繰りに失敗すれば会社が倒産することもあります。

この記事では資金繰りの重要性や方法、実務での注意点などを詳しく解説します。


資金繰りとは?資金繰り表ってなに?

資金繰りとは会社の収入と支出を予測して資金を管理することです。詳しく言い換えると、売上の回収を予測し、仕入の支払いや設備投資などの支払い、従業員の給与、税金や社会保険料の支払いなどを滞りなく行えるように手元のお金を管理していくことです。

小売業や飲食業であれば売上は日々回収できますが、会社間の取引では掛売が一般的ですので、客先ごとの締日と支払日により売上を回収するタイミングが異なります。集金予定を立て、もろもろの支払予定を考慮して資金ショートが起きないようにシミュレーションした表を資金繰り表といいます。

資金繰り表は6カ月などの短期と年単位の長期がありますが、大型の設備投資などをしない場合は一般的に短期のものを指します。6カ月などある程度先までの期間を予測して資金繰り表を作成するのは、回収した手形を取り立てて現金化するなども考慮してシミュレーションするためです。


資金繰り表(サンプル)

株式会社 〇〇〇〇 2021年〇月期
  予測 実績 予測 実績
前月繰越   1,120,000 0 1,762,000
営業収入 売掛金回収(得意先A)   175,000 160,000  
売掛金回収(得意先B)   452,000 450,000  
売掛金回収(得意先C)   380,500 420,000  
受取手形期日入金   20,000 30,000  
現金売上   0 0  
その他入金   0 0  
収入合計 0 1,027,500 1,060,000 0
営業支出 買掛金支払(仕入先A)   34,000 35,000  
買掛金支払(仕入先B)   152,000 152,000  
買掛金支払(仕入先C)   13,000 15,000  
支払手形期日支払   30,000 30,000  
現金仕入   0 0  
人件費支払   150,000 150,000  
家賃支払   0 0  
その他営業経費支払   6,500 6,500  
その他支出   0 0  
支出合計 0 385,500 388,500 0
営業収支 0 642,000 671,500 0
設備投資等 固定資産購入   0 0  
固定資産売却   0 0  
有価証券購入   0 0  
設備投資売却   0 0  
財務収支 新規借入        
手形割引        
借入金返済        
次月繰越 0 1,762,000 671,500 1,762,000

※上記資金繰り表内の数字は一例です。

資金繰りの重要性

資金繰りは会社経営にとって非常に重要です。そのため、掛け取引では最初に支払条件を確認して取引を開始します。これは請求した債権がいつ、どのような条件で回収できるかを把握することにより資金繰りがかわってくるためです。

自社の仕入先への支払よりも回収が遅れれば、その期間の運転資金を準備しなければならず、足りなければ金利を払って借り入れることもあります。
手形や電子債権を発行している場合などは期日が到来し取り立てられる日も考慮して資金繰りします。当座に残高がなければ不渡りとなり会社の信用にもかかわりますので注意が必要です。


資金繰りをする時のポイント

資金繰りを考える時には債権の回収と債務の支払いをいかに正確に予測して管理するががポイントとなります。管理は回収日だけではありません。回収条件や支払条件もからんできます。資金繰りをする時のポイントを確認しましょう。

債権の管理

債権は客先から売上金を支払ってもらう時の集金日や金種などを管理します。会社の資金繰りをするうえで、売上が予定通り回収できるかは重要なポイントです。また、全額現金で回収できるか、手形やファクタリング・期日払い・電子債権になるかも資金繰りに大きく影響します。

仮に全額現金回収の予定の売上が全額手形で支払われれば、手形の支払期日までは資金化できません。受け取った手形を裏書してまわすことはできますが、手形額が仕入先への支払額より大きければ裏書することができません。金融機関に割引料を支払って現金化することは可能ですが余分な費用がかかります。

