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試算表とは?種類や内容をわかりやすく解説

更新日:2022/02/08

試算表とは?種類や内容をわかりやすく解説

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決算時期になると年間の取引を集計した試算表の残高を確認する作業が発生します。月次決算を行っている会社では毎月のことかもしれませんが、年に一度の税計算前の試算表のチェックには非常に神経を使います。

会計ソフトを利用している場合はボタンを押せば自動計算されますが、試算表の種類と意味、作成方法などは知っておくとよいでしょう。会計ソフトの自動計算で表示された数字を確認するためには必要だからです。

この記事では試算表とはどのようなものか、その意味や種類、確認できる内容などについてわかりやすく解説します。


試算表とは

試算表とは月次決算や年次決算時に、取引別になっている仕訳帳の数字が総勘定元帳へ正しく反映しているか検証するために使う集計表です。

複式簿記では取引は貸借で一致しますから、会計期間の各勘定の取引および全取引の合計をみることができます。実務では、前期末・会計期間の貸借合計・当期末残高を並べて表示して確認することもあります。

試算表を正しく作成することは決算を進めるうえで重要な仕事です。決算報告書の貸借対照表や損益計算書も試算表をもとに作成しますので決算の第一歩ともいえます。


試算表の種類と内容

試算表には、合計試算表・残高試算表・合計残高試算表の3種類があります。それぞれに確認できる内容がちがいますのでみていきましょう。

注意する点は残高とついているときは、借方か貸方のどちらかの残高のある方を記入し、合計とついているときは借方と貸方のそれぞれを集計して貸借両方に数字を記入する点です。

【試算表のポイント】

  • 合計と表示されるものは、借方と貸方の両方に取引総額を記入
  • 残高と表示されるものは、借方と貸方を差し引きして一方に残高のみ記入
  • 合計残高と表示されるものは、合計と残高の両方を記入

合計試算表

合計試算表は決算日や月末日で作成します。勘定科目別に前月末までの合計と当月の仕訳の合計を借方および貸方に表示します。各勘定科目の借方と貸方の合計は一致します。

もし、差額があれば、転記ミスなどがありますので、その勘定科目の仕訳帳の残高を確認します。転記ミスでなければ、仕訳帳の集計誤りか仕訳時点で借方と貸方がバランスしていない可能性を考えます。

複式簿記では仕訳した伝票の借方と貸方もバランスしていることが前提です。仕訳誤りであれば、他の勘定科目も同時に誤っていることになりますので、仕訳帳の転記を確認します。


残高試算表

残高試算表は合計試算表の借方と貸方の差額を計算を行い、会計期間の取引高の残高を表示します。残高試算表ではひとつの勘定科目で借方と貸方に数字が表示さることはありませんので、勘定科目の残高が一目でわかるメリットがあります。

残高は月次決算であれば月初残高と当月仕訳の合計となります。なかには月初残高と当月仕訳を別々に表示するタイプの残高試算表もあります。

残高試算表の借方と貸方の合計は一致します。差異があれば集計誤りなどが考えられます。前段階の合計試算表に誤りがないことが確認できていれば、残高試算表の差異は転記ミスや借方と貸方の残高計算のミスとなりますので誤りを探すのは比較的容易でしょう。


合計残高試算表

合計残高試算表は合計試算表と残高試算表をあわせたものです。実務の決算処理や会計ソフトを利用している場合は合計残高試算表を使っていることもあるでしょう。

合計残高試算表では会計期間の借方と貸方の取引合計だけでなく、残高も一致します。

経理担当の私が、実務で最も多く目にすることが多いのも合計残高試算表です。当会計期間の動きが一目でわかりますし、会社によっては前会計期間の残高も並べて動きをみることもあります。

前期残高をあわせてみるのは、当会計期間の貸借がバランスしているからといっても、異常に動きの大きな勘定科目の決算処理をするときに内容を確認するためです。


試算表と決算書類

試算表の合計がバランスしたら決算書類を作成します。次のような手順で最終の試算表が確定します。

【試算表から貸借対照表と損益計算書を作成する手順】

  1. 試算表を作成
  2. 貸借の一致を確認
  3. 経過科目に残高が残っていないか、残高の内容は適正なものかなどをチェック
  4. 利益を計算
  5. 税金を計算
  6. 試算表確定
  7. 貸借対照表や損益計算書を作成

手順6・7の試算表から貸借対照表や損益計算書への転記は、次のように行いますので参考にしてください。

下のように試算表を正しく作成します。


背景の色が「」灰色の項目は貸借対照表へ移記します。残りの項目は損益計算書へ移記します。

合計残高試算表
借方
残高
勘定科目 貸方
残高
500,000 現金  
1,000,000 当座預金  
1,500,000 定期預金  
1,000,000 売掛金  
1,000,000 繰越商品  
200,000 車両運搬具  
  買掛金 2,000,000
  借入金 1,500,000
  預り金 200,000
  資本金 1,000,000
  売上 9,000,000
4,700,000 仕入
100,000 水道光熱費
100,000 旅費交通費
100,000 福利厚生費
3,500,000 給料手当
13,700,000 合計 13,700,000

会計期間の損益を計算するための勘定科目を転記して損益計算書を作成すると下のようになります。転記の際には「売上」は「売上高」に、「仕入」は「売上原価」に変更し、合計額の差分を「当期純利益」として費用グループの下に入れます。

損益計算書
費用 金額 収益 金額
売上原価 4,700,000 売上高 9,000,000
水道光熱費 100,000
旅費交通費 100,000
福利厚生費 100,000
給料手当 3,500,000
当期純利益 500,000
合 計 9,000,000 合 計 9,000,000

資産の勘定科目を転記すると下のような貸借対照表になります。転記の際には「繰越商品」は「商品」に変更し、「当期純利益」を「資本金」の下に入れます。

貸借対照表
資産 金額 負債 金額
現金 500,000 買掛金 2,000,000
当座預金 1,000,000 借入金 1,500,000
定期預金 1,500,000 預り金 200,000
売掛金 1,000,000    
商品 1,000,000    
車両運搬具 200,000 純資産 金額
    資本金 1,000,000
    当期純利益 500,000
合計 5,200,000 合計 5,200,000

このように試算表の数字を転記して、貸借対照表や損益計算書が出来上がります。

試算表と貸借対照表や損益検討表を並べてみると、それぞれが密接に関係していることがわかり、試算表がいかに重要なものかおわかりいただけると思います。


試算表をみるときのポイント

試算表は貸借対照表や損益計算書の作成のもととなることをご説明しました。そのため、試算表の時点でみるべきチェックポイントを確認しておきましょう。

貸借対照表に転記する科目では、次のような項目はみておくとよいでしょう。

  • 現金:実査と一致しているか確認
  • 預金:口座残高と一致していることを確認
  • 受取手形:取り立て中のものも含めて残高を確認
  • 売掛金:発行済の請求書合計と一致しているか確認。取引先に残高確認を依頼することもあるので注意しましょう
  • 繰越商品:期末日に棚卸を実施し評価替えなどが反映しているか確認
  • 買掛金:仕入先からの請求書の処理モレがないか確認。仕入先に残高確認を依頼することもあるので注意しましょう
  • 支払手形:振り出した決済日前の手形残高と一致しているか確認
  • 借入金:期末時点の残高や短期長期の振り分けを確認
  • 固定資産:減価償却が行われているか、取得資産や除却資産の処理モレを確認
  • 有価証券:必要があれば期末日で評価替えしましょう

以上の他に、前年残高と数字の乖離(かいり)の大きいものは内容を把握しておきましょう。

損益計算書に転記する科目では、次のような項目をみておくとよいでしょう。

  • 売上:適正な計上がされているか
  • 原価:計上モレがないか、売上に対して原価率が適正なのか、前年と比べて原価率が変動していれば原因を確認
  • 人件費:毎月の給与や年間賞与、退職給付などの処理モレに注意。特に末日が給与締日でない場合は未払人件費を計上しているか確認
  • 販売管理費:正しく計上されているか、会費など翌期の前払費用が含まれていないかも確認
  • 受取利息や受取配当:処理モレや源泉徴収された額が正しく計上されているか確認
  • 支払利息や支払配当:当期分をモレなく支払っているかを確認
  • 雑収入:内容が適切かを確認
  • 交際費:適正に処理されているかを確認。
  • 寄附金:適正に処理されているかを確認。寄付先を一覧にするなど税計算で必要な情報も整理できるとよい

上記以外に金額が大きい勘定科目や前年比をみて差が大きいものは内容を把握しましょう。また消費税区分にも注意が必要です。


まとめ

試算表は月次決算や年次決算を行ううえで重要です。試算表が正しくできていれば貸借対照表や損益計算書も簡単に作成できます。

試算表は日々の仕訳の積み重ねにより数字がでます。会計期間の合計や残高など試算表の種類により示す内容がちがいますから、特徴と示す内容、使い分けについて理解しておくとよいのではないでしょうか。