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雇用保険と社会保険の違いとは?加入条件で確認

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雇用保険は企業が加入する公的な保険のひとつで、雇用の安定や就業の促進を目的としています。

失業手当やコロナ対策の給付金などをカバーするのも雇用保険です。雇用保険は労働者を対象とした保険であるため、在宅勤務者の勤怠管理をしていないなど実状が請負や委託の場合は加入することができません。

この記事では、雇用保険の内容と加入条件、社会保険の関係について詳しく解説します。


雇用保険とは

雇用保険とは労働保険のひとつで雇用に関する総合的な機能を有する保険です。

失業の予防や雇用機会の拡大、生活や雇用の安定、就職の推進などを目的としています。
具体的には雇用継続や機会拡大の支援、労働者の能力向上のための教育訓練などを実施しています。


雇用保険制度の概要(体系)

引用:雇用保険部会|雇用保険制度の概要

社会保険との関係性https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000032rgy-att/2r98520000032rif_1.pdf

雇用保険は事業所単位で加入します。労働者を1人でも雇用する事業所は業種や規模にかかわらず適用事業となり加入します。事業所とは会社単位ということで、独立性のない支店や営業所は、所轄の公共職業安定所長の承認を受けて本社などで一括して事業所となることができます。

労働者を対象とした保険ですので請負契約や委託契約で働く個人事業主や会社経営者は加入することができません。加入手続きをする場合には注意しましょう。

雇用保険の保険料については今年度(2020年度)の年度更新から徴収について大きな変更がありました。2019年度までは65歳以上の高年齢被保険者の雇用保険料は免除されていましが、2020年度より免除がなくなります。年度更新するときに申告する2020年の概算納付分から年齢に関係なく雇用保険料を納めねばなりませんので注意しましょう。


社会保険との関係性

雇用保険は労働保険の一種ですが社会保険でもあります。雇用保険と社会保険との関係性について確認しましょう。

●広義の社会保険

一般的にいう広義の社会保険は会社が加入しなければならない公的な以下の保険をまとめて指します。

  1. 健康保険
  2. 介護保険
  3. 厚生年金保険
  4. 雇用保険
  5. 労災保険

このうち4.雇用保険と5,労災保険をあわせて労働保険とよびます。

●狭義の社会保険

狭義の社会保険は(1)健康保険(2)介護保険(3)厚生年金保険の3つを指します。広義のなかから労働保険を除いたかたちです。医療と年金について「社会保険」と呼んでいるわけです。

給与計算など人事担当者がいう社会保険は狭義の意味で使われ、労働保険とはわけて考えることが多いようです。


雇用保険・社会保険の加入条件

雇用保険の適用事業所で働く社員すべてが雇用保険に加入するわけではありません。一定の条件をクリアした場合のみ加入することができます。加入条件を確認しましょう。

雇用保険の加入条件

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 同一事業主の適用事業に31日以上雇用される見込みであること
  • 季節的に雇用されるもので4カ月以上の期間を定めて雇用され一週間の所定労働時間が30時間以上であること
  • 昼間部の学生でないこと。(夜間部の学生は対象)など

上記の条件を満たせば雇用保険の加入対象です。社会保険よりも加入条件のハードルは低くなっています。

併せて社会保険の加入条件も確認しておきまましょう。


社会保険の加入条件

  • 常時使用される者
  • 1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上あること
    所定労働時間を1カ月単位で決めている場合は
    1カ月の所定労働時間×12カ月÷52週間 > 常用雇用者の4分の3
    の計算式で判断します。
  • 特定適用事業所(常時500人を超える適用事業所のこと)では(1)~(4)をすべてみたせば加入対象。
    (1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
    (2)同一の事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること
    (3)報酬の月額が8万8千円以上であること
    (4)昼間部の学生でないこと

社会保険の加入条件のほうが週の労働時間が長いため雇用保険に加入していても社会保険には加入していない従業員が発生します。

特定適用事業所の要件は2020年6月の年金制度改正法で今後段階的に引き下げられることが決まりました。これは社会保険の加入対象の範囲を広げ、加入者を拡大する狙いからです。併せて、2022年10月から特定適用事業所に関する(2)の雇用期間が現状の1年見込みから「2カ月超」へ短縮されますので覚えておきましょう。

具体的には次のスケジュールで特定適用事業所の常時雇用者の数が引き下げられます。

第1段階:2022年10月から常時雇用者100人超の企業が該当
第2段階:2024年10月から常時雇用者50人超の企業が該当

仮に常時雇用者70人の会社で1日7時間勤務・週4日出勤で週の所定労働時間が28時間のパートを例に考えてみましょう。現在は社会保険に未加入ですが2024年10月には会社が特定適用事業所になるため社会保険に加入しなければならなくなります。

このように現状では加入要件に差のある雇用保険と社会保険ですが、今後は条件の変更により片方だけ加入している状況は減っていくと思われます。


加入条件をみたしても役員や青色専従者は加入できない?

雇用保険の加入条件をみたしていても保険に加入できない人がいます。例外的ではありますが確認しておきましょう。

【雇用保険に加入できない人】

  • 会社の社長
  • 会社の役員(労働者の身分をもっている場合は実態で判断)
  • 事業主と同居の親族
  • 税務署に青色専従者として届け出ている者(別居の場合も含む)
  • 海外で採用され現地で働く従業員(国籍に関係なく加入できません)
  • 生命保険会社などの外務員や外交員
  • 指揮監督系統が明確でない在宅勤務者
  • 始業や終業の拘束時間が明確でなく勤怠時間管理がされていない在宅勤務者など

最近多い在宅勤務者は事務所勤務と同様に就業規則が適用されなければなりません。加入手続時にハローワークから請負や委任でないことの根拠の書類や規程の提出を求められることがあります。

労働者でなければ雇用保険には加入できませんから、会社が加入手続きをする場合に請負や委託だと誤解されないように注意しなければなりません。


日々雇入れる者の雇用保険

雇用保険の加入条件に雇用期間がありましたが、例外的に日々雇入れる者も雇用保険に加入することができます。雇用保険の加入者には日雇労働被保険者という種類があります。日々雇入れる者や30日以内の期間を定めて雇用する者が該当します。

これは社会保険にはない雇用保険だけの扱いです。継続的に雇用される者とは異なるシステムで雇用保険料が発生しますのでご説明します。

日雇労働被保険者の雇用保険料は雇用保険印紙を使い納付します。雇用保険印紙はあらかじめ「雇用保険印紙購入通帳交付申請書」を提出した会社のみが購入できます。
雇用保険印紙は1級から3級まで3種類あり、日々賃金を支払うたびに賃金額に該当する印紙を日雇い手帳に貼付け消印します。


雇用保険印紙の種類

等級 賃金日額 印紙保険料 事業主負担 労働者負担
第1級 11,300円以上 176円 88円 88円
第2級 8,200円以上11,300円未満 146円 73円 73円
第3級 8,200円未満 96円 48円 48円

まとめ

雇用保険は労働保険のひとつです。健康保険や厚生年金保険などの社会保険とは加入条件が違います。

最近注目のコロナ関係の給付金も雇用保険の加入者が対象となっていますし、雇用保険に加入できる在宅勤務者の定義なども細かく示されていますので加入条件を再確認しましょう。


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