受け取った手形の取立日やファクタリング債権を資金化できる日なども押さえて資金繰り表を作成するようにしましょう。


債務の支払

債務は仕入先への支払い日と支払条件や振り出した手形サイト(手形の振出日から支払期日までの日数)などを管理します。通常の会社であれば、仕入の内容によって支払条件を設定していることが多いと思います。

例えば外注費であれば現金100%、製品の納品では手形100%サイト90日などです。同じ仕入先から300万の仕入をしたとしても、外注50万は現金で支払い、製品代金250万円は手形で支払うといった具合です。

この場合の資金繰りは、支払月に現金50万、3カ月後に現金250万として進めます。支払手形は支払期日に取り立てられ、当座預金から引き落とされるためです。
このように自社の仕入内容を考慮して支払予定をたてて資金繰り表を作成しましょう。


その他の支払

会社には従業員がおり毎月決まった日に給与が支払われます。また社会保険料の支払いなどもあります。従業員の人数に大きな変動がなければ、毎月の固定費として資金繰り表に反映します。

変動費として、賞与の支払いを予定していれば見込み額や賞与に係る社会保険料も考慮します。法人税や消費税、労働保険料など毎月の支払ではなく年1回や分納するものも資金繰り表に反映しましょう。また、借入金の利息や手形などの割引料も記載することを忘れてはいけません。

これらは現金払いですので、額が大きければ資金繰りへの影響も大きいのでモレのないように気を付けましょう。
他にも毎月の小口精算などは使用実績から見込を計算して考えていくことが大切です。


回収した債権の管理

資金繰り表を作成するにあたり、回収した手形や電子記録債権、ファクタリングがいつ資金化できるのかを管理していくことが大切です。取引先によって支払期日までのサイトは異なり、60日、90日、100日などバラバラです。前月に回収していても今月回収したものの方が先に資金化できることも珍しくありません。

資金繰り表を作成するときは、補助資料として資金化前の手形などの一覧を作成しておくと間違いがなくてよいでしょう。


支払後の資金管理

支払のために振り出した手形や電子記録債権の支払日を管理することも大切です。特に複数の金融機関から手形を発行している場合は、毎月決済日にどこの銀行にいくらの残高を置いておくかまで管理しなければなりません。

会社全体では資金があっても、決算される口座になければ不渡りとなりますので資金繰り表は金融機関ごとの決済額を月単位でわかるようにしておくとよいでしょう。そうすることで金融機関の間で資金移動しやすくなります。


借入の種類

資金繰り表を作成していると、手形などの資金化のタイミングで手元資金が不足することともあるでしょう。その場合は金融機関から借り入れします。

資金繰り表では、5年などの1年を超える借り入れを長期借入、1年未満の借り入れを短期借入としてわけて管理します。手元資金の一時的不足であれば、当座貸越で対応することもあります。

資金繰り表は資金の動きを把握するためのものですから、入出金だけでなく借り入れも反映して作成するようにしましょう。


資金繰りに失敗するとどうなる?

資金繰りは資金が動くタイミングを把握することも重要なポイントです。月単位で作成していると、債権の回収が月末に集中し自社の仕入先への支払いが20日である場合や振り出した手形の決済日が25日であるなどのパターンがあります。月次単位では資金ショートすることはなくても、実際には月中に資金不足になる可能性も考えられます。

手形が決済できないと不渡りとなり、重なれば手形がきれなくなります。すべての取引代金を現金支払することになり、ますます資金繰りを圧迫します。
取引先の支払日と自社の支払日や振り出した手形の決済日、従業員の給与支払日など月中に大きく資金が動くタイミングには注意しましょう。


まとめ

資金繰りに携わる経理担当者は多くないかもしれませんが、経理部門としては自社の資金の動きを管理することは非常に重要です。

資金繰り表を作成するポジションにいなくても、入金や支払いを担当することで債権債務の動きを把握する機会はあります。また、資金の動きから自社の経営状態がわかります。