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賞与・ボーナスの社会保険料の計算方法について

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賞与やボーナスにも社会保険料がかかり、賞与に係る社会保険料の計算ルールは給与とはちがいます。また、例外的に社会保険料がかからない場合もあります。

社会保険は従業員と事業主で、負担する保険の種類や保険料率がちがいます。会社が負担する保険料を法定福利費といい、従業員よりも負担額が大きくなっています。

この記事では賞与の定義から社会保険の計算方法、会社が負担する法定福利費について詳しく解説します。


賞与やボーナスと認識するもの

賞与とは、給与と別に労働の対償として支給されるもので、賞与・ボーナス・決算賞与・夏期手当・年末手当・期末手当・もち代などの名目にかかわらず、支給期や支給基準の定めのないものをいいます。

業績連動給与や利益を基準としたものも対象です。金銭以外に自社製品などの現別給付も賞与と認識し金銭換算します。


賞与にかかる社会保険の種類と法定福利費

賞与にも社会保険料がかかります。賞与にかかる社会保険の種類を確認していきましょう。

従業員と会社の双方が負担する保険と、会社だけが負担する保険がありますので注意してください。会社が負担する保険料が法定福利費となります。


(1) 健康保険料(従業員と会社の双方が折半して負担)

賞与として支給される年3回以下の支払いが対象です。健康保険料は給与と賞与では計算の基礎となる額がちがい、賞与は「標準賞与額」をもとに計算します。標準賞与額は等級ではなく、支払われる賞与額の1,000円未満の端数を切り捨てた額です。

健康保険料は次の算式で計算します。

標準賞与額×健康保険料率=健康保険料

健康保険の標準賞与額の上限は、毎年4月から翌年3月までの年度計で573万円です。
年4回以上支給される賞与は標準報酬月額の対象となります。給与規程に賞与を分割して毎月支給する定めがある場合は「賞与に係る報酬」として扱いますので覚えておきましょう。


(2) 介護保険料(従業員と会社の双方が折半して負担)

介護保険料は健康保険の標準賞与額に保険料率をかけて算出します。年4回以上支給される賞与や分割支給される賞与の扱いも健康保険に準じます。

40歳以上65歳未満が対象で、それ以外の年齢の社員の賞与にはかかりません。


(3) 厚生年金保険料(従業員と会社の双方が負担)

厚生年金保険料も健康保険と同様に標準賞与額をもとに算出します。標準賞与額の上限が年度計ではなく「1カ月あたり150万円」です。同月内に複数回にわけて賞与が支給された場合は合計額が150万円を超えるか否かの判断をします。

厚生年金保険料は次の算式で計算します。

標準賞与額×厚生年金保険料率=厚生年金保険料


(4) 子ども・子育て手当拠出金(会社のみ負担)

子ども・子育て手当拠出金は標準賞与額に料率をかけて算出します。従業員の年齢や扶養状況などに関係なく一律にかかります。会社のみが負担する拠出金であることもポイントです。

(5) 雇用保険料(従業員と会社の双方が定められた割合で負担)

雇用保険料は実際に支払われる賞与額に雇用保険料率をかけて算出します。雇用保険料率は業種により異なり3つの区分があります。

従業員と会社の負担割合がちがうのもポイントです。下の図の①労働者負担が従業員の賞与から控除する保険料、②事業主負担は会社が法定福利費として計上する雇用保険料となります。


事業の種類 負担者
① 労働者負担
(失業等給付・
育児休業給付の
保険料率のみ)
②事業主負担 ①+②
失業等給付・
育児休業給付の
保険料率
雇用保険
二事業の
保険料率
雇用保険料率
一般の事業
(元年度)
3/1,000
(3/1,000)
3/1,000
(3/1,000)
3/1,000
(3/1,000)
9/1,000
(9/1,000)
農林水産・清酒製造の事業※
(元年度)
4/1,000
(4/1,000)
4/1,000
(4/1,000)
3/1,000
(3/1,000)
11/1,000
(11/1,000)
建設の事業
(元年度)
4/1,000
(4/1,000)
4/1,000
(4/1,000)
4/1,000
(4/1,000)
12/1,000
(12/1,000)

(枠内の下段は令和元年度の雇用保険料率)

※ 園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業については一般の事業の率が適用されます。

https://www.mhlw.go.jp/content/000617016.pdf

(6) 労災保険料(会社のみ負担)

労災保険料は賞与額に労災保険率をかけて算出します。保険率は業種ごとに労災の発生率を考慮して設定されていますが、メリット制という会社ごとの労災発生率により保険率の増減があります。そのため、同じ賞与額でも勤務する会社により保険料は異なり一律ではありません。
会社のみが負担する保険料で従業員は負担しないのもポイントです。

一般的な業種別の保険率は「労災保険率表」で確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhokenpoint/dl/rousaihokenritu_h30.pdf

賞与に保険料がかからない場合もある?

賞与を支給しても社会保険料の一部がかからない場合がありますのでご説明します。

月末までに退職する従業員に支給する賞与

賞与にかかる社会保険の種類の項目の(1)から(4)は月末に保険に加入していないと保険料が不要です。そのため月末日前に退職した社員の賞与に保険料はかかりません。

夏季賞与の支給が7月10日で7月25日に退職した場合は夏季賞与にかかる保険料は(5)雇用保険料と(6)労災保険料のみです。


産前産後や育児休業中の従業員に支給する賞与

産前産後や育児休業中の従業員に支給する報酬は日本年金機構に届出することで保険料が免除されます。賞与も同様に扱いますので、社会保険の種類の項目の(1)から(4)の保険料は免除となり従業員も会社も保険料は発生しません。(5)雇用保険料と(6)労災保険料のみがかかります。

賞与の社会保険の計算方法

賞与にかかる社会保険の保険料を計算してみましょう。健康保険料率は都道府県によりちがい、雇用保険料率と労働保険率は業種によって異なりますので、前提条件として東京都の小売業を例に計算してみます。

【賞与額250,500円の場合】
標準賞与額は250,000円で社会保険の種類の(1)から(6)までの保険料は次のようになります。

  1. 健康保険:9.87%
    250,000×9.87%=24,675円
  2. 介護保険:1.79%
    250,000×1.79%=4,475円
  3. 厚生年金:18.30%
    250,000×18.30%=45,750円
  4. 子ども・子育て手当拠出金:0.36%
    250,000×0.36%=900円
  5. 雇用保険:0.9%
      250,500×0.9%=2.254円
  6. 労災保険:0.3%
      250,500×0.3%=751円

算出した保険料は納付額です。従業員と会社がそれぞれ定められた割合で負担して会社がまとめて納付します。

賞与にかかる税金と計算方法

賞与にかかる社会保険料についてご説明してきましたが、賞与には所得税もかかります。支払時に源泉徴収して会社が納付します。
賞与の源泉徴収税額は算出率と扶養控除申告書の扶養人数をもとに計算します。使う算出率の表は月々の給与とはちがいますので注意しましょう。

算出率は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で確認できます。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2019/02.htm


賞与支払届

会社は賞与支払届と総括表とあわせて、賞与の支払日から5日以内に日本年金機構の事務センターまたは健康保険組合に提出します。賞与支払届で届出した賞与額は将来の年金額の計算にも反映しますので忘れずに提出しましょう。

【記入のポイント】

  • 賞与額は実際に支払われた額ではなく千円未満を切り捨てした額
  • 月末日前に退職した社員に支払った賞与額には保険料がかからないが、退職日前に支払っていれば届出の対象
  • 産前産後や育児休業中の従業員に支給する賞与も届出の対象
  • 賞与を同月に複数回にわけて支給した場合は合計額で賞与支払届を提出
  • 賞与が年度の上限をこえた場合でも届出は必要

賞与の支払いについては事前に予定月を届出して登録しておくことができます。その場合は賞与を支給しない場合も「不支給」として届出しなければいけないので注意が必要です。


まとめ

賞与の社会保険料は通常の給与にかかる保険料とはちがうため混乱しやすいものですが、標準賞与額が理解できれば難しくはありません。

また、賞与を支給したときは賞与支払届を必ず提出しましょう。賞与は月々の給与とちがい固定額ではないので届出を忘れると従業員の将来の年金額にも影響してきますので注意しましょう。


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