公開日:2020/12/02
年末調整の書類には扶養家族を記入します。扶養家族とはどのような者をいうのでしょうか。扶養家族は同居している家族という意味ではありません。また、健康保険証の対象である家族とも少しちがいます。
混同されがちですが、健康保険の扶養と所得税の扶養はちがうのです。年末調整は所得税を調整するものですから税扶養の対象者が扶養家族となります。
この記事では年末調整に出てくる扶養家族がどのようなものかを詳しく解説します。
年末調整とは、その年の1月1日から12月31までに支払われた給与・賞与に課される所得税を扶養状況や社会保険料・支払保険料などを反映して精算する作業です。
会社は支払った給与に対して源泉徴収の義務を負っていますので、年末に在籍している社員の年末調整をしなければなりません。
毎月の給与や賞与から控除している源泉所得税と年末調整で再計算した所得税の差額が年末調整で還付される金額です。場合によっては徴収されることもあります。
所得税法の扶養家族の範囲は税法で定められており、次のような親族が対象です。
扶養親族は必ずしも同居している必要はありません。独り暮らしの大学生を考えるとイメージしやすいと思います。
国内にいれば扶養控除等(異動)申告書に記入して申告すれば同居していなくてもかまいません。申告書にも扶養親族の「住所又は居所」を記入するようになっています。
海外にいる場合は一定要件を満たした場合のみ扶養親族となることができます。
引用ファイル:国税庁Webサイト 令和3年分扶養控除等(異動)申告書
海外に1年以上住んでいる親族は「国外居住親族」としてあつかいます。生活費などを送金していれば生計を維持していると認識します。実際に生計維持を証明するために送金証明や振込明細書などを提出しなければなりません。国外居住者との関係を証明する書類の提出も必要となりますので覚えてきましょう。
所得とは収入から控除を引いた額です。扶養家族として扶養に入れるかは所得によって判断します。計算期間はその年の1月1日から12月31日です。
所得を計算するための収入別の控除額を確認しておきましょう。
年金の中でも遺族厚生年金は扱いが異なります。
年金額がいくらであっても非課税となり「所得ゼロ」となりますので、老齢年金とは別に計算するようにしましょう。
扶養家族がすべて扶養控除の対象ではありません。扶養親族の年齢や同居の有無により扶養控除額はちがい一律ではありません。控除額を確認しておきましょう。
区分 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族(※1) | 38万円 | |
特定扶養親族(※2) | 63万円 | |
老人扶養親族(※3) | 同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等(※4) | 58万円 |
※1 「控除対象扶養親族」とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
※2 特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。
※3 老人扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
※4 同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と普段同居している人をいいます。
※5 同居老親等の「同居」については、病気の治療のため入院していることにより納税者等と別居している場合は、その期間が結果として1年以上といった長期にわたるような場合であっても、同居に該当するものとして取り扱って差し支えありません。ただし、老人ホーム等へ入所している場合には、その老人ホームが居所となり、同居しているとはいえません。
引用:国税庁|扶養控除額の金額
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
この他にも扶養家族の条件により寡夫控除や障害者手帳を所持していれば障害者控除が受けられる場合があります。
扶養家族や配偶者が扶養の対象になるか否かは自己申告制になっており、年収を確認するための特別な証明書類を用意する必要はありません。
対象者が障害者である場合に限り証明書類が必要となり、障害者手帳の写しを添付します。
2020年から給与所得控除が変更され、65万円から55万円になりました。同時に扶養親族の所得要件は38万円から48万円に引き上げられています。実質的にはどちらも給与収入103万円にかわりはありませんが覚えておくとよいでしょう。
年末調整は会社が行います。そのため、税務署の調査で申告した扶養家族の収入が要件に該当しない場合は、税務署から会社あてに是正申告の通知が届きます。是正申告は会社が対応しなければなりません。
家族の収入を把握していない社員もいるため、是正の通知が届いて社員も驚くことがあります。社員が是正に納得しない場合は市町村が発行する「所得証明書」を取ってきてもらい確認作業から始まります。
是正の多いパターンをご紹介します。
年末調整は正しく申告すれば税金の還付を受けられるため非常にありがたい制度ですが、扶養家族を正しく申告しないと翌年の秋頃に税務署から調査を受ける可能性もあります。
会社を経由しての調査となり、会社側も源泉徴収の義務を負っていますので対応しないわけにはいきません。
年末調整は人事担当者にとっては年末の大イベントです。社員に正しい扶養家族の要件を周知して間違いのないように対応していきましょう。