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キャッシュフロー計算書って?キャッシュフロー計算書の作り方?

更新日:2020/08/28

キャッシュフロー計算書って?キャッシュフロー計算書の作り方?

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キャッシュフロー計算書は資金の流れを知る重要な書類です。会計期間の資金の動きがわかり、どれくらいの資金を動かせるかを判断する基準となります。

資金というとキャッシュフロー計算書ではなく資金繰り表を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、2つはまったく意味がちがいます。

定められた会計期間の資金の流れを示すキャッシュフロー計算書は過去の実績を表わします。資金繰り表は未来の資金の動きを予測するものです。キャッシュフロー計算書があるからこそ、より正確な資金繰りができるともいえます。

この記事ではキャッシュフロー計算書について作り方も含め詳しく解説します。


キャッシュフロー計算書とは?

キャッシュフロー計算書は、会計期間の資金の動きを示した書類です。カンタンにいうと現金や預金の出入りから期末にどれだけお金が手元に残っているかを表わします。

手元にある使えるお金を把握するだけでなく「利益が出ていても回収が進んでいない」とか「売上の回収より支払の進捗が進んでいる」など資金の動きから会社の状態を知ることもできます。

利益が出ているのに資金ショートする黒字倒産は、キャッシュフロー計算書に前兆がでます。売掛金の回収が進んでいなければキャッシュフローはマイナスとなり要注意です。

2015年に起きた東証一部上場企業「江守グループホールディングス」の黒字倒産も、直近の決算は利益がでていましたがキャッシュフローは数年前から年々悪化していました。この例からもキャッシュフロー計算書の重要性がうかがえます。


キャッシュフロー計算書は財務諸表のひとつ

キャッシュフロー計算書は会社を経営するうえでは非常に重要な書類で「財務3表」のひとつです。

財務3表とは会社の決算書類である財務諸表のうち次の3つを指します。

  • 賃借対照表(B/S):資産、純資産、負債の状態を示し資産状況を把握できます
  • 損益計算書(P/L):収益と費用の状態を示し損益を把握できます
  • キャッシュフロー計算書(C/F):現金の流れを示し資金状況を把握できます

財務3表は、どれも試算表をもとに作成し、お互いが密接な関係にあります。

会社法で定められた上場企業は有価証券報告書の提出が義務付けられているため、財務諸表として3表を作成しなければなりませんが、それ以外の企業は計算書類を作成すればよく、キャッシュフロー計算書の作成は任意となっています。


キャッシュフロー計算書の目的と区分

キャッシュフロー計算書は事業資金の循環を把握することが目的です。そのため、営業活動、投資活動、財務活動に区分けして表示します。それぞれの区分のキャッシュフローについて示す内容を確認しましょう。


営業活動によるキャッシュフロー

営業活動とは会社の本業の事業活動のことです。損益計算書で売上と認識する部分です。本業の売上の入金と、売上をあげるための支払をまとめたものと考えればイメージしやすいと思います。

投資活動によるキャッシュフロー

投資活動とは固定資産や株・債権などの取得や売却に係る入出金です。固定資産とは事業の発展のために投資した工場建設や設備投資などが該当します。株・債権を取得した時のキャッシュフローはマイナス、売却した時のキャッシュフローはプラスとなります。

財務活動によるキャッシュフロー

財務活動とは借入金とその返済に係る入出金です。自社の株式の支払配当金も財務活動として認識します。借入金や社債を発行した場合のキャッシュフローはプラス、借入金の返済や支払配当金を支払った時はマイナスとなります。


フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフローは営業活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフローの合計額のことです。カンタンにいうと自由に使えるお金です。資金が多いほど自由に使えるお金があり会社の経営は良好といえます。逆にマイナスや0値であれば経営の見直しが必要と判断します。営業活動を拡大するか、投資活動のマイナスを縮小するように試みます。

キャッシュフローの作成方法

キャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローの作成方法には「直接法」と「間接法」の2種類があります。直接法は営業活動のキャッシュの動きを詳細に把握できますが作成は手間がかかるため、多くの企業は間接法を用いたキャッシュフローを作成しています。

直接法

営業活動のキャッシュフローを総額でとらえる方法です。主な取引先の総額を算出し、経費や給与の支払も総額を表示します。取引先が多い会社ではボリュームのある作業となりますが、回収の遅れなど個別の状況を把握することが可能で、詳細な資金の流れを把握できるメリットがあります。

間接法

損益計算書をベースにキャッシュの入出金だけを算出して表示する方法です。資金の流れをみて、使える資金を把握するだけであれば十分に有効です。実務でも多くの会社は間接法を選択しています。

キャッシュフロー計算書の作り方

キャッシュフロー計算書はどうやって作るのでしょうか。作り方と事前に準備する書類を確認しましょう。

準備するもの

事前に準備するものを確認しましょう。

  1. 賃借対照表(前期・当期)
  2. 損益計算書(当期)
  3. 固定資産台帳
  4. 有価証券や社債、新株発行に関する資料

慣れてくると(1)(2)は試算表で代用できるようになります。期末の試算表は期首の数字が載っていますので当期分だけあれば足ります。
(3)の固定資産台帳は減価償却費の確認に使います。減価償却費は実際にキャッシュを支出しないため調整が必要だからです。
(4)は投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローの作成資料です。


作成手順

キャッシュフローには決まった基本フォームがあります。まずは、間接法のフォームに準備した資料の数字をひろって作成してみましょう。

【Ⅰ.営業活動によるキャッシュフロー】

項目名 金額 作成ポイント
税金等調整前当期純利益 XXXXX 会計上の利益。損益計算書から転記
減価償却費 XXX 実際にお金を支出しないので加算
貸倒引当金の増加額 XXX 実際にお金を支出しないので加算
受取利息および受取配当金 -XXX 受取利息等の調整
支払利息 XXX 支払利息等の調整
有形固定資産売却益 -XXX 実際にお金が入金しないので減算
売上債権の増加額 -XXX 債権の増加は資金減少として調整
棚卸資産の減少額 XXX 資産の減少は資金増加として調整
仕入債務の減少額 -XXX 債務の増加は資金減少として調整
    小計 XXXXX  
利息および配当金の受取額 XXX 受取額の調整
利息の支払額 -XXX 支払額の調整
法人税等の支払額 -XXX 法人税等の支払額を記載
営業活動によるキャッシュフロー XXXXX 本業の事業活動から得た資金

【Ⅱ.投資活動によるキャッシュフロー】

項目名 金額 作成ポイント
有価証券の取得による支出 -XXXX 取得額を記載
有価証券の売却による収入 XXXX 売却額を記載
有形固定資産の取得による支出 -XXXX 取得額を記載
有形固定資産の売却による収入 XXXX 売却額を記載
投資有価証券の取得による支出 -XXXX 取得額を記載
投資有価証券の売却による収入 XXXX 売却額を記載
貸付による支出 -XXXX 実際の貸付額を記載
貸付の回収による収入 XXXX 実際の回収額を記載
投資活動によるキャッシュフロー XXXX 将来のための投資

【Ⅲ.財務活動によるキャッシュフロー】

項目名 金額 作成ポイント
短期借入れによる収入 XXXX 借入金額を記載
短期借入金の返済による支出 -XXXX 元本返済額を記載
長期借入れによる収入 XXXX 借入金額を記載
長期借入金の返済による支出 -XXXX 元本返済額を記載
社債の発行による収入 XXXX 社債を発行した収入を記載
社債の償還による支出 -XXXX 社債償還額を記載
株式の発行による収入 XXXX 株式払込金額を記載
自己株式の取得による支出 -XXXX 自己株の購入額を記載
親会社による配当金の支払額 -XXXX 配当金を記載
財務活動によるキャッシュフロー XXXX 財務活動の結果

Ⅳ.現金および現物同等物の増加額  XXXX ←会計期間の資金の増減を示します

Ⅴ.現金および現物同等物の期首残額 XXXX ←期首の資金残高と一致

Ⅵ.現金および現物同等物の期末残額 XXXX ←Ⅳ+Ⅴで当期末資金残高を示します

ⅠからⅥまで作成してキャッシュフロー計算書が完成します。

作成していると正解がないので不安になることがあります。損益計算書の当期純利益から債権の増加額を引いて、減価償却費と支払債務を加えると大体の数はでますので検算にすると便利ですよ。

月次キャッシュフロー計算書が必要な場合は上記の期首・期末を月初・月末に置き換えることで作成することができます。


まとめ

キャッシュフロー計算書は会社の資金の流れを知るための書類です。以前は重要視されていませんでしたが、最近は重要な計算書類として認識されています。月次単位で作成すると、資金繰り表と併せて会社の資金状況が非常につかみやすくなります。

ただ、キャッシュフロー計算書の作成には少々手間がかかります。最近の会計ソフトではボタンひとつで作成できるものもありますから活用してみてはどうでしょうか。