公開日:2021/08/24
2020年10月(令和2年10月)以降の年末調整から手続きの電子化が認められるようになりました。2020年度の年末調整は初年度であったこともあり、従来通りの方法で行った会社のなかにも、今後をみすえて電子化を検討している会社もあるのではないでしょうか。
年末調整を電子化すれば控除申告書類も電子データとなり、紙申告よりも転記ミスなどをチェックする時間が大幅に減少すると予測します。導入にあたってはシステム導入など初期投資が発生しますので、費用対効果を検証中の会社もあるかもしれません。
この記事では年末調整の電子化について、制度の概要や具体的な方法、メリットとデメリットなどを詳しく解説します。
年末調整は会社の義務です。給与支払者である会社は、「源泉徴収制度」により、給与の支払時に所得税を徴収し、本来納付すべき社員に代わって国に納付する義務を負っています。
この制度にのっとり、会社は社員に支払う毎月の給与や賞与から所得税を源泉徴収します。
源泉徴収税額は、毎年最初の給与支払日の前日までに従業員が会社に提出する「給与所得者の配偶者控除等申告書」と「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をもとに、扶養する者の人数などから計算する仕組みです。
一年の間に子供が生まれたり、家族が就職して扶養からはずれるなどした場合は年末調整で所得税を計算し直します。同時に、支払保険料など所得控除が認められている支払いについても、支払額が証明できれば調整します。
これを年末調整といい、調整の内容次第では源泉徴収税が返金されるばかりでなく、追加で徴収されることもあります。
年末調整電子化とは、これまで会社が年末調整申告書の用紙を配付し、その用紙に従業員が手書きして提出することにより行われていた年末調整を、書面では行わず電子データを使い行うことです。
電子データが認められているのは所得控除の対象となる生命保険・地震保険・住宅借入金などの控除証明書です。次の2つを実施することで年末調整手続きのデータ処理が可能となります。
年末調整に関するデータを電子化することによって、会社と従業員双方の事務処理負担を軽減することができます。
年末調整の電子化による主な変更点は次の図のような点になります。手書きと手動の計算がなくなることが大きなポイントです。電子化導入に向けては国税庁が専用ソフトを無償提供しています。
年末調整の電子化に伴い電子提出および電子保管が認められた申告書や証明書がいくつかありますので確認しておきましょう。
これだけの書類が紙からデータにかわれば管理方法も変化するでしょう。データ保存になれば、のちのち内容を確認したい時などの検索も容易となります。
年末調整を電子化するメリットを会社側と従業員側それぞれから詳しくみていきましょう。
●会社側のメリット
●従業員側のメリット
年末調整を電子化するデメリットを会社側と従業員側それぞれから詳しくみていきましょう。
●会社側のデメリット
●従業員側のデメリット
年末調整を電子化した場合の具体的な手順を確認してみましょう。会社と従業員双方で紙での処理とは手続きがちがってきます。
年末調整を電子化するには現行の給与計算システムとの連携を事前に確認する必要があります。国税庁が無償のソフトを提供していますが、給与計算システムのなかには独自に同様の機能をもっているものもあります。
従業員の使い勝手の良さや提出された電子データの連係のしやすさなどを考慮して事前準備をしましょう。
導入時の混乱をさけるためサポート機能のある専用のソフトを選択するのもひとつの手です。軌道にのれば年末調整業務の負担は大幅に軽減されますので、万全の準備をして進めましょう。
年末調整は給与計算の担当者にとって作業量も多いうえ、12月給与に反映しなければならないので時間との闘いです。申告書の内容と添付書類が不一致ならば従業員に確認しなければなりませんし、全従業員の申告書の検算もしなければなりません。
電子化をすすめるには社内の周知や不慣れな従業員のフォローなどの問題もあるかもしれませんが、軌道にのってしまえば会社側にも従業員にもメリットがあると思いますので検討してみてはいかがでしょうか